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世界渡りの少年  作者: 憧れる妄想
第一世界 第三章 仲間を想う力
30/211

仲間のために・・




(結局見つかんなかったなゴブリン)


慎也がライルたちと分かれてから1時間が経った。日はとっくに暮れ、空には満天の星空が広がっている。


(それにしても星綺麗だな。もといた世界じゃ星すら見たことないしな。今のうちに見とくか?)


慎也は立ち止まり、その場に仰向けになる。


(てか星座ってあるけど、どうやって見分けるんだ?あれはまるまる座だよとか、あれはなになに座よって言ってる奴の目ってどうなってんだ?俺じゃ到底出来ねえな・・・夏菜ならやれるかも。あいつテストの時いっつも8割以上だったからな、星座の知識もあるかも・・・そういえばあいつら今頃どうしてっかなー。俺がいなくて寂しくて泣いてねえかなぁ。てか逆に何も思われてなかったら俺が泣いちゃう、しくしく・・・・1人で何やってんだ俺)


独り言を言っているみたいで虚しくなった慎也は、立ち上がり森を出ようと草原を目指して歩き出す。


(そろそろライルたちも森を出てる頃だろ。少し急ぐか!)








数分後。森を出た慎也は剣の素振りをしながらライルたちを待っていた。しかし、いくら待ってもライルが来ず、慎也もそろそろ我慢の限界がきている。


(・・・ああもうあいつら遅えなあ!いつまで待たせる気だ!素振りしすぎて腕も限界だわ!それとももう帰ったのか!?夜になったら森の外で集合ってつったのあっちなのに・・・明日ギルドで会ったら覚悟しとけよ)


未だに来ない2人にしびれを切らし、慎也は眉をひそめながら、街へと向かって歩き出す。その時・・


「やめて!!離してぇぇ!!!いやぁぁぁ!!!」


ゴブリンの森から、森の外にいる慎也にまで聞こえるほどの悲鳴が上がる。


(っ!?おいおい待て!今の声って、リア!?)


慎也は再度森の中に入り、悲鳴がした方に一目散に走り出す。


(今の悲鳴、只事じゃねえ!急がねえと!くっそライルは何やってんだ!)


慎也はさらにスピードを上げ、全速力で走る。









走り出して数十秒後。かなり暗くなった森の中、慎也は前方に地面に倒れているライルを見つける。


(あれは!)

「ライルっ!!」


慎也はすぐにライルに駆け寄り、体制を仰向けにして体の状況を確認する。


(っ!これは酷すぎる・・)


服は何箇所か斬られた部分があり、ボロボロ。さらにその切れ目からは切り傷が見え、浅いものもあれば、深い傷もある。そして極め付けは両手足と腹部にある刺傷である。どれもが深く、大抵の人間は痛みで動かせない、そう思わせるほどの傷であった。慎也はすぐに胸に耳を当て、心臓が動いていることを確認する。


(よかった。とりあえずは生きてるか)

「『ヒール』」


慎也は目立つ刺傷から魔法をかけていき、回復させていく。するとライルの目がうっすらと開く。


「・・し・・・ん・・や・・?」

「ライル起きたか!安心しろ、今回復してるからな。もう少しの辛抱だ」

「俺・・よ・・り・・・はぁ・・はぁ・・・リア・・を・・!」

「リアを?そういえばさっきからリアの姿が見当たらねえが、あいつはどこに?」

「リア・は・・・げほっ・げほっ・!」

「無理に喋んな。まずは傷を・・」

「はぁ・・はぁ・・リア・は・・・オークに・・・捕まっ・・ちまった・・」

「・・・は?」


ライルに告げられたことに驚きを隠せない慎也。しかしライルは構わず声を振り絞って言葉を続ける。


「オーク・・は・・・あっちに・・」


ライルは震えながらも腕を動かして、ある方向に指を差す。慎也はつられて、ライルが指を差した方向に目を向ける。その先には、かなり大きな洞窟が掘られた山があり、その洞窟の前を、豚の顔をした二足歩行の緑色の魔物が2体ほど、守るような形で立っていた。


「あそこにリアが・・」

「頼む・・慎也・・・何も出来なかった・・俺の代わりに・・・リアを・・助けてくれ・・!」


ライルは慎也の服の袖を掴み、涙を流しながらそう言う。その言葉を聞いた瞬間、慎也はライルの腕を振り解いて立ち上がり、穴の方へと体を向ける。


「安心しろライル。リアは絶対に俺が助ける」


そう言い残し、慎也は穴に向かって走り出した。












・・・ライル視点・・・


慎也の走る後ろ姿を見ながらライルは、リアを守れなかった自分の不甲斐なさを悔やんでいた。


(どうして俺はこんなに弱いんだ。リアと違って俺はチャントスキルを持っているのに、なんで俺はリアを守れなかったんだ!くそ・・)


ライルは歯を食いしばりながら、再び涙を流す。しかし、ここで泣いていても何も変わらない。そう思い、慎也のお陰で多少動くようになった体を起こし、僅かに残った魔力を使い、自分の脚の傷を回復する。


(完全に治ったわけじゃねえが、歩く分には申し分ない。だが、歩けるようになったからって、今慎也の加勢に向かっても、足手まといになるだけだ。どうすれば・・・・そうだ、助けを呼ぼう。今なら他の冒険者たちもギルドで騒いでる頃だ。だが・・)


関係のない赤の他人に、頼ることしか出来ない自分が情けなく、自然と拳に力が入る。


(・・でも、今の俺に出来ることはこれしかねえ。待ってろよリア、慎也!すぐに助けを呼んで戻ってくるからな!)


慎也は脚から伝わってくる痛みに耐えながらも、街に向かって走り出した。








それから1時間後。外に漏れる家の光や街灯に照らされた夜道を、ライルは脚を引きずりながらも、剣を支えにして、ギルドへ必死に向かっていた。


(あと、少し・・・・見えた!)


ギルドの入り口が見える距離まで来ると、ライルは剣を鞘にしまって、走り出した。


(耐えてくれ俺の脚!)


そして、とうとうギルドの扉にたどり着き、ライルは勢いよく扉を開ける。


「誰かっ!!」


ライルの声に、ギルド内にいた人が全員ライルの方へ視線を向ける。そして、ライルは深々と頭を下げて、言い放った。


「頼む!金ならいくらでも払う!だからオークたちから・・・・リアと慎也を助けてくれっ!!

(お願いだ!頼む!)


ギルド内を数秒の沈黙が支配する。すると、それを破るように2つの足音がライルに近づいて行く。そして音の主のうち1人が、ライルの肩に手を置く。ライルは慌てて顔をバっと上げる。そこにいたのは・・


「その話、詳しく聞かせてもらえませんか?」


青ざめた表情に、冷や汗をかいているエリシアとハーツがいた。




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