VSオークキング 10秒の賭け
結構自信作
オークキングが出した提案。それはリアが奴隷となるという提案であった。
『俺たちオークはな、基本人間の雌を使って増殖してきたんだがな、ここしばらく雌を捕らえられてなくてな、オークの数がかなり減ってきてるんだ。だからお前を使って新たなオークを産ませよう思うんだが』
「そんなのなるわけ・・」
『そうか・・・ならその小僧がどうなってもいいんだな?』
「っ!」
拒否しようとしたリアだったが、慎也を人質にされてしまい、断ろうにも断れなかった。一方慎也は、頭をフル回転させ、この状況を打破できる策を模索していた。
(どうする俺・・・一旦リアにあいつの言う通りにしてもらって、油断した隙に俺が後ろから・・・いや、きっと接近に気づかれて終わりだ。なら・・・いやこれもダメだ。それなら・・・だけどやっぱりレベル差が・・)
しかし、策が思いついた途端に、レベル差という壁が邪魔をし、いつまで経っても有力な策が思いつかない。
(くそ!もっと俺が強かったらこんなことにはなんなかったのに!)
自身の力不足を悔やみ、地面に拳を叩きつける慎也。するとそれを側で見ていたリアが、何かを決心したかのように立ち上がる。
「?おいリア、何を」
「慎也さん、ありがとうございます」
「は?」
「体がそんなになるまで頑張って、私を助けにきてくれて、私はとっても嬉しいです」
「何言ってんだ。まだ助かってもないのにお礼とか」
「いえ、もう十分助けてもらいました。ですから、今度は私が慎也さんを助ける番です。ライルにも、私が感謝していたことを言っておいてください」
そう言うとリアはオークキングの方へと歩いて行き、口を開く。
「オークキング。私はあなたの奴隷になります」
リアの口から出たのは、オークキングの提案をのむ言葉だった。
『いい判断だ、小娘』
「お、おい!リア、お前自分が何言ってんのか分かってんのか!?奴隷ってことは・・」
「はい、わかってます。けれど、それで慎也さんを助けられるなら、私は奴隷でも何でもなります」
「はあ?んだよそれ。どうしてそこまでして俺を助けようとするんだよ!」
「さっき言ったばかりじゃないですか」
するとリアは立ち止まり、慎也の方へ振り返る。そして、満面の笑みでこう言った。
「今度は、私が慎也さんを助ける番なんです」
そう言うリアの目からは涙が流れる。その涙がリアの恐怖という感情を物語っている。それでもリアは慎也を不安に、心配させまいと笑顔を崩さない。そしてリアは涙を手で拭い、オークキングの方へと向き直り、再び足を進める。
(くそ!何がリアを絶対助けるだよ!結局助けられてるのは俺じゃねえか!)
自身の不甲斐なさを悔やみ、慎也は拳を地面に打ち付ける。その時、慎也の頭にライルのあの言葉が過ぎる。
『頼む・・慎也・・・何も出来なかった・・俺の代わりに・・・リアを・・助けてくれ・・!』
涙を流しながら必死に慎也に掛けた言葉。今の慎也にとっては、あの時のライルの状況と今の自分が置かれている状況が全く同じように感じた。
(・・・ごめんなライル。リアを助けるって約束したのに。結局俺も、何も出来なかったよ)
そしてとうとう慎也の体に限界が来て、意識が朦朧としだす。
(ごめんライル、リア・・)
リアを絶対助けるという約束を果たせなかったライルへ、助けに来ておきながら逆に助けてもらってしまったリアへ、めいいっぱいの謝罪をしながら、慎也の意識は闇の中へと落ちていった
はずだった。
『本当にこれで終わっていいのか?』
その時、慎也の脳内に聞き覚えのある不思議な声が流れ、落ちたかけていた意識が呼び戻される。
(てめえはたしか・・)
『あの森以来だな』
以前慎也がゴブリンの森で窮地に陥っていた時に現れて、慎也に『ブーストアイ』与えて慎也を救った、いわば命の恩人である。
(あの時はどうも)
『過去の話はどうでもいい。今は目の前の話だ』
(んなこと言ったって、オークキングとのレベルの差がありすぎて攻撃が通らねえんだぜ?)
『まあたしかにな。たとえ、ここでお前に『ブーストアイ』を与えても、負わされるのはかすり傷程度だろう』
(だろ?ならこれ以上やっても意味ねえだろ)
『まあ諦めるにはもっともな理由だな。
で、お前としてはどうなんだ?』
(・・・・は?)
突然、不思議な声が意味のわからないことを聞いてきて困惑する慎也。
『聞き方が悪かったな。今お前が言ったのはあくまで一般人の意見だろ?なら、"慎也"としてならどうなんだ?』
(・・・・)
不思議な声が聞いてきたのはこうだ。あくまで先程まで慎也が述べていたのは一般的な意見である。なら"村上慎也"として意見はどうなんだということだ。
『で、どうなんだ?お前はこの状況に納得しているのか?』
(んなわけねえだろ。仲間がオークの奴隷になることを納得できるわけねえだろ!)
『ならお前はどうしたい。このまま地に這いつくばって大人しく目の前の光景を見てるか?』
答えは決まっている。
(あいつを・・・リアを助けたい。たとえ無理でも俺は助けたい。だってあいつは・・・・仲間だから!)
『その言葉を待ってた。そんならてめえに『ブーストアイ』をやるよ』
(でも意味ねえだろ?てめえだってさっき『ブーストアイ』を使っても・・)
『ああたしかに、体にはダメージを与えられない。だが、相手を仕留めることだけが勝ちというわけではない』
(どういうことだよ?)
『目だ。目を狙え』
(目?)
『ああ。防御力は皮膚の硬さを言うもの。つまり、皮膚に覆われていない目が、唯一お前がダメージを与えられるところであり、この状況を脱するカギだ』
(でも目なんて、あんなちっさい不意でもつかねえ限り当たんねえだろ)
『何言ってんだ?お前にはあるじゃねえか。不意をつける"魔法"が』
(お前こそ何言ってんだ?俺がそんな魔法持ってるわけ・・・あ)
慎也は思い当たる節があり、無意識に自身の左手に目を向ける。微かだが、その左手には以前の感覚が残っている。
(『スラッシュストーム』・・)
物体に衝突した瞬間、その衝突した場所を中心に無数の風でできた斬撃が360度全方位に放たれる強力な魔法。しかし、強力故に魔力をかなり消費し、さらには魔法を使用した本人にも被害が及ぶ、言わば諸刃のつるぎである。
(てかお前あの時見てたのかよ)
『ああ、その魔法結構迫力あったよな』
(いやそういうことじゃなくて・・)
『そんなことより、やるんだろ?』
(・・当たり前だろ)
『そうか・・』
(もういいか?なら行くぞ)
『ああちょっと待て』
(あ?なんだよ?)
『お前に言っておきたいことがあってな』
(ならさっさと言ってくれ)
『この勝負、勝てる保証などない。なんなら負ける可能性の方が高い。だが・・』
(だが?)
『今のお前なら勝てる。俺はそう思っている』
(!・・そうか。あんがとな)
『では、健闘を祈ってる』
そう言うと不思議な声は聞こえなくなった。不思議な声の言葉に後押しされた慎也は・・
・・・リア視点・・・
『俺の奴隷になることだ』
そう言われた瞬間、リアの口から出たのは否定の言葉だった。だが・・
『その小僧がどうなってもいいんだな?』
「っ!」
リアは今慎也を人質にされている状態。奴隷になることはもちろん嫌だが、拒否すると恩人であり、仲間である慎也を見捨てることになる。ここで大抵の人は自分のためを考え、見捨てるだろう。
(でも・・)
慎也は仲間であり、命の恩人だ。恩を仇で返すような真似をリアはしたくないと思っている。しかしそうなれば状況はいつまで経っても変わらない。それどころかオークキングが痺れを切らして2人を殺すかもしれない。
(私は一体どうしたら・・)
まさに板挟み状態である。すると視界の端に、地面に拳を打ち付けている慎也が入る。
(何で、慎也さんがそんなに悔しそうにしてるんですか。1番悔しいのは私ですよ。ライルは意識が無くなるまで殴られ、刺されたのに最後まで私を助けようとしてくれた。慎也さんだって、体がボロボロになってまで助けに来てくれた。なのに私は何も出来てない。それが1番悔しいのに!・・・・いや、今だ。今しかない。私が唯一できるのは、自己犠牲。でも、私が我慢するだけで慎也さんが助けられるなら)
リアは自身が奴隷になり、慎也を助ける。そう決心して、立ち上がる。
「?おいリア、何を」
「慎也さん、ありがとうございます」
「は?」
「体がそんなになるまで頑張って、私を助けに来てくれて、私はとっても嬉しいです」
「何言ってんだ。まだ助かってもないのにお礼とか」
「いえ、もう十分助けてもらいました。ですから、今度は私が慎也さんを助ける番です。ライルにも、私が
感謝していたを言っておいてください」
(これで、いいんです)
リアはオークキングの方へと歩いていき、
「オークキング。私はあなたの奴隷になります」
提案をのんだ。
『いい判断だ、子娘』
「お、おい!リア、お前自分が何言ってんのかわかってんのか!?奴隷ってことは・・」
「はい、分かってます。けれど、それで慎也さんを助けられるなら、私は奴隷でも何でもなります」
「はあ?んだよそれ。どうしてそこまでして俺を助けようとするんだよ!」
(そんなの決まってます。というか・・)
「さっき言ったばかりじゃないですか」
リアは立ち止まり慎也方へと振り返る。そして・・
「今度は、私が慎也さんを助ける番なんです」
慎也に無理やり作った笑顔を向ける。すると、自然と
目から涙が溢れる。リアは見られまいと涙を拭い、オークキングの方へと向き直った。
(さようなら慎也さん。そして・・・ごめんなさい)
リアは心の中で慎也に別れの告げ、オークキングの方へ歩き出す。
『それじゃあ行くぞ奴隷。さっさと拠点を別の場所に移さねえといけないからな』
「・・・わかりました」
そういうとオークキングが慎也に背を向け歩き出し、リアもそれについて行く。しかし、オークキングが歩き出したと思ったら急に立ち止まり、後ろに振り返った。
(・・どうしたの?急に止まって・・)
『しつこいぞ小僧。いい加減諦めたらどうだ』
「え・・・?」
リアはオークキングの視線の先にいる慎也を見る。
「何勝手に・・・リアを連れて行こうとしてんだ」
慎也はオークキングを睨み、肩で息をしながら立ち上がっていた。
・・・慎也視点・・・
「何勝手に・・・リアを連れて行こうとしてんだ」
慎也は全身の痛みに耐えながら立ち上がり、オークキングを睨め付ける。
『おいおい何言ってんだ。こいつが自分の意思で俺に着いてきてんだ』
「そうですよ慎也さん!私が私の意思で奴隷になるって決めたんです!」
「じゃあ何で、お前は泣いたんだ」
「え?」
「お前の意思で奴隷になるんだったら、何でお前は泣いたんだ?」
「それは・・」
「・・・10秒だ」
「え?」
「10秒で、この勝負に方をつけて、お前を助けてやる」
『10秒でお前が死ぬの間違いじゃねえか?』
「言ってろ」
慎也は1度深呼吸し、自身を落ち着かせる。そしてクラウチングスタートの体制に入る。そして・・
「・・『ブーストアイ』!」
その瞬間、慎也の目がゴブリンの森の時のように綺麗な紅に染まる。それと同時に慎也はオークキングに向かって走り出し、そして道中リアを助けた時に倒したオークの死体の近くにある剣を拝借する。
10・・
『!・・なんかしやがったなてめえ!『斬連波』!』
すぐに慎也の変化に気付いたオークキングは慎也に向かって大剣を振り、3つの三日月型の斬撃を放つ。
9・・
(見える!今の俺なら避けれる!)
慎也は向かって来る斬撃を難なく躱す。
8・・
そして3つ目の斬撃を躱した直後にめいいっぱいの力でオークキングに飛びかかる。
(狙うは目!チャンスは今!)
7・・
「『スラッシュストーム』!」
慎也は左手に風が集まり、球体が生成される。そしてその風で出来た球体は勢いよくオークキングに放たれる。
6・・
『そんなもの・・・『フレイムボム』!』
オークキングもそれに対抗して、大剣から右手を離してオレンジ色の球を『スラッシュストーム』に向かって放つ。そして2つの魔法が直撃した瞬間、爆発が起こる。
5・・
(さあ、嵐が来るぞ!)
爆発の直後、爆煙を切り裂くようにして無数の斬撃が360度全方位に放たれた。
『何!?』
突然の出来事に動揺したオークキングはガードをし損ねて、斬撃をもろに喰らってしまう。しかし、その斬撃たちはオークキングの体に当たっても擦り傷をつける程度しか出来なかった。体には・・
4・・
『ぐあああああああ!!!!』
1つの斬撃がオークキングの左目にヒットし、視界を半分奪うことに成功した。オークキングは予想外の痛みに、大剣を落として両手で左目を抑える。しかし、右目には1つも斬撃が行かず、残ってしまう。
(くそっ!片目残ったか!)
一方慎也は斬撃が来ることを分かっていたため、顔を両腕でガードし、自分が視界を失うことを防いでいる。それでも脚や胴体には無数の傷を負ってしまう。
3・・
(念のため取っておいてよかったぜ)
慎也は先程拝借した剣を右手に持ち、左手を狙い定めるように突き出し、剣を後ろに引き、そのままオークキング目掛けて降下して行く。
『このクソ野郎が!』
オークキングは顔から手を離し、右手に拳を作り振りかぶる。
2・・
(これで終われ!)
慎也は剣をオークキングの目めがけて突き出す。それと同時にオークキングも拳を慎也の腹部めがけて勢いよく突き出す。
1・・
『がああああああ!!!!』
「ぐはぁ!」
互いの攻撃は互いに命中し、両者に深傷を負わせる。オークキングは完全に視界を失い、特に傷の深い右目を押さえておぞましい叫び声を上げながらその場に倒れる。慎也は拳が腹部に衝突した衝撃で、天井にぶつかりそのまま垂直に地面に落ちた。
0・・
その瞬間、タイムリミットが来て、慎也の『ブーストアイ』が解除される。
(やって・・・やったぞ!)
「慎也さん!!」
リアが慎也のところに急いで駆け寄り、慎也の右手を肩にまわし、慎也の体を起こす。
「ごめんなさい!ありがとうございます!ありがとうございます!」
「ここから出た後でなら謝罪でも何でも聞いてやる。
それよりさっさと出るぞ」
リアは言われた通り、出来るだけ急いで洞窟の出口へと向かった。そして洞窟には・・
『絶対に許さんぞてめえら!!どこに逃げようが、地獄の果てまで追ってやる!!』
というオークキングの叫びが響き渡った。




