洞窟内での奮闘
(待ってろリア!絶対に助けるからな!)
ライルと別れた後、慎也は無我夢中で洞窟へと駆けて行く。すると、洞窟の前にいるにオークたちが、向かって来る慎也に気づき、1体は斧を構え、もう1体は腰に着けている鞘から剣を抜き構える。
(やるってか。いいぜ、こっちも最初からその気だ)
慎也は走りながら腰から剣を抜き、オークまで残り数mというところで、剣を持ったオークに勢いよく斬りかかる。
「チッ」
しかし、オークも慎也の攻撃を剣で防ぐ。すると斧を持ったオークが、慎也の左から飛びかかる。
(そう来るか。なら!)
「グゴ!?」
慎也は左手で目の前のオークの腕を掴み、飛びかかって来るオークに向かって投げ飛ばす。突然のことで反応が出来なかったオークは、そのまま飛んで来たオークに激突し、体が重なるように地面に落ちる。
(雑魚が・・)
そんなオークたちに慎也は上から、2体同時に剣で胸の辺りを突き刺す。すると、起きあがろう手足をばたつかせていたオークたちの体が、ピクリとも動かなくなった。
(こんなところで苦戦してられるか。こちとら仲間がピンチなんだよ)
慎也はオークたちから剣を抜き、オークたちの住処であろう洞窟に入る。洞窟の中は、明かりが壁に立て掛けられた松明しかなく、薄暗い。それでも慎也は気にせず、洞窟の中を駆け抜けて行く。すると前方に5体のオークが現れる。
(チッ!またか!)
足音でオークたちが慎也に気づき各々、剣や斧を構える。それでも慎也は狼狽えず、まっすぐ突き進む。すると剣を持った2体のオークが慎也に向かって走り出す。そして、先頭にいるオークが走って来る慎也に飛びかかり、剣を振り下げる。それ慎也は剣でガードすると同時に、オークを押し返し、前に飛ばす。その直後、もう1体のオークが慎也の腹部めがけて剣を横に振るう。慎也は咄嗟に後ろに飛び、服が切れる程度で済む。
(こいつら倒さねえとここは通れねえってわけか。上等だ!)
「てめえら全員殺して、リアを取り戻してやる!」
その言葉と共に、慎也はオークたちに向かって走り出す。1番手前にいたオークに剣を振るうが、剣で防がれてしまう。それと同時に慎也が飛ばしたオークが慎也に剣を振り上げながら飛びかかるが、慎也は後ろに飛びオークの攻撃を躱す。
「『アイスブレード』!」
慎也はオークに着地と同時に氷の刃を放つ。しかし、氷の刃はオークの後ろから飛んで来た斧に防がれてしまう。
(5体もいると面倒だな。少し強引なやり方しないと仕留められねえかな)
先程慎也に飛びかかった来たオークが、慎也に斬りかかる。そして振り下ろされる剣を慎也は剣で防ぐ、のではなく、空いている方の手で掴む。
「グゴ!?」
「チッ!おら1体目!」
手から血が出るが、気にせず慎也はオークの頭に剣を突き刺す。オークは剣から手を離し、その場に倒れる。
(痛え、けどこれくらい強引じゃねえと5体も相手してらんねえな・・・っと来たな)
さらに前方から斧を持ったオークが2体、慎也に向かって行く。そして斬りかかって来たオークの攻撃を慎也は体を傾けて躱す。そこに追い打ちをかけるように、もう1体のオークが慎也に飛びかかり、斧を振り下ろす。慎也は咄嗟に横に飛んで躱すが、斧が肩に掠る。
(お返しだおら!)
慎也は飛んだ足が地面についた瞬間、前に飛んで着地した直後のオークの頭に剣を突き刺す。そこに横からオークが斬りかかって来るが、慎也はオークの死体を盾にして防ぐ。そして慎也は腕でオークの死体を剣から押し抜き、斬りかかって来たオークを押し倒す。
(3体目!)
慎也は剣を逆手に持ち、押し倒したオークの頭に突き刺す。
(ふぅ・・・これであと2体)
慎也は立ち上がり、残ったオークたちと向き合う。その瞬間、慎也の脚めがけて斧が飛んで来た。突然のことで慎也は反応できず、斧は慎也の右脚に刺さってしまう。
「ぐっ!マジか・・!」
慎也はその場に膝をつき、斧の刺さった脚から斧を抜き、傷口を押さえる。すると今度は慎也の頭めがけて剣が飛んで来る。
(またか!)
脚を痛めて、避けることの出来ない慎也は、咄嗟に左腕でガードする。そして剣は慎也の左腕に突き刺さってしまう。
「ぐあぁ・・っ!」
(くそ、二連続は禁止だろ。だがこれであいつらは武器失ったし、今なら魔法でも倒せるな)
慎也は剣と斧を抜き、自分の後ろに投げ捨て、オークたちが取れないようにする。すると今度は、オークたちが慎也めがけて殴りかかっていく。
(単純!んなもん避けるまでもないわ!)
「『ウィングウォール』!」
慎也は左手を前に突き出し、風で出来た壁を出現させる。それにぶつかったオークたちは、後方へ吹っ飛ばされた。
「『アイスブレード』!」
慎也は風の壁を消し、すぐさま氷の刃をオークに放つ。オークは武器を失っているため、氷の刃を防ぐことが出来ず、氷の刃が頭に突き刺さる。残ったオークは慎也に勝てないと思い、洞窟の奥に逃げるべく走り出した。
(逃すか!)
「『ファイヤーボール』!」
逃げるオークに慎也は火の球を放つ。背を向けて、後ろを気にしていなかったオークは、火の球が命中し、体が燃える。
「グガアアア!!!」
洞窟全体に響き渡るほどの奇声をあげながら、オークはのたうち回る。しかし、次第に動きは遅くなっていき、ついには動かなくなった。
「ふぅ、やっと片付いた。急いで怪我治さねえと」
慎也は脚と腕に『ヒール』をかけ、傷を癒す。そして数十秒後。傷は完治し、慎也は再び洞窟の奥へと走り出す。
(待ってろ、今行くからな・・)
そう思ったのも束の間。奥から複数の足音が慎也に迫ってくる。先程のオークの奇声で慎也の存在がバレたのだ。
(チッ!オークって最後の最後までクソだな。仕方ねえ・・)
「やってやる。ここにいるオーク全員殺してやる!」
「はぁ・・はぁ・・」
傷だらけの体で、少しよろつきながら洞窟を小走りで進む慎也。洞窟を進む道中、何回もオークと遭遇しては戦っての繰り返しで、すでに慎也には魔力が残っていなかった。それでも慎也は、リアを救うために諦めず、洞窟を進んで行く。
「はぁ・・はぁ・・頑張れ俺。こんなに進んでんだ、あと少しのはずだ」
自分に暗示をかけるように独り言を呟く慎也。しかし出っ張っている地面に躓いてしまい、その場に倒れる。
(くそ、あとちょっとのはずなのに・・!)
慎也は再び立ち上がり、大量の汗を流しながら、洞察を進み続ける。すると・・
「・や・・・て・!」
(!もしかして!)
洞窟の奥から微かに声が聞こえて来る。慎也は思わず進むスピードを上げ、痛みに耐えながらも、どんどん進んで行く。すると段々と、声がはっきり聞こえてくるようになっていく。
「やめて、やめてよ!やだ!離して!」
(間違いない、リアだ!)
慎也は今出せるだけの力で洞窟を駆けて行く。進んで行くにつれ、前方に曲がり道が見えた。慎也はそれを曲がり、大きな空間へと出た。
「リア大丈・夫・・か・・」
慎也は目の前に広がる光景に絶句した。奥の壁に固定された鎖で、両手首を繋がれたリア。そしてそれを囲むようにいる3体のオーク。そのうちの2体はリアが抵抗出来ないように脚を抑えて、もう1体のオークは体に何も身につけず、リアの前に立っていた。さらにその周りには、今日リアが身につけていたであろう服が破り捨てられ、散乱していた。現に、リアは今は何も身につけておらず、文字通りの丸裸状態であった。3体のオークが慎也の声で存在に気づき、後ろに振り返り、剣を構える。そして・・
「し・・ん・や・・さん・・」
掠れる声で慎也の名前を呼ぶリア。その瞳からは涙が溢れる。それを見た瞬間、慎也は心の奥底からとてつもない怒りが込み上げてきた。
「貴様らぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
慎也は怒りのみがこもった叫びと共に、オークたちに向かって走り出した。そこから感じられる威圧にオークたちは一瞬狼狽えたが、すぐに持ち直し、向かって来る慎也を迎え撃とうと走り出す。
(まずは裸のオーク、テメェからだ!)
勢いよく斬りかかって来たオークの攻撃を、慎也は踏み込んだ右足を軸に、体を時計回りに回転し、回避すると共にオークの背後を取る。そして勢いに任せて、剣でオークの首を斬り飛ばす。まるで体の傷などないかのような身のこなしだ。
「次はてめえらだ!」
「グゴ!グゴゴ!」
「グゴ!」
1体のオークがもう一方のオークに何かを言うと、慎也の背後に回り込み、挟み撃ち状態になる。しかしそんな状況でも慎也は表情を変えず、オークたちを怒りのこもった目で睨んでいる。
「グゴゴ!」
「グゴ!」
慎也の背後に回ったオークが、合図に送るように声を上げる。それと同時に2体のオークが慎也に向かって走り出し、慎也の前にいたオークはそのまま斬りかかり、背後にいたオークは剣を振り上げながら飛びかかって来る。前方から斬りかかって来るオーク、それを慎也は平然と体を横に傾けて躱す。そして持っている剣を、目の前のオーク・・・・にではなく、飛びかかって来たオークの頭に突き刺した。
「次はお前がこうなる番だ」
「グゴ!?」
慎也はオークの死体を適当に振り捨て、目の前のオークに歩み寄る。するとオークは悲鳴を上げながら、その場から逃走した。それを追いかけようとした慎也だが、ここで体に限界がきてその場に倒れてしまう。
「慎也さん!大丈夫ですか!?」
「あ、ああ。街に戻る分には大丈夫だ。今鎖切るから待ってろ」
慎也はよろつきながらも立ち上がり、リアの前まで移動する。そしてリアの腕を壁と繋げている鎖を、剣で切断する。腕が自由になったリアは立ち上がり、安堵の息を漏らす。
「それじゃあ街に戻りましょうか」
「え、いや、リア。あのー、このリュックの中に俺の服あるからさ、着てくれねぇか?」
「え?あ、きゃああ!」
自分の状況を思い出したリアは、顔を赤くして、その場にしゃがみ込む。慎也はリアに背を向け、背負っているリュックから自分の服を取り出し、リアに渡す。それを受け取ったリアは恥ずかしがりながら、慎也の服に着替えていく。
(そういえば異性の裸見るの初めてだったな。女ってああいう体・・・・って俺は何を考えてるんだ。今すぐ忘れよう。リアだって見せたくて見せたわけじゃねえんだからな。消去消去)
「お、終わりましたよ」
「そうか。それじゃあ街に戻るぞ。ライルも心配してるだろうし・・・っと」
「ちょっと慎也さん、フラついてるじゃないですか!肩貸しますから、ゆっくり行きましょう」
「おう、サンキュー」
慎也は腕をリアの肩に回し、一歩一歩ゆっくりと支えられながら歩いて行く。慎也の中には、仲間を助けられたことによる安堵。リアの中には、命懸けで自分を助けてくれた慎也への感謝と、無事に街に戻れるという安心。2人の顔には笑顔が戻っていた。
しかし、そんな2人の笑顔を崩すように洞窟内に大きな足音が鳴り響く。神は2人の味方をしてはくれなかった。




