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世界渡りの少年  作者: 憧れる妄想
第一世界 第三章 仲間を想う力
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聖女の到着




『くそ・・が・・』


心臓を貫かれたオークキングは、その場に倒れびくともしなくなった。


「や、やったんですね」

「ああ。俺の・・・いや、俺らの勝ちだ!」

「やっと、終わったんですね。うっ・・!」

「慎也!」


オークキングを倒したことによる安堵で、気が抜けてしまった慎也はその場に倒れ、気を失ってしまう。


(気を失っただけか。まあそりゃああんだけ頑張ればそうなるか。実際、慎也のおかげで勝てたようなもんだし。たぶんこっちにエリシアが向かってきてるだろうから、それまで待とう)

「はぁ、できれば早めに慎也を回復させたいが、魔力がもうカスすら残ってないしな。早くきてくれよエリシア」


ハーツは気を失っている慎也の様子を気にしながら、無言でエリシアの到着を待つ。


(・・それにしても、あの『スラッシュストーム』ってスキル凄かったな。全方位に風の斬撃を飛ばす魔法か。あのオークキングが慌てるほどってことは、かなり危険な魔法だな。しかも見た感じ、発動者である慎也にもダメージがあった感じだし、一歩使い方を間違えると自滅の恐れもあるな。起きたらそこら辺言っとくか)


.ハーツが『ドラゴントラスト』を放つ直前に、オークキングの動きを止めるために慎也が放った『スラッシュストーム』を、直接自身の目で見たハーツは危険視する。


(てかこいつ、もしかしなくても両腕折れてるよな?そんな状態でよく魔法が撃てたな。俺だったらそんな無茶しねえよ。そう考えると、こいつって結構異常だよな。てかまあ1人でゴブリン数十体とゴブリンウォーリアーを倒す時点で異常か。きっとこれからどんどん強くなってくんだろうなぁ)


慎也のこれからの成長に期待を寄せるハーツ。そしてなんやかんや数分後、後ろからかなりの魔力を察知したハーツは、それがエリシアだと分かり、後ろに振り返る。


「お、やっと来たか。ったく遅えよエリシア!どれだけ待たせて・・」


それ以降の言葉は、ハーツからは発せられなかった。驚きと恐怖のあまり言葉を失ったのだ。しかしそうなるのも無理はない。なんせ・・












『よう、さっきぶりだな』


殺したはずのオークキングが、平然と立っていたのだから。


「!・・なんでお前生きてんだよ!心臓を確実に射抜いたんだぞ!」


ハーツはすぐさま身構え、戦闘態勢を取る。


『まあ驚くのも無理ないよなぁ。いいだろう教えてやる』


そう言うと、オークキングは自身の頭から王冠を取りハーツに見せる。


『この王冠、一見ただの王冠に見えるが実はかなり希少な魔道具なんだよ。犠牲の王冠って言うんだが、身につけてる者が死ぬと、命の代わりにこいつが代わりに消滅するんだよ。こんなふうにな』


オークキングは王冠を軽くつつく。すると王冠にひびが入り、そのまま王冠は粉々に砕け散った。


『まあそんなこんなで、俺は生きてるってわけだ』

(マジか。てことはこいつを殺すには、またさっきみたいに『ドラゴントラスト』で仕留めないといけねえのかよ。もう使えるほどの魔力も矢も残ってねえぞ)

『さてと、死ぬ準備はできてるか?』

「いや全くできてねえよ」

『そうか、まあどのみち殺すがな』


そう言うとオークキングは大剣を大きく振り被る。


『一撃で終わらせてやるよ』

(くそ!早く慎也を連れて逃げねえと!)


ハーツはすでに限界がきている体を無理やり動かし、慎也を持ち上げようする。だが・・


「くっ!」


先程の『ドラゴントラスト』で魔力を使い過ぎてしまい、体の平衡感覚が狂いその場に倒れてしまう。


「くそ、もうダメなのか!」

『終われ、『グランドブレイク』!』


そう唱えると、オークキングは大きく大剣を振る。すると大剣から白色の光線が、2人に向かって勢いよく放たれる。


「悪い、エリシア。時間稼げなかったわ・・」


ハーツは迫り来る光に、ただ目を閉じながら死を待つことしか出来なかった。









「いえ、充分稼げましたよ。ハーツさん」


その声がしたのと同時に、光線と2人の間に何者かが割り込む。ハーツはすぐに目を開き、割り込んできた者を見て、ため息をついてニヤッと笑みを溢す。


「遅えよ、エリシア!」

「すみません、意外と距離があったもので。これでも急いだつもりなんですけどね。『ライトスピア』」


エリシアがそう唱えると、杖から黄色に光る槍が放たれ、オークキングが放った『グランドブレイク』を貫き消滅させる。そしてそのまま槍はオークキング目掛けて飛んでいく。


『なんだと!?くそっ!』


オークキングは全力で大剣を振り、槍を弾き飛ばす。その際に感じた槍の重みに危機を感じ、汗が頬をつたう。


『・・てめぇ何者だ?これほどの魔法、"四天王"レベルじゃねえか』

「そうですね・・・聖女、と言えばわかりますか?」

『!・・くく、そうかお前があの聖女か!こりゃあ良い!てめえを殺せば俺も"四天王"に昇格できる!』

「殺す、ですか」

(こいつ、今のを見て勝てると思ってるのか?明らかに実力に差がありすぎるだろ)

「あなた、確かオークキングと言いましたね。あなたが四天王に昇格することはないでしょう」

『あ?』

「今の一撃で自信と相手の実力がどれほど離れてるのか分からないような人に、魔王が軍を支える大事な柱を任せるとは到底思えません。それに、そもそもあなたはわたしには勝てませんよ」

『っ!!!貴様・・・・さっきから好き勝手言いやがって!俺を舐めるなよ!』


オークキングは怒りに任せ、ハーツと戦ってた時よりもさらに早いスピードでエリシアとの距離を詰め、大剣を勢いよく振り下ろす。


『死ねっ!』

「・・『ライトウォール』」


しかし、オークキングの振った大剣は光の壁に弾かれる。


『なに!?』

「これにひびを入れられない時点であなたの敗北は確定しました。早く降参してどこか遠くに行きなさい」

(殺すんじゃなくて、逃すのか。まあそこら辺は聖女としての慈悲みたいなもんか)

『俺に降参しろと?貴様いい加減にしろ!その生意気な口ごと顔面ぶった斬ってやる!』


オークキングは大剣を乱雑に振り、エリシアが貼った光の壁を何度も斬りつける。


「意味のないことを・・」


ため息をつき、エリシアは杖からオークキングに向けてかなりの量の魔力を放つ。


『っ!?』


放たれた魔力の量に耐えられなかったオークキングの体が後方に勢いよく飛ばされる。


「おいエリシア、慎也の傷を回復するための魔力は残しとけよ?」

「ハーツさんもかなり重傷な気がするのですが、慎也さんだけのでいいんですか?」

「そこら辺は好きにしてくれ。これぐらい怪我しとけばギルドマスターの仕事をサボれるしな」

「それ職員の方々の前では絶対言わないほうがいいですよ」

「こんなこと言った日には、俺がたとえ骨折したとしても働かせるだろうな」

『『フレイムボム!』!』

「!『ウォーターショット』」


エリシアは水の球を放ち、オークキングが放った魔法を相殺する。


『くっ!』

「いい加減諦めたらどうですか?あなたはわたしには勝てない、自分でもわかってるのでしょう?」

『チッ、くそが!』


エリシアの言葉を聞き悔しそうな表情をし、大剣を地面に叩きつけるオークキング。


『ん?ちょっと待てよ。そういえば・・』


すると何かを思い出したのか、オークキングは懐を探るように手を突っ込み、あるものを取り出す。


(あれは・・・瓶?)


オークキングが取り出したのは、禍々しい紫色のオーラを纏った黒色の瓶だった。


『ふっふっふ、そういえば俺にはこれが残ってたな。いざって時に使えって"あの方"には言われたが、聖女に勝つためだ、使わせてもらうぜ』

「・・ハーツさん、感じますか?」

「ああ、あの瓶から膨大な魔力を感じる。オークキングを越えるほどの魔力を・・」

「これは、わたしもちょっと本気を出さないといけないですね」

『聖女!たしかお前、俺はお前には勝てないって言ったな?だが逆に言えば、俺以外のやつなら勝てるということだ。そしてその俺以外のやつがこいつだ!出てこい!"デビルウルフ"!』


そう言うと、オークキングは手元の瓶の蓋を開ける。するとそこから大量の紫色の煙が出てき、オークキングの周りを覆う。そしてその煙が薄くなっていくと、その中から巨大な影が現れる。


(これは・・・やばいのがくるな)


そして、煙が晴れると、その影の正体が姿を現す。オークキングをも越える全長6mの巨体、そしてその巨体を覆う漆黒の体毛。さらに4本の足についた、全てを切り裂くと言わんばかりの強靭な爪、そしてざっと2mはある長い尻尾。一部が欠けている両耳、口から剥き出している2本の強靭な牙。まさに悪魔のような姿をしたオオカミが、煙の中から現れた。


「・・エリシア」

「大丈夫ですよ。あれぐらいの魔物、ちゃちゃっと倒してきますよ」

「気をつけろよ」

「ご心配、ありがとうございます」

『ワオォォォォォォン!!!!』


辺り一体に、デビルウルフの遠吠えが響き渡った。




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