VS紫炎の魔狼 聖女の本気
これで3章終わり!
ちなみに題名の紫炎の魔狼は"しえんのまろう"って読みます・・・流石に漢字の雰囲気でわかるか!
(あれを受けてもまだ生きてるのですか!?って、それよりも・・!)
「ハーツさん!大丈夫ですか!?」
エリシアはハーツの安否を確認しようと呼びかけるが返事は返ってこない。
(直撃は避けれていたので、死んではないと思うのですが・・)
『ワオオオオオオオオン!!』
辺りにデビルウルフの遠吠えが響く。すると、それと同時にデビルウルフの前後両足が紫色の炎を纏い、尻尾にも同じように炎を纏う。そして、自身の首の周りに首輪のように炎を帯び、その炎の首輪から2本の炎が首のように伸びて、その先端には竜のような頭部が現れる。
(・・・なるほど、本気モードということですか。先程よりも気を引き締めた方がいいですね)
姿が変化したデビルウルフに対し、エリシアはかなり警戒する。
『ワォン!』
すると次の瞬間、デビルウルフは体を回転させ尻尾から炎の斬撃を飛ばす。そしてその直後に首から伸びている2つの竜の頭部から火球を放った。
「『ライトウォール』!」
エリシアは光の壁を貼り、攻撃をガードする。1発目の斬撃は防げたが、2発目の火球で壁にひびが入り、3発の火球で壁が破壊されてしまった。
(『マジックブースト』を使っているというのに破壊されますか。やはり先程より攻撃力が上がっておりますね)
「『アクアファイヤ』!」
エリシアも複数の水の球を放ち反撃する。しかしデビルウルフは先程までのスピードを上回る動きでエリシアの攻撃を回避していく。
(動きも速くなってる!?)
『ガァァウ!!』
「っ!『マイグレーション』!」
攻撃を躱していくうちにエリシアに近づいていたデビルウルフは、エリシアに向けて右足を振り下ろす。それを間一髪、魔法で移動して躱すエリシア。
(これはちょっとキツいですね。慎也さんを回復する用の魔力を残せそうにありませんね)
「『グランドスピア』!」
デビルウルフの足下に魔法陣が現れる。しかしすぐにデビルウルフはその場から移動し、飛び出してくる棘を回避されてしまう。
(やはりこの魔法は当たりませんか。無駄な魔力は使いたくありませんし、これの使用は控えましょう)
「『ライトスピア』!」
今度は光の槍を放つが、それもデビルウルフの尻尾によって弾かれてしまう。
「くっ!」
『ワオオオオオオオオン!!』
今度は、こちらの番だと言わんばかりにデビルウルフが雄叫びをあげる。すると首から伸びている2頭の炎の竜から火球が同時に放たれる。
「『ライトウォール』!」
エリシアは光の壁を出しガードするが、2つ目の火球が触れた瞬間に起こった爆発で壁が壊れてしまう。しかしデビルウルフの攻撃は止まらない。今度は自身の口から紫の炎を横に薙ぎ払うように放つ。
「!『マイグレーション』!」
エリシアはなんとか反応し魔法で空中に移動して炎を躱す。するとエリシアがいた場所は紫の炎によって焼け野原となっていた。エリシアは地面に着地し、息を切らす。
「はぁ・・はぁ・・」
(まさか私がここまで追い詰められるなんて。もう出し惜しみ無しですね)
「これで終わらせましょう。『マジックグ・・」
『ワオオオオオオオオン!!!』
「!?」
エリシアがチャントスキルを使用しようとした瞬間、デビルウルフが遠吠えをあげる。すると首から伸びている炎の竜が暴れ出し、辺りに乱雑に紫の炎を吐き散らす。
(急に何を・・・っ!)
「『マイグレーション』!」
デビルウルフの突然の行動が理解出来ないエリシアだが、1体の竜が吐いている炎が自身に迫っていることに気づき魔法で躱す。
(炎に囲まれている!?)
そこで初めてデビルウルフの行動の意図が理解できたエリシア。デビルウルフは草原の草を燃やし、エリシアの逃げ場を無くしていたのだ。
(これだと安易に『マイグレーション』が使えませんね。というかこのままデビルウルフがこれを続けるとお2人が危険ですね)
慎也達が危険だと思ったエリシアは2人を探す。すると炎の内側に同じ場所で倒れている2人を見つけ、安堵の息を吐く。
(よかった、まだ大丈夫みたいですね。では私はこの状況をなんとか・・)
しかしその安堵も一時的なものだった。エリシアは1体の竜が吐く炎が2人に迫っていることに気づく。
(っ!まずい!)
「『マイグレーション』!」
エリシアは連続で魔法を発動し、炎より先に2人のもとに到着する。
「『ライトウォール』!」
そして2人を守るべく、魔法で大きな光の壁を生成する。そしてその直後に炎が光の壁を襲う。そしてそのまま炎は停滞し、それどころかもう1体の竜の炎もエリシア達を襲い、集中砲火を受ける。
「・・エ・リ・・シア・・?」
「できれば今起きてほしくなかったですね、ハーツさん」
「何、言って・・・っ!」
ようやく意識が戻り、現在置かれている状況を理解したハーツ。その顔は絶望に染まりかけていた。
「くっ!」
(さすがに火力が強すぎますね。今の状態が維持出来ていることが奇跡と思うくらいです。でも・・!)
「ここで頑張らないでいつ頑張るんですか!絶対に防ぎきりますよ!」
エリシアは光の壁に魔力を注ぎ込み、精度を上げる。そしてとうとう諦めたのか、2体の竜は炎を吐くのをやめた。
「や・・り・ました・・!」
「悪いエリシア、助か・・」
炎を防ぎきり、油断してしまったエリシアは光の壁を消してしまう。するとデビルウルフはそれを狙っていたのか、光の壁が消えた直後に紫の火球を放ち、エリシアに攻撃する。
(しまっ・・!)
油断していたエリシアは火球が直撃し、爆発をもろに喰らう。そしてその爆発の衝撃で後方に吹っ飛ぶ。
「エリシア!」
(完全に油断してました。かなりのダメージを受けましたね)
『グルルルルル!』
「「っ!」」
デビルウルフは倒れているハーツと慎也にトドメをさそうと、歩み寄ってくる。
「チッ、来るならこいよ!最後まで抵抗してやる!」
ハーツはすでに限界が来ているであろう体を無理矢理立たせ手に自身に残っている僅かな魔力を込める。
「ハーツさん、そこまでしなくていいですよ」
しかしそのハーツの行動をエリシアは呼び止め、立ち上がりハーツの前に出る。
「だがお前、そろそろ魔力が限界なんだろ?」
「そうですね。正直このまま戦うと慎也さんを回復出来なくなります」
「なら・・!」
「ですが、それはあくまでこのまま戦った場合です。ハーツさんなら知ってるでしょう?私がSランク冒険者になれた要因を」
「・・使うのか」
「ええ、使わせてもらいます・・・
『マジックグロウ』!」
そう唱えた瞬間、エリシアの瞳が黄色に染まり、体に黄色のオーラを纏う。そしてエリシアの中を流れている魔力が増幅していく。
「さあ、終わらせましょうか」
『グルル、ガァァウ!」
エリシアの変化に危険と感じたデビルウルフは、一旦距離を取り2体の炎の竜と自身の口からそれぞれ火球を放つ。
「『ライトウォール』」
先程まではデビルウルフの猛攻に慌てて対応していたエリシアだったが、今は落ち着いた様子で光の壁を貼り対応する。そして3つの火球が光の壁に激突し、小爆発を起こす。しかし、さっきまで破壊されてばっかだった光の壁は、今回は無傷であった。
『グォオ!?』
さすがのデビルウルフもこれには驚かざるおえない。
(やっぱり驚きますよね。なんせ先程まで破壊できていた壁が、今や無傷なのですから)
「では今度はこちらの番ですね。『フレイムボム』」
本来なら1つしか出ない魔法も、『マジックグロウ』の影響で個数が5つになり、エリシアの杖から5つのオレンジ色の球が放たれる。
『グァウ!』
「逃がしませんよ。『グランドスピア』」
攻撃を躱そうとしたデビルウルフの周りを5つの魔法陣で囲み、そこから棘を出現させ退路を断つ。そして逃げれなくなったデビルウルフに容赦なく5つのオレンジ色の球がヒットし、大規模な爆発が起こる。
(これでかなりダメージは与えれたはずですが・・)
『ワオオオオオン!!』
遠吠えと共に、爆煙を尻尾で斬り払ってデビルウルフが姿を現す。
「やはり耐えますか、ならおまけもあげますよ。『アイスメテオ』」
エリシアの周りに5つの水色の魔法陣が現れ、そこからそれぞれ大きな氷塊が出てくる。
「潰れなさい」
『グァァァウ!!』
そう言うとエリシアは杖をデビルウルフを突き出し、氷塊を一気に放つ。土の棘に囲まれ身動きが取れないデビルウルフは、氷塊に炎を放ち対抗するが、今のエリシアの魔法の威力には遠く及ばす、そのまま氷塊に押し潰されてしまう。
「さて、仕上げといきましょうか。『エクスプロージョン』」
そう唱えるとエリシアの周りにあった水色の魔法陣は消え、代わりに橙色の魔法陣が5つ現れる。するとその瞬間、氷塊を押しのけ、中からデビルウルフが息を切らして立ち上がってくる。
「あら、まだ生きていたんですね。まあどっちにしろこれでチェックメイトですよ」
そう言うと橙色の魔法陣からそれぞれ炎を纏った橙色の球が出てきて、デビルウルフに向けて放たれる。大ダメージを受けた直後で動けなかったデビルウルフは、エリシアの放った魔法が全弾直撃する。
『ワオオオオオオオオン!!!』
魔法がデビルウルフに触れた瞬間、辺りに地震を起こすほどの超爆発が起こる。そしてその爆発に苦しむデビルウルフの悲痛な叫びが辺り一帯に響き渡った。
(やっと終わりましたね)
爆風に髪をなびかせ、上空に上がる爆煙を背にしてエリシアはハーツたちのところに戻る。
「やっぱお前はすげえよ」
「今は私を褒めてる場合じゃないですよ。今慎也さんをここに持ってくるので少し待っててください」
エリシアは近くで気を失い倒れている慎也を担ぎ、ハーツの隣に慎重に置く。
「ではギルドにテレポートしますよ」
「今回復しなくていいのか?」
「今しても回復できるのはせいぜい1人だけです。ならギルドでハーツさんたちを見てもらった方がいいですよ」
「そうか・・」
「それでは、『テレポート』」
エリシアがそう唱えると、3人の足下に魔法陣が現れる。そしてその魔法陣は次第に光だし、気がつけば普段見慣れているギルドの受付前にいた。
「では誰か呼んできますね」
「ああ・・」
エリシアは仕事をしているだろう職員のいる受付の方へ歩いて行き、職員を呼びかける。
「すみません!誰か手の空いてる方、この2人を救護室に・・」
連れて行ってくれませんか、と言おうとしたエリシアだったが、急に視界がぼやけだす。
(あ、あれ?急に視界が・・)
そして徐々に視界が歪んでいき、気づけばエリシアは床に倒れていた。
「誰か・・お願いしま・・す・・」
「エリシア!」
エリシアが倒れたことにハーツが大声をあげる。その声を聞き駆けつけた職員たちが、慎也とエリシア、そしてハーツを急ぎ救護室へと連れて行った。
「・・ここか」
先程エリシアとデビルウルフが戦っていた戦場に1人の人型をした魔物が訪れた。
(魔道具で聞いていたが、まさかデビルウルフを倒すとはな。あいつは俺の軍の中でNo.1だったんだがな、それ以上に聖女が強かったということか。それにかなりのレベル差があったにもかかわらず、オークキングを退けたあの小僧も気になる。たしか『ブーストアイ』だったかな?)
なんとこの魔物は魔道具でここ2日の出来事を聞いていた言う。
「まあいい、とりあえずはこのことを魔王様に報告するとして、どう報告しようか。俺個人の意見としてはさっさと人類側の戦力を削ぐために"戦争"に持ち込みたいんだがな・・・・・そうだ」
何かを思いついたのか、人型の魔物は不敵な笑みを浮かべる。
(『ブーストアイ』とか言ったな、あれをSランクのチャントスキルと少し大袈裟に報告するか。そうすれば魔王様と言えど、これ以上人類の戦力が上がるのはまずいと思うだろう)
「ふっふっふ、そう決まったら急いで魔王様に報告するか。久しぶりにでけえ戦いが出来そうで体がうずうずしちまうぜ」
そう言うと人型の魔物は自身の拠点である魔王城へと歩き出した。
さて、何やらやばいことが起こりそうだが、慎也は大丈夫だろうか?そしてとうとう第一世界も中盤!次章はどんな展開になって行くのか!?




