最大の危機
「よ、ようオークキング、昨日ぶりじゃねえか。目は大丈夫なのか?」
『ああ、生憎俺は回復魔法が使えなくてな、部下どもに治してもらったわ』
「そ、そうか」
(あそこにいたオークたちで手下は全部じゃなかったのかよ!)
『さて・・』
オークキングは背負っている大剣左手に握り、勢いよく横に振る。すると横にあった木が綺麗に水平に切断され、切断された木はそのまま地面に倒れる。その瞬間オークキングは鋭い視線を慎也に向ける。
『何か最後に言い残すことはあるか?』
そう言った瞬間オークキングの放つ殺気が倍増する。それを無意識に察知した慎也は息を呑む。
「ど、どうしましょう慎也さん!このままじゃ私たち2人ともあの世行きですよ!」
「んなもん逃げるしかないだろ」
(昨日はほんとに奇跡でなんとか勝てたが、それはあいつが俺のことを格下だと思って油断してたからだ。今のあいつはガチで俺たちを殺そうとしてきてるしな、昨日みたいに『ブーストアイ』を使ったとしても確実に負けるだろうし)
「逃げるって言ったって、私たちの脚であれから逃げれるんでしょうか?」
「いや普通に無理だと思う」
「いやそんなあっさり言わないでください!」
(くっそどうしよう。2人で逃げてもどうせすぐに追いつかれて殺されるのがオチだし、どうするか・・・いや、たしかに2人で逃げたらダメだが、もしどちらかが"おとり"になればワンチャンあるか?)
慎也は少し考えたあと、深いため息をつくとリアの方に視線を向ける。
(はぁ。俺はいつからこんな性格になっちまったんだろうな)
「・・・なあリア、1つ提案いいか?」
「な、何か思いついたんですか?」
「ああ。とりあえずリアは合図として手を叩くから、それと同時に草原の方へ全力疾走して、助けを呼んできてくれ」
「わかりました。それで慎也さんは手を叩いた後どうするんですか?」
「・・・おとりになる」
「!そんなのダメに決まってるじゃないですか!」
(まあそりゃあ許してくれねえよな)
この提案を持ちかけた時点でリアに却下されることを予測していた慎也は、あらかじめ考えていた材料でリアの説得を図る。
「何言ってんだリア。俺には『ブーストアイ』があるんだ、そう簡単には捕まんねえよ」
半分は嘘である。たしかに慎也は『ブーストアイ』を持っているが、今の慎也は自分の意思で『ブーストアイ』を発動させることができない。しかし、そのことはリアに話していないため知らない。さらにリアは自分の目ではっきりと、『ブーストアイ』がどれだけ強力なスキルなのかを昨夜すでに拝見済みなので、この慎也の言葉は信憑性がある。
「た、たしかに、あれを使えばなんとかなるかも」
「だろ?だから昨日みたいにボコボコにされる心配はねえぞ」
「そうですね。それじゃあ慎也さんの言った作戦でいきましょう」
そう言うとリアは草原の方に体を向ける。
『作戦会議は終わったか?』
「ああ終わったぜ。それじゃあさっそく実行させてもらうよ」
慎也はアイコンタクトでリアに、大丈夫か?と送る。それに対しリアが頷くを確認した慎也も気を引き締める。
「・・・行け!」
その言葉と同時に慎也は手を叩き、リアに合図を送る。それを聞いたリアは草原に向かって全速力で走って行った。
(リアには悪いが、うまく騙せたぜ。それじゃあこっちも・・!)
「『ソイルボム』!」
慎也は左手から土煙でできた球をオークキングに向かって放つ。それをオークキングは容易く大剣で真っ二つに切断する。その瞬間、オークキングの前を土煙が覆うが、大剣を軽く振って煙をはらう。煙がはれて、視界が戻ると慎也がいないことに気づく。
『あいつは・・・ああなるほど』
辺りを見渡し、自身に背を向けて走っている慎也を見かけたオークキングは、慎也の作戦を理解する。
『・・・少し泳がせてやるか』
そう言ったオークキングは、不敵な笑みを浮かべていた。
「はぁ・・はぁ・・」
『おいどうした、もうスタミナ切れか?まだ数分しか経ってないぞ。『斬連波』!』
「チッ!」
オークキングは大剣を3回軽く振り、斬撃を放つ。それを慎也は飛んでくる方向をしっかり見ながら、なんとか回避する。
(くそっ、あいつ完全に遊んでやがる!さっきからあいつ、俺と一定の距離を保ちながら追ってきてるし、そんなに俺の相手は余裕か!)
『まったく、往生際が悪いな。俺を相手にしてる時点でお前の負けは確定してるんだ。いい加減諦めたらどうだ』
「んなことするわけねえだろ。ここまで来たんだ、意地でも帰ってやる!」
そう言うと慎也はオークキングとの距離をあけようと走るスピードを上げる。するとそれを見たオークキングは1つ、ため息をつくと・・
『そろそろ終わらせるか』
そう呟いた瞬間、慎也を超越するほどのスピードで、慎也の前に回り込む。
(いつのまに!?)
『おらっ!』
それと同時にオークキングは勢いよく慎也の腹部に蹴りを入れる。突然のことで反応出来なかった慎也はもろに蹴りを食らってしまい、その衝撃で体が宙に浮く。
「ぐはっ!」
『まだ終わってねえぞ!』
宙に浮いて抵抗できない慎也の胴体に、オークキングは昨夜と同じように大剣で斬りつけ、慎也の胴体に大きな切り傷ができる。さらに斬りつけられた衝撃で慎也の体が後方に飛ばされて、木に激突する。
(くそ、このままじゃ!)
『もういっちょ!』
「!」
さらにそこにオークキングが追い討ちをかけるように殴りかかる。さすがにやばいこのままじゃやばいと思った慎也は両腕で防御するが・・
ゴキッ
「っ!?」
衝撃に耐えられなかった腕が折れ、慎也に激痛がはしる。さらに殴られた衝撃で数本の木を突き破りながら後方に吹っ飛び、地面に落ちる。
「痛っつ!」
(死ぬくらい痛てぇ!くそっ、しかも腕が動かねえしもしかして折れたか?)
立ち上がろうにも、腕が折れてしまい自分の体を起こすことのできない慎也。そんな慎也にオークキングが歩み寄ってくる。そしてオークキングは慎也の頭を掴み上げ、不敵な笑みを浮かべる。
『なあ小僧。今お前はどんな気分だ?』
「・・・最悪な気分だ」
『ふ、だろうな。さて、お前は今から死ぬわけだが、何か言い残すことはあるか?』
「死ねくそ野郎」
『ふ、くそ野郎はお前だ。そんなお前に1つ、絶望を与えてやる』
「あ?」
『さっき俺の目を治したのは、俺の手下だって言ったよな』
「ああ。そういうば、その手下って奴らの姿が見えねえようだが」
『ああ、それなら・・・
あの小娘を追わせてるぞ』
「・・・は?」
突然告げられたオークキングの言葉に、慎也はかなり驚くと同時に焦り始める。
(オークたちがリアを?)
「くそ!離せ!」
『離すわけねえだろ。まあ離したとしても、今のお前はオークどころかゴブリン1匹も倒せねえだろうけどな』
「くそっ!」
『さてと、それじゃあ・・・死んでもらおうか』
そう言うとオークキングは慎也を宙に投げ、それと同時に大剣を振り被る。
(こいつ何を!?)
『そんじゃ、あばよ!『グランドブレイク』!』
「っ!?」
オークキングがそう唱えた瞬間、大剣が白く光出す。それと同時にオークキングが大剣を大きく斜めに振ると、白色の光線が放たれた。
(嘘・・・!?)
その光線に慎也は飲み込まれ、その光線は木々を消滅させ、森に轟音を響かせ、さらには無関係な生き物までもを飲み込み、勢いよくまっすぐと進んでいった。
『・・まあこんなもんか』
そして光線が無くなり、光線が通った場所は草木が跡形もなく、更地となっていた。




