圧倒的な差
「な、なんですかこの音!?」
(おいおいめっちゃ嫌な予感がするんだけど。くっそもういいだろ終わりで!)
「一旦後ろに下がるぞ、リア」
「は、はい」
慎也に言われ、リアは後ろの壁まで下がる。そして慎也は腕を離してもらい、剣を抜き今いる空間唯一の出入り口に向けて剣を構える。
(さあこい!どうせオークどもの親玉的な奴だろ)
足音は徐々に大きくなり、2人のところに近づいているのがわかる。すると今度は金属を引きずるような音が足音と重なって鳴り始める。2つの音は徐々に徐々に大きくなっていく。そして、ついに音の主が2人の視界に入る。
「「っ!?」」
その姿を見た瞬間、2人は揃って息を呑む。現れたのは、全長5mの巨体を持ち、頭には金属でできた王冠を被り、右手にはかなりの大きさの大剣を持ったオークだった。オークは慎也たちのいる広い空間に入ってくる。そして大剣を自分の横に突き立て、慎也たちを見据える。
『・・・俺の手下どもをやったのはてめえらか?』
「「!?」」
突然オークが自分と同じ言語を口にしたことに驚く慎也とリア。しかしオークは構わず話し続ける。
『こりゃあ久しぶりに楽しめそうな相手だな』
(・・魔物にも言葉を話せる奴がいるんだな。急すぎて言葉失ったわ)
「お前があのオークどもの親玉でいいんだな?」
『ああそうだ』
「てことは、お前を倒せば俺らは帰れるってわけか」
『俺を倒す?出来ねえことは口にしないことだ。見た感じお前の体はすでに限界に達しているだろう。つまり今のお前が俺を倒せる確率は0に等しい。奇跡でも起こらん限り無理だな』
「やってみなきゃわかんねえ・・・って言いたいところだけど、さすがに俺でもそれくらいわかる。だが、ここまで来たらこっちとしても無事に街へ帰りてえんだよ。おとなしくやられてくれ」
意を決して、慎也は剣を構える。
『その意気だけは認めてやろう。だが、気持ちだけでは状況は変わらない。そのことを身を持って教えてやる』
慎也に続き、オークも剣を持ち上げ、片手で構える。その場を沈黙が支配する。慎也に緊張が走り、顔を汗が輪郭をなぞるようにつたった。
「・・・いくぞ!」
慎也は勢いよく走り出し、オークに向かって斬りかかる。しかしオークは微動だにしない。
「おっら!」
慎也は剣をオークの腹部めがけて振り下ろす。そして剣が腹部に接触した瞬間・・
「・・はあ!?」
剣が弾かれたのだ。慎也は見るからに動揺し、後ずさる。
『レベルの差だ。お前と俺とではレベルが違いすぎるんだ』
(なるほど、俺の筋力とこいつの防御の値の差か。だがそうなってくると俺は・・)
『これでわかっただろ。気持ちだけでは何も変わらない。お前は俺には勝てない』
「チッ!」
『それじゃあ次は俺の番だ』
「っ!」
オークの攻撃宣言に、慎也は身構える。すると慎也と対峙しているオークの後ろから、1匹のオークが現れる。
(あいつはたしか!)
現れたオークは紛れもない、先程慎也と戦って、逃走したオークだった。
「そいつがお前をここに連れてきたのか」
『ああ。俺の手下が全員やられたって言うから仕方なく来てやったらこの様だ。お、そうだ』
オークは何かを思い出すと、大剣を斜めに大きく振り下げ・・・
「グゴ・・!?」
横にいたオークの上半身を切り落とした。それを見ていた慎也はかなり困惑している。
「そいつはお前の手下なんだろ!なんで殺して・・」
『俺の手下に、敵前逃亡するような奴はいらねえんだよ。まだここに来る途中で死んでた奴らの方がマシだな』
「んな身勝手な!」
『身勝手でいいんだよ。なんせ俺は王様だからな』
「は?お前のその王冠飾りじゃねえのかよ」
『当たり前だ。こいつは王として認められた者だけが許される代物だ。つまりこの俺、"オークキング"だけが被ることができるのだ』
「オークキング!?」
「なんだリア、知ってんのか?」
「逆に慎也さん知らないんですか!?」
(いや、知らねえよ。この世界来てまだ日浅いし)
「オークキングはその名の通りオークの王。強さは、Aランクの冒険者たちがパーティーを組んでやっと勝てる魔物なんです」
(なるほど。ならこのレベル差も理解できる。でもじゃあどうやって倒すんだこいつ?)
『さて、無駄な時間を食っちまったな。それじゃあ続きと行こうか。といっても、この一撃で終わらせるがなっ!』
そう言うとオークは目にも留まらぬ速さで慎也との間合いを詰め、大剣を振るう。
「なっ!?」
慎也は無意識に剣で身を守るが、剣は振われた大剣によって折られ、それと同時に慎也の胴体に大きな切り傷が出来る。そしてオークキングの力ゆえに慎也の体が勢いよく後退し、後ろの壁に衝突した。
「ぐはっ!」
全身に激痛が走り、口から吐血する慎也。そのまま地面に落ち、うつ伏せで倒れる。
「慎也さん!!」
そこに慌てて駆け寄るリア。
(マジかよ。完全に実力が桁違いじゃねえか。あんなんにどうやって勝つんだよ!)
「慎也さん・・慎也さん・・!」
倒れる慎也の側で涙を流し、嘆くリア。するとオークキングはある提案を持ち出してくる。
『おい小娘。その男を助けたいか?』
「なんですか急に。当たり前でしょ!」
『なら1つだけそいつが助かる方法を教えてやろう』
(俺が助かる方法?一体何を・・)
『それは・・・
お前が俺の奴隷になることだ』




