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世界渡りの少年  作者: 憧れる妄想
第二世界 第五章 堕ちた王と氷狼
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学校最強の抵抗




・・・慎也視点・・・


(あー冷えなぁ・・)


地面から生えた無数の巨大な氷の棘。その中の1本に慎也は顔の半分以外の部位が全て覆われる形でいた。


(やべぇ、体が動かねえ。それになんか眠くなってきたな・・)


いくつもの氷の剣に刺された体は、氷から脱出する力を慎也に与えることが出来ず、身体が冷えているせいか意識も朦朧としていた。


(・・でも体くそ痛えし、いっそこのまま寝て楽になりてえな)


すでに体が限界を迎えていた慎也は、微かに残った意識を手放そうとしていた。


「・・おやすみ」


誰かに届くことのない言葉を最後に、慎也は目を閉じた。











「はあああああああああ!!!」

(・・今のは)


突然校庭に響き渡った声。その声はしっかりと慎也に届き、手放そうとした意識を取り戻した。


(あれは・・・鈴川、か?)


氷越しで歪んではいるが、何本もの氷の棘の向こう側に、鈴川が白狼に向かってる姿を見つける。


(あいつ、勝てないってわかってるくせに)

『彼女も慎也と同じなんだよ』

(!)


2人の様子を見てた慎也の脳内に、突然謎の声が語りかける。


(・・お前にはそう見えるのか、"イム")

『うん』


声の正体は、慎也の友であり、助力するスライムのイムであった。


『彼女は慎也と同じ、友達のために戦ってるんだよ』

(あいつが?なんでわかんだよ)

『直感かな。でも、戦ってる慎也と同じ目をしてる』

(同じ目、か)

『それに、慎也だって相手がどんなに強くても、友達のためなら立ち向かうでしょ?』

(・・よくわかってんじゃねえか)

『そりゃあ友達だからね』

(それもそうか・・・イム、行ってくる)

『違うでしょ、慎也』

(?・・・あ、そうだな。"行こう、イム!")

『うん!』


その瞬間、慎也の両目が青く染まった。











・・・怜視点・・・


『どうした?俺に勝つんじゃなかったのか?』

「っ!」


慎也に使われたせいでボロボロになっている竹刀を何度も振り続ける怜。しかしその攻撃が白狼に届くことはなかった。


『そろそろお前の相手も飽きてきたな』

「では死んでください!」

『それは無理な相談だ』


そう言うと白狼は怜の振った竹刀を掴みへし折った。


(竹刀が・・!)

『こんなゴミを握って俺に勝つとは、笑わせるな』

「っ!」


攻めるすべを無くした怜に、白狼は容赦なく数発の拳を撃ち込んだ。その衝撃で怜は後方へとぶっ飛ばされる。


「かはっ!」

『さて、どうする?貴様の武器も心もへし折ったと思うんだが』

「・・竹刀が無くなったからといって諦めるほど、私は潔くありませんよ!」


そう言うと怜は拳を強く握り、白狼に殴りかかった。


『人間にしてはいい動きだぞ女』

「くっ!」


何発も拳と蹴りを撃ち込むが、全て白狼に簡単に受け止められてしまう。


『・・お前の頑張りを評して、少し付き合ってやる』

「っ!?」


そう言った白狼は怜の打った拳を受け流すと、腹部に膝蹴りを入れて下から顎に拳を撃ち上げ、再度腹部に裏拳を入れて怜をぶっ飛ばした。


「がはっ!」

『まだまだ行くぞ!』

「っ!」


怜は急いで立ち上がり白狼の攻撃に反応する。その後の攻撃も紙一重で防いでいく。


(この人、わざと私がギリギリ反応できるようにスピードを調整して遊んでますね!)

『そんな睨んでも怖くないぞ?悔しかったら一矢報いてみろ』

「ならお望み通り!」


白狼の連続攻撃の間を縫って、怜は白狼の顔面に拳を放った。しかしそれはしゃがんで躱され、白狼にすぐさま足払いされる。


(それは読んでましたよ!)

『・・へぇ』


すると怜は白狼の足払いを飛んで躱し、続けて白狼の頭目掛けて蹴りを放った。しかし・・


「っ!」

『人間離れしてるが、これじゃあ俺には届かない』


怜の放った蹴りは白狼に当たる寸前で掴まれてしまった。そして白狼は怜を勢いよく投げ飛ばした。


「うっ!」

(さすがに、頑張りすぎましたね。体的にも、撃ててもあと1発でしょうか)

『身体能力は他と比べてずば抜けている。だが人間は人間、そろそろ限界だろう?』

「・・ええ、その通りですよ」


そう言いながら、怜はよろつきながらも膝に手をついて立ち上がった。


「ですが、限界といえど私は立ちますよ」

『・・お友達のためか?』

「よく、わかってるじゃないですか!」


一歩、また一歩と怜はゆっくり歩いて行き、その足は段々と速くなっていく。そして怜は最後の力を振り絞って、全速力で白狼に向かって行った。


(この一撃に、私の全てを乗せます!)

「はあああああああああ!!!」


そうして怜は、全力の一撃であり、最後の一撃である拳を白狼に放った。


『・・『エペグラス・アルム』』


しかし現実は残酷である。怜は拳を簡単に弾かれ、ガラ空きになった胴体を剣で斬られた。


「・・ぐはっ!」

『ふっ、所詮は人間だな』


体の傷から血を流しながら、怜は地面に倒れた。その姿を見下しながら、白狼は悪魔のような笑みを浮かべていた。


『なあ女?今どんな気分だ?』

「・・最悪、ですよ」

『だろうな。まあせいぜいあの世で村上慎也と仲良くしといてくれや』


そう言うと白狼は剣を振り上げた。それを見た怜は、降ろされる剣を待つように目をゆっくりと閉じた。











『・・・どういう生命力してんだ、あの野郎』

(?・・)


白狼の発言で、怜は目を開けた。すると白狼が振り上げた剣を下ろして、目線を慎也を呑み込んだ巨大な氷の棘の方に向けていることに気付き、怜も氷の棘の方を見た。


「!・・ふふ」

(すみません、勝手に殺してしまって。あとは頼みましたよ、"村上君")


そして怜は安心したように意識を手放した。


そんな怜の視界に最後に映ったのは、行手を阻む氷の棘をぶち壊し、『青き絆』の発動の影響で両目を青く染めた慎也の姿であった。




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