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世界渡りの少年  作者: 憧れる妄想
第一世界 第三章 仲間を想う力
38/211

狩人の猛攻




・・・ハーツ視点・・・


(・・行ったな)


エリシアとリアがテレポートしたのを確認したハーツは、再び轟音のした方向に走り出す。


(さて。エリシアがこの森に戻ってくるまでの間、俺がオークキングと戦って時間を稼がないといかないんだが・・)


ハーツは自分の武器である弓を不安そうに見ながらため息をつく。


(ここ2年は魔物と戦ってないからな、腕が落ちてないといいんだが・・・まあ昔と同じようにすればいいか!)


ハーツは走るスピードをさらに早め、轟音の中心となる現場へ向かう。


(それにしても、かなり大きい音だったな。どんなスキル使ったらあんな音出るんだよ。俺のスキルでもあんな音出ねえよ。というかそろそろ見えてもいいと思うんだが・・・・っておいおい嘘だろ!?)


少しの距離を走り、ようやく現場に着いて最初に出た言葉は・・


「んなもん次元が違うだろ!?」


驚愕を意にした言葉だった。しかし驚くのも無理はないだろう。その場にあったであろう木々は灰と化し、何か大きなものが通ったかのような地面の抉れ方。それを見ただけでハーツはこれをやった者は自分より上の存在だと思った。


(今の慎也にこんなことができるようなスキルはないだろうし、おそらくオークキングか。てかマジで慎也はどこに・・)


ハーツは周りを見渡し、慎也を探す。すると草原の方に緑色の巨体を持った魔物が人間を掴み上げてるを見つける。


(!くっそ間に合えよ!)


ハーツはそれがすぐに慎也だと気づき、全速力で草原へと向かった。









・・・慎也視点・・・


数分前。


「・・・ぅう・・あ、あれ?俺・・」


オークキングの強烈な一撃を喰らい、草原まで飛ばされ、その上瀕死になるほどのダメージを受けた慎也。もはや意識を保つので精一杯という状況である。


(・・一応まだ生きてんのか?あんな技喰らったのにまだ生きてるとか、俺の体って結構頑丈なんだな。って感心してる場合じゃねえ。早く動かねえまたあいつが・・・ってそういえば両腕折れてるんだった。ああくそ!マジで動けねえ)


必死に慎也は体を動かそうとするが、今の体ではせいぜい足の指を動かすのが限界だろう。そんな慎也に、ゆっくりとオークキングが歩み寄ってくる。


『ほう。まさかあれを喰らったにも関わらず、まだ生きてるとはな』

「・・自分でもびっくりしてるよ。だけどもう無理みたいだな」

『ああ、もうお前はここで終わりだ。今回は運良く生き残ったが、さすがに剣で体を貫かれたら死ぬだろう』

「うわめっちゃ痛そうな殺し方するじゃん!さっきので死んどけばよかった」

『さてと。それじゃあさっさと死んでもらうぞ』


そう言うとオークキングは慎也の髪の毛を掴み、体を上にあげる。そして大剣の先を慎也の胸部に向ける。


(あーもうダメだ逃げらんねえ。悪いなライル、ごめんなリア。もうお前らとは一緒にいられそうねえや。はぁ・・・・最後くらい、夏菜と秀斗の顔見ときたかったな)

『それじゃあ今度こそ、あばよ!』


オークキングは慎也の胸部目掛けて大剣を勢いよく突き刺・・









そうとした瞬間、オークキングの頭部目掛けて炎を纏った矢が森の方から飛んでくる。


『!』


それをすぐに察知したオークキングは慎也を離し、大剣で矢を防ぐ。


(なにやってんだこいつ?急に俺離して)

『ほう。小僧、お前の仲間が助けに来てくれたみたいだぞ』

(仲間?一体誰が・・)


慎也は、オークキングの視線の先にいる人物を見て驚く。


(あれは・・・ハーツさん!?)









・・・慎也・ハーツ視点・・・


(あぶねぇ。今絶対剣ぶっさそうとしてだろ。間に合ってよかったわ)


ハーツは一時的にではあるが、慎也を助けれたことに安堵する。


(さて、ここからは俺の頑張り次第か)

『おいお前!』

「あ?なんだよ」

『さっきの攻撃は敵対と見做していいんだな?』

「どう捉えるかは任せるわ」

『そうか。なら・・』

「!ハーツ逃げ・・」

「安心しろ慎也!俺はな・・」


オークキングは慎也が目で追えないほどのスピードでハーツに近づき、大剣を振り下ろす。


『死ね!』

(そう、なんせ俺は・・)


その攻撃をハーツの左に飛んで難なく躱す。


「元Aランク冒険者だ!」


それと同時にハーツ自身の背負っている矢筒から矢を取り出し、オークキングに放つ。


『・・・』


しかしその矢をオークキングは手で掴み、そのままへし折る。


(まあそう簡単にはいかないわな)

『そこの小僧よりはやる様だな』

「ふん、そりゃあどうも」

(嘘だろ!?ハーツさん今の速さに反応できたのか。それに元Aランク冒険者って、元とはいえかなりの実力者じゃねえか)

『お前なら少し本気を出しても大丈夫そうだな』

「お手柔らかに頼むぜ」

『安心しろ。何が起こったのか分からないってくらいの速さで殺してやる。『斬連波』!』


オークキングは大剣を3回振り、ハーツに斬撃を飛ばす。


(まあまだ様子見って感じか)


3つの斬撃もハーツは難なく躱し、カウンターとして矢筒から矢を2本取り出し、オークキングに放つ。


「『ツインアロー』!」


2本の矢が青色に光り、スピードが増す。それをオークキングは大剣でガードする。さらにそこに、ハーツは空中に飛び、追い討ちをかけるように矢を放つ。


「『トラストレイン』!」


ハーツの放った矢が光出し、2本、4本、8本と増えていき、やがて数十本の矢の雨と化す。


『チッ!』


流石に防ぎ切れないと思ったオークキングは、後ろに飛んで矢の雨を躱す。


『ふん!』

(やば!)


ハーツが地面に着地するタイミングでオークが距離を詰め、大剣を水平に振る。


「『ウィングショット』!」


ハーツは魔法を自分の真下に放ち、魔法が地面に接触した瞬間に起こった風を利用して自身の体を浮かし大剣を躱す。


(ここは一旦距離をおいて・・)

『逃すか!』

「チッ!」


地面に着地した瞬間ハーツは後ろに飛んで距離を取るが、オークキングがすぐにその距離を埋め、大剣を連続で振る。ハーツはなんとか躱し続けるが、躱す度に大剣の先が体に掠り小さな傷できる。


(くっそ、動き早いな。それにまだこいつ本気出してねえだろ。仕方ない、"あれ"を使うしかないか)


ハーツはオークキングが大剣を横に振ったタイミングでオークキングの上を飛び越え後ろにまわり、オークキングから距離を取る。


『・・中々やるじゃねえかお前』

「そっちこそ」

(すげぇ、どっちもあんなに動いたのに息一つついてねえ。でも戦況的にはハーツさんが少し押されてるのか)

『どうだお前、俺の下につく気はないか?もしつくなら見逃してやるよ』

「そんなの真っ平御免だ」

『そうか、なら死んでもらおう。お前なら久しぶりに少し本気が出せそうだ』

「そりゃあどうも。ならこっちも・・」

(なんだハーツさん?一体なにを・・)

(見せてやるよ。俺のチャントスキルを!)

「『アロードール』!」


そう唱えた瞬間、ハーツの右腕が紫色のオーラが纏う。


『なんだそりゃあ。見たところ大した変化は見れねえが』

「まあ見とけ。すぐにこのスキルの強さが分かるよ」


そう言うとハーツは矢筒から矢を取り出し、魔力も何も込めずに普通に放つ。するとその矢はハーツの右腕と同じ紫色のオーラを纏う。


『なんだてめぇ、俺を舐めてるのか?』


それをオークキングは雑に切り捨てる。それを見たハーツはニヤっと口端を上げた。


「油断したな」


そう呟いたハーツは自身の右腕を左上に振り上げる。その瞬間、地面に落ちた矢が勢いよくオークキングの顔目掛けて飛んでいった。


『っ!?』


さすがにそれには驚いたオークキングは慌てて頭を傾け矢を躱すが傾けるのが少し遅れ、矢が頬を掠る。


(なんだ今の矢!?ハーツさんが腕を振った瞬間オークキングに飛んでいったけど・・・まさか操ってんのか?)

『・・今の攻撃』

「すごいだろ。『アロードール』は右腕が紫のオーラを纏ってる間、放った矢を思うがままに操ることができるんだ。いやー、このスキルを見た時は運命感じちゃったね。俺右利きだし、戦闘の時は弓を使いたいって思ってたしな」

(すごい!これなら勝て・・)

『・・ああ思い出した!お前、矢操の狩人だろ?』

「!・・まさかその名を知ってるやつがまだいるなんてな」

(矢操の狩人?なんだそれ?)

『まあ驚くことも無理はない。なんせ3年前までの話だからな』

(3年前?結構前じゃねえか)

『たしか5年前からだったからかな?突如現れた弓使いの人間。その人間は自身の放った矢を自由自在に操り、幾度も魔物を仕留め、その様子を見ていたある魔物が、『まるで狩人だった』と言ったことから狩人の名がつき、さらにそこに矢を操る力が合わさり、矢操の狩人と名付けられた。しかしその2年後、つまり3年前だ。その矢操の狩人は突如として姿を消し、誰も今どこで何をしているのか謎になっていたが・・・まさかお前がそうだったとは』

「慎也のために長い説明どうも」

「でも、急に姿を消したって、一体何があったんですか?」

「それに関しては気が向いたら話してやる。帰れたらの話だけど」

『帰れたらではなく、お前らは帰れねえんだよ。俺に殺されるんだからな』

「んなもん俺の『アロードール』を攻略してから言ってほしいもんだ!」


ハーツは矢を取り出し、オークキングに放つ。オークキングは大剣で矢を斬り落とそうと振るが、すぐさまハーツが矢を操り、大剣が空振る。そしてそのまま矢をオークキングの頭部目掛けて矢を動かす。


『あーめんどくせえな!』


頭部を傾け、矢を躱しながらも大剣で矢を斬り落とそうするオークキング。しかしそのたびにハーツが矢を操って大剣を避けながら、矢でオークキングの急所を的確に狙う。


(すげぇ、あのオークキングが苦戦してる!これなら勝てるんじゃないか?)


戦況を見て徐々に希望を抱き出した慎也。しかしその傍ら、ハーツの息遣いが荒くなっていく。


(やべ、そろそろ危ないな。早く当てないと・・っ)


限界がきたのか、ハーツはその場に膝をつき、息を上げる。


『・・なるほどな』


その瞬間、矢から紫のオーラが無くなり、普通の矢へと戻ってしまう。その変化をオークキングは見逃さず、その矢を掴みへし折る。


(ハーツさん!?一体何が・・)

『・・たしかにお前のスキルは強い。だがそれ故に、自身にかかる負担も大きい、そうだろう?』

「チッ、バレたか」

(くっそどうすんだこれ!?今あいつに通用するって言ったら『アロードール』と"あれ"しかねえのに。だがあれは俺にかかる反動が大きすぎるからあんま使いたくねえんだよな。そうなると今は『アロードール』で頑張るしかないのか。はぁ・・・仕方ない、やるしかないか)

「ハーツさん、大丈夫なんですかこれ?」

「安心しろ慎也。『アロードール』に負担があるって言っても、それは長時間使った場合だ。数秒使っただけじゃ負担はない。わかったら黙って戦いの行く末でも見とけ。『ホーミングアロー』!」


ハーツは矢筒から矢を3本取り出し、それぞれ別々の方向に放つ。すると3本の矢が青色に光り出し、方向転換してオークキングの方へと向かう。


(一度に3方向からの攻撃だ。さあどうする!)

『そんなもの!』


オークキングは大剣を力強く振り、その衝撃によって起きた風で3本全てを地面に落とす。


「まだまだ!『フレイムアロー』!」


ハーツはさらに矢を2本取り出し、炎と紫のオーラを同時に纏わせた状態で矢を放ち追撃する。


『チッ、めんどくさいことを』


大剣を振り切り落とそうとするが、大剣が当たる直前でハーツが右腕を上に上げ、矢をオークキングの真上に持っていく。


「おっら!」


そして右腕を勢いよく下に下げ、矢をオークキング目掛けて急降下させる。


『そんな攻撃が当たると思ってんのか』


降下してくる矢を、オークキングは後ろに飛ぶことで躱す。


(んなこと予測済みだ!)


ハーツはオークキングが躱したタイミングで空中に飛び、弓を構える。


(頼むぞ!これで決められなかったら"あれ"を使うしかないからな)

「『トラストレイン』!」


ハーツの放った1本の矢が増えていき、数十本の矢の雨となる。しかし先程とは違い、ただでさえ1本の矢に使うだけで負担が大きい『アロードール』を、『トラストレイン』で放った数十本の矢全てに使っているのだ。


『っ!『フレイムボム』!』


さすがにまずいと思ったオークキングは、矢を撃ち落とそうと魔法を放つ。


(当てさせるかよ!)


ハーツは右手を開き、数十本の矢の雨を5つに分けて魔法を避ける。


『チッ、くそ!』

(これで終わりだ!)


5つに分かれた数十本の矢を、ハーツはオークキングの周りを囲むように操り、そして5方向からオークキング目掛けて勢いよく矢を一斉に放った。


(これならさすがに、あのオークキングでも!)


オークキングの力をよく理解している慎也でさえ、この状況に勝ちを確信した。









しかし、この一方的な状況が、オークキングの一言によって逆転する。


『・・6割、出してやるか』


そう呟いた瞬間、オークキングの周りにあった矢が一斉に地面に落ちた。




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