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世界渡りの少年  作者: 憧れる妄想
第一世界 第三章 仲間を想う力
29/211

きっかけへの始まり




「あれから数分後。慎也たちはゴブリンの森の中に入り、討伐対象であるゴブリンたちを発見」

「そして現在は茂みの中でそのゴブリンたちの様子を伺っている」

「・・・何言ってんのお前ら?」


突然意味のわからないことを言い出した慎也とリアに対して、ライルは困惑していた。


「状況説明は必要だろ?」

「確認は必要だが説明はいらんだろ。誰に説明してんだ」

「それは・・・ねぇ?」

「いやねぇ?じゃねえよ!そんなんで伝わるか!」

「おいライル静かにしろ。あいつらに気づかれるぞ」

「うるさくしたのお前らだろ・・・・それで?どういう作戦であいつらやるの?」


そう言うライルが指差す方向には、ゴブリンソードとゴブリンマジックが2体ずつ、ゴブリンアローが1体その場に座り込み、休憩していた。


「あの構成ならプランCだな」

「了解しました」

「ああわかった・・・・ってちょっと待て!」

「もうなんだようるっせえな」

「そりゃうるさくもなるわ!なんだプランCって、そんな作戦練ってねえだろ!」

「え、もしかしてライルもう忘れたの?ここに来る途中で慎也さんの情報を元に話し合ったじゃん」

「話し合ったのは慎也の金欠問題についてだろ!作戦のさの字もなかったわ!」

「はぁ・・・もう慎也さん。ライルにプランCを一から説明してあげてください」

「なんで俺が問題児みたいな扱いされてんだよ」

「いいかライル?一度しか言えないからよく聞けよ。まず俺が、ゴブリンマジックをここから魔法で仕留める。その瞬間お前とリアでゴブリンソードを仕留めに行ってくれ。周りの遠距離型の奴らは俺がやる。それで片方が終わったらもう片方に加勢する。わかったか?」

「うんやっぱ初めて聞いたそんな作戦。まあいいや、了解した」

「よし、じゃあ俺がゴブリンを仕留めたら出ろよ」


慎也は茂みの隙間から音を立てないように片手を出し魔法を唱える


「『アイスブレード』!」


慎也の手に氷の刃が生成され、未だに座っているゴブリンマジックの頭目掛けて一直線に放たれる。そして氷の刃は・・


「グギャッ!?」


見事ゴブリンマジックの頭に突き刺さり、ゴブリンマジックはその場に倒れる。しかし、それによって他の4体が慎也たちの存在に気づき、横に置いてあった武器を拾い構える。


「行くよライル!」

「おう!」


それと同時にリアとライルは茂みから飛び出る。


「『ファイヤーボール』!」


リアは1番手前にいるゴブリンソードに向かって、杖から火の球を放つ。それをゴブリンソードは剣でガードする。


「気ぃ抜いてる暇はねえぞ!」

「グギャ!?」


そこにライルが剣で連撃を放ち追い討ちをかける。ゴブリンソードはそれをなんとか剣でガードしている。すると横から矢が勢いよく飛んでくる。ライルは攻撃を止め、後ろに飛んで矢を躱す。


「くそっ!これだから遠距離は苦手なんだよ」

「その遠距離を今から始末するから、ゴブリンソードに集中しろ」


慎也も茂みから飛び出し、ゴブリンアローに向かって走り出す。


「グギャアア!」

「っ!?マジか!」


慎也の接近に気づいたゴブリンマジックが、杖から炎を放つ。間一髪で慎也は横に転がり躱す。


(前の奴と使ってくる魔法が違うのか!?しかもよりによって『スプレッドフレイム』かよ。こりゃ厄介だな。でも・・)

「やるしかねえんだよな。とりあえず先に弓の方をやるか。このままいられても困るし」


慎也は立ち上がり、剣を抜きすぐにゴブリンアロー目掛けて走り出す。しかし、ゴブリンマジックが行かせまいと、慎也とゴブリンアローの間に入り、今度は杖から火の玉を放つ。それを慎也は体を横に傾けて躱す。


(こいつの使う魔法は主に火属性か。やっぱり前戦ったゴブリンマジックとは使う魔法が全然違うな)

「グギャ!グギャ!グギャ!」


ゴブリンマジックは今度は火の球を3つ連続で慎也に放つ。それを慎也は慎重に無駄のない動きで全て避ける。


「そんな攻撃じゃ俺に勝てねえぞ!」


ゴブリンマジックのすぐ目の前まで接近した慎也。そこにゴブリンマジックが杖から炎を放ち、応戦する。


「甘いっ!」

「グギャ!?」


それに対して慎也は、ほぼゼロ距離の状態で上に飛び、ゴブリンマジックごと魔法を飛び越える。当たることを確信していたゴブリンマジックは驚きを隠せなかった。そして慎也が飛んだ先にはもちろん・・


「まず1体!」

「グギャアア!」


ゴブリンアローは突然の攻撃に反応できず、慎也の剣が頭を貫通した。


(俺の担当は残りこいつだけか・・・ってやば!)


攻撃直後の隙を狙って、ゴブリンマジックは慎也の後ろから炎を放つ。慎也はゴブリンアローが刺さったままの剣をその場に捨て、瞬時に横に転がり躱す。

 

(あっぶねー。あと1秒でも気づくのが遅れたら全身まるこげだったわ)


すぐさま立ち上がり、ゴブリンマジックから距離取る慎也。ゴブリンマジックも慎也に向かって火の球で追撃する。


(ああくそめんどくせえ!魔法連発するところは前と同じかよ!・・・ってそういえばライルたちは大丈夫なのか?)


2人の様子が気になり、慎也はちらり2人の方へ視線を向ける。








・・・ライル視点・・・


慎也がゴブリンアローを仕留める少し前。2体のゴブリンソードの連携攻撃で苦戦を強いられているライルとリア。


「グギャギャ!」

「っ!また来やがった」


ゴブリンソードがライルに向かって剣を振るい、それをライルは剣でガードする。するともう片方のゴブリンソードが上からライルに向かって剣を振り下げながら飛びかかる。ライルは後ろに飛んで躱し、ゴブリンソードの剣は勢いよく地面に激突する。


(ああもうこの連携うぜえな!)

「『ウォーターショット』!」


ゴブリンソードが着地したタイミングでリアがそこに水の球を放つ。しかし、もう1体のゴブリンソードに剣で防がれ、命中せず。


「また防がれたぁ!」

「どうするリア?このままだと決着がつかねえぞ」

「あの2体の連携をなんとかできれば、仕留めれそうなんだけどなぁ・・」

(あの連携をなんとか、か。でもあいつらさっきから常に片方がもう片方に引っ付いてる感じだし、まずはそれをなんとかしねえと)

「・・・あ、そうだ!」


ライルが現在の状況をなんとかしようと考え込んでいると、リアが何かを思いついたように声を上げる。


「ん?どしたリア?」

「ねえライル。『スノウボール』って魔法覚えてるよね?」

「ああ、なんか前にお前に話されたな。たしか命中したところが凍るんだったよな?」

「そう。それで、『スノウボール』でどっちかの動きを止めれれば!」

「・・・なるほど。それならあいつらの連携も崩せるし、倒すのも楽になるな」

「でしょ?我ながら名案じゃない?」

「それじゃあさっさと実行すっか。俺が2体の気を引いてるから、隙を見てどっちかの動き止めてくれ」

「了解!」


ライルはゴブリンソードたちに向かって走り出す。それに対抗するようにゴブリンソードたちも走り出す。


(2体同時か。こりゃあ使うしかなさそうだな・・・俺の"チャントスキル"!)


ライルは剣に自信に流れる魔力を送る。それと同時にゴブリンソードたちがライルに剣を振り上げながら飛びかかる。


「魔力は十分、行くぜ!『リメインスラッシュ』!」


ライルがそう唱えると、剣が紫色のオーラを纏う。その剣をライルは、ゴブリンソードたちがいる方向に大きく横に振った。すると空中、というより剣を振った場所に少し太めの長い紫色の線が残る。しかし、ゴブリンソードは気にせず、ライルに向かって剣を振り下げる。そしてゴブリンソードの剣と紫色の線が触れた瞬間。


「グギャ!?」

(バカどもめ)


火花が散り、ゴブリンソードの剣が弾かれる。そのおかげで、ゴブリンソードたちは受け身を取れずに地面に落ちる。


(『リメインスラッシュ』。魔力を込めた状態で剣を振るうと、剣を振った場所に魔力の斬撃を残すことの出来るスキルだ。このスキル使い勝手いいから結構好きなんだよなぁ)

「リア今だ」

「そうね。『スノウボール』!」


リアは杖から白い球を一方のゴブリンソードの足に向かって放ち、地面に固定する。


「よし、あとは楽勝だな」

「だね」


このあとは一瞬だった。まだ脚を自由に動かせる方をライルとリアは2人でリンチし、動けない方はライルが剣で一突きで終わった。








・・・慎也視点・・・


(あっちはもう終わってんのか。それじゃあこっちもさっさと済ませるか)

「グギャ!グギャ!グギャアア!」


ゴブリンマジックが慎也に火の球を2つ放ち、避けた先に炎を放つ。しかし慎也はそれを全て躱し、ゴブリンマジックに向かって走り出す。


「ギギギ!グギャア!」

「うお!マジか!?」


すると危機を感じたのか、ゴブリンマジックが奇声をあげる。それと同時に、杖を中心に茶色に変色した風が球を作るように集まり出す。そしてゴブリンマジックはその球を慎也に向かって放つ。慎也は剣でガードするが、辺り一帯に土煙が広がり、慎也の視界が悪くなる。


(ああくそっ!あいつやりやがったな。とりあえずこの煙どうにかしねえと)

「『ウィングショット』」


慎也は緑色の球を地面に放ち、周りの土煙を晴らす。そして周りを見渡すが、そこにゴブリンマジックの姿はなかった。


「チッ、逃げられたか」

「おーい慎也。そっちは終わったか?」


ゴブリンソードたちの首を回収したライルたちが慎也に駆け寄る。


「悪い、1体逃しちまった」

「マジか・・」

「どうします?そろそろ時間的に日が沈みますが」

「手分けして探したらすぐ見つかるだろ」

「えーめんど」

「逃したのは慎也さんなんですけどね」

「よし、じゃあさっさと探すか!」

「「はぁ・・」」

「おい2人揃って溜息吐くな。とりま探すなら二手に別れて探そう。ライルとリア、んで俺は1人な」

「1人で大丈夫なのか?」

「大丈夫大丈夫。あいつ単体なら楽勝だから」

「まあ慎也さんなら大丈夫そうですね。それじゃあライル、行こ」

「おう。じゃあ夜になるまで捜索な。夜の森は危険だからな、これは強制で。んで、夜になったら森の外で集合な」

「りょうかーい・・・っと、その前に俺が倒した奴の首回収だな」

「それは俺がやっとくよ。慎也はさっさと見つけ出して、首を持って来い」

「そうか。それじゃあ頑張りますかね」


慎也は剣を鞘に納め、その場から離れた。そしてライルたちも、首の回収を終えた後、慎也とは別の方向へと歩き出した。














時は進み、慎也たちが二手に分かれた数時間後。街中には、さすが聖女と言わんばかりの微笑みを浮かべ、周りの男を魅了しながら歩いているエリシアがいた。もちろん本人は無自覚である


(まさか城の研究者さんがみんな揃って熱で寝込んでしまうとは、やはり徹夜はいけませんね。体調を崩してしまいます)


城にいる研究者が皆、体調を崩してしまい、『スラッシュストーム』について調べてもらうことが出来なかったエリシアは、とりあえずは紙をギルドマスターであるハーツに預けようとギルドへ向かっていた。


(あ、着きましたね。ってあれ?何か中が騒がしいような・・)


ギルドに着いたエリシアだが、ギルド内が騒がしいことに気づく。


(いつもの冒険者さんたちのとは少し違うし・・・まあ入ってみればわかるでしょう)


エリシアはギルドの扉を開け、騒ぎの原因を探す。すると目に入ったのは、受付の向こうで、自分の部屋からは極力出ないようにしているハーツが、神妙な面持ちで職員らと話しているのと、それを不思議に思い、受付から覗いている冒険者たちだった。


(何かあったのでしょうか?とりあえずハーツさんに聞いてみましょうか)

「すみませんちょっといいですか?」

「あ?なん・・・ってあんたは聖女!?」

「少しハーツさんに御用があるのですが、通らせていただいても・・」

「ど、どうぞ!」

「ありがとうございます」


ハーツに事情を聞くため、他の冒険者の身を避けながら、なんとか受付までたどり着く。


「すみませーん!ハーツさーん?」

「ん?おおエリシアじゃねえか。ちょうどいい、お前にも話しておこう」

「?」


少しして、受付から出てきたハーツはエリシアに事情を説明した。


「・・・"ゴブリンの森"にオークの目撃情報ですか」

「それも1体や2体じゃねえ。群れでの目撃だ。1体ならたまたま入っちまったで説明がつくが・・」

「たしかに群れはおかしいですね」

「それにただのオークだけじゃねえ。ここいらでは滅多に発見されない"オークキング"の目撃例も挙がっている」

「オークキングが!?」


オークキング・・・慎也が先日戦ったゴブリンウォーリアーよりも5倍、またはそれ以上の強さを持っており、本来討伐出来るようになるにはAランクにならないといけないほど危険視されている魔物だ。そんな魔物が新米冒険者が行くような森にいるのだ、エリシアが驚くのも無理はない。


「それってすごく大変なことなんじゃ?」

「ああ。だからこうして職員に、しばらくは低ランクの冒険者をゴブリンの森には行かせないようにするために説明してたんだ。んでもって、明日くらいにAランク以上の冒険者たちに頼もうと思ったんだが・・・まさかエリシア帰ってくるとはな。あの紙を城に持ってったんじゃねえのか?」

「それが・・」


エリシアはハーツに事情を説明した。


「・・あいつらは体調管理も出来ねえのか。いや、これはこれで好都合か。エリシア、明日にでも・・」

「もちろん討伐してきますよ。新米と言えど、冒険者になれば、ランク関係無しにみんな仲間です。そんな仲間を見殺しするようなことはしたくありません」

「お前ならそう言ってくれると思ってたぜ。それじゃあ討伐の報酬は普通のクエストの割増にしとく」

「ありがとうございます。それじゃあ明日に備えるため、宿に行きますね」

「おう、明日頼んだぜ」

「はい、それじゃあ」


そう言い、エリシアはその場を去ろうと扉の方へ歩き出そう・・


「誰かっ!!」


・・としたところで、扉から勢いよく剣を持った青年が入ってきた。


「ん?なんだ?」

「何か焦っている様子ですが・・」

(あれ?あの人見覚えが・・)


すると青年は深々と頭を下げ、大声でこう言った。


「頼む!金ならいくらでも払う!だからオークたちから・・・・・













      **と**を助けてくれっ!!」


それを聞いた瞬間、エリシアとハーツの顔は、青ざめていた。




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