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世界渡りの少年  作者: 憧れる妄想
第一世界 第二章 一時的な平穏
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苦戦する敵も連携すれば良し




(結局あのエリシアさんだっけ?あの人の話の続きってなんなんだ。気になるところで終わりやがって)

「慎也、どした?具合でもわるいのか?」


慎也を心配し、ライルが声をかける。慎也は聖女改め、エリシアという女性と別れたあと、リアとライルと合流した慎也はギルドで臨時パーティーを組み、討伐クエストを受けた。そして現在、3人は討伐対象である魔物がいる、以前慎也が行ったゴブリンの森とは逆方向にある森へ向かっていた。


「いや、大丈夫だ」

「そうか。それにしてもお前が本当に1日でDランクになるとは思わなかったなぁ」

「こんな俺でも頑張ればなんとかなるんだよ。それより、今回受けるクエストってなんなんだ?」

「今回のクエストは"ソリッドインセクト"という魔物を5体討伐するというクエストです」

「なんだその・・そりっどいんせくと?って奴は?」

「簡単に言えば硬い虫です」

「硬い虫だな」

「硬い虫なのか」

「・・・」

「あれ?それだけ?」

「それだけですが」

「実を言うと俺たちもソリッドインセクトと戦うのは初めてで、それほど情報を持ってねえんだわ」

「じゃあなんでこのクエスト受けたんだよ」

「いやぁ慎也さんがいるから大丈夫かなっと思って」

(こいつら俺をなんだと思ってんだよ・・・・ん?)


3人で他愛もない話をしていると急に慎也が足を止める。


「どうかしましたか?」

「なぁ、俺たちの探してる魔物ってあいつらか?」


そう言いながら慎也はある茂みの奥を指さす。リアとライルは覗き込むように慎也が指をさした先を見る。

そこにはダンゴムシのような形状をした、小学生が背負っているランドセルほどの大きさの黄色い生物が3匹ほどいた。


「おそらくあの魔物ですね。ギルドの人に聞いたところ、体が黄色いって言ってましたし」

「ならさっさと討伐しようぜ」

「待てライル。あいつらまだ俺たちに気付いてないようだし魔法で奇襲を仕掛けよう」

「奇襲は賛成だが、なんで魔法?魔力の節約のためにここは剣で斬りかかろうぜ」

「いやあいつの体って硬いんだろ?なら剣より魔法の方があいつに効くだろ」

「たしかにそうですね。なら私が魔法を放ちます」

「おう、頼んだリア」


リアは音を立てないようにソリッドインセクトたちに近づく。そしてあと約5mというところで持っている杖をソリッドインセクトに突き出す。


「それでは行きます。『エレキテルショット』」


リアがそう唱えると杖にハマっている水晶が灰色から黄色に光だし、そこから目に見えるほどの電気が1匹のソリッドインセクト目掛けて放たれる。そして電気に当たったソリッドインセクトが体を震わせながら仰向けになる。すると残りの2体がここで初めて慎也たちの存在に気付く。


(あれは雷属性か?俺の世界の電気は結構強くないと目に見えないからあの電気はかなり強力なのか?やっぱり魔法って凄いわ)

「慎也。今ので残りの2体はこっちの存在に気付いたから隠れてる必要はねえぞ」

「そうだな。それじゃあさっさと片付けるか」


そういうと慎也は背負っているリュックを地面に置き、立ち上がりながら腰の鞘から剣を抜き、残りのソリッドインセクト目掛けて走り出す。ライルもそれに続いて鞘から剣を抜き、慎也について行く。


「慎也さん!あの魔物、見た感じ硬いのは表面だけみたいです!」

「了解!」


慎也は仰向けになっているソリッドインセクトの近くに来ると勢いよく剣を腹部に刺す。するとソリッドインセクトの体の震えが止まる。


「これで残りは2体か」


すると残った2体のソリッドインセクトが戦闘態勢に入ったのか、体を丸める。すると勢いよく体を回転させ慎也たちの周りを回りだす。


「なんだ?これがこいつらの戦い方か?」

「ライル、あまり油断すんなよ。やっていることは単純だが動きが速い。これじゃあまともに攻撃が当たらねえぞ」

「慎也さん!来ます!」

「っ!?」


転がっているソリッドインセクトのうち1匹が回転しながら慎也目掛けて思いっきり飛びかかる。慎也はリアの声掛けで間一髪、剣で弾き返すが、あまりの衝撃に慎也の手で震える。


(痛った!あいつどんだけ硬いんだよ)

「慎也大丈夫か!」

「ああなんとかな。それよりこいつらの体、予想以上に硬い。物理攻撃は効かないと思った方がいいぞ」

「なら魔法ですか」

「攻撃魔法ならリアに任せた方がいいな」

「一応俺も使えるぞ」

「え!?そうなのか!?」

「なんでそんなに驚いてんだよ!俺はそこら辺にいる脳筋野郎と一緒にされては困る。てかライルは使えないのか?」

「残念ながら俺は『ヒール』しか使えん」

「ならライルは出来るだけこいつらを引きつけてくれ。そして油断したところを俺かリアが魔法で仕留める。この作戦でいいか?」

「問題ない」

「私も大丈夫です」

「よし、行くぞ!」


慎也の号令と同時にライルが1匹のソリッドインセクトに向かって走り出し、剣を振り上げる。


「てめえの相手は俺だ!」


そう言うとライルは振り上げていた剣をソリッドインセクトに向かって振り下げる。しかしライルの攻撃をソリッドインセクトは転がりながら避け、そしてそのままUターンし、ライルに飛びかかる。


「させるか!『ファイヤーボール』!」


そこに慎也が火の玉放つ。するとソリッドインセクトは空中で身動きが取れず、その火の玉に当たる。魔法が当たり、落下地点がズレたソリッドインセクトはライルの側に落ちた。


「やったな慎也!これであといっ・・」

「いや、まだそいつ死んでないぞ」


慎也の指摘にライルは側にいる体が燃えているソリッドインセクトに目を向ける。するとそのソリッドインセクトが急に回転しだし、体を覆っていた火を掻き消し、再び慎也たちの周りを走り出す。


「嘘だろ」

(うん、さすがはDランクの魔物。この程度じゃやられねえか。だがほんとに困ったぞ。物理は効かない。『ファイヤーボール』程度の火だとすぐに消されちまう。あれ?これどうすれば倒せるの?さっきみたいにリアの魔法で動きを止めてから剣でトドメをさすのが確実だが、こんなに速いと簡単には当たらねえし。一体どうすれば・・)

「くっそー、これじゃあどう倒せっていうんだよ。あのスピードだとリアの魔法も当たらねえしなぁ。まぁさっきみたいに空中に浮かんでれば当たるかもしれねえが・・」

(空中?・・・・そうか!)

「リア!お前に聞きたいことがある!」

「何か思いついたんですか?」

「ああ。お前って風属性の魔法は使えるか?」

「はい。私、いざって時のために全属性のレベル1の魔法は全部使えるようにしていますので」

「そのいざって時が今だ!お前の風魔法でソリッドインセクトの体を空中に飛ばしてくれ!」

「でもあのスピードですよ?簡単には当たらないと思いますが・・」

「別に直接当てなくていい!あいつのすぐ近くの地面に当てて、体を浮かせろ。そうすれば俺が剣でさらに上に上げる。そしてそこでお前はさっきの雷属性の魔法を当てて奴の動きが止めればいい。そこをライルがトドメをさす、それで完了だ」

「なるほど」

「それを咄嗟に考えるとか慎也頭良すぎぃ!」

「褒めるのは後にしてくれ。よし、作戦開始だ!」


慎也が再びかけた号令にリアが片目を閉じ、狙いを定めて、魔法を発動する。


「行きます!『ウィングショット』!」


リアそう唱えると杖の水晶が緑色に光だし、周りの空気が水晶の上に玉を作るように集まり、緑色の玉ができる。そしてリアはその玉をソリッドインセクト目掛けて放つ。するとその玉がソリッドインセクトの目の前の地面に当たった瞬間破裂する。ソリッドインセクトの体は硬さの割に、そこまで重くなかったらしく、レベル1の魔法でも3mほど上に飛ぶ。


「慎也さん今です!」

「おう!任せろ!」


慎也は全速力で走り出し、空中に浮いたソリッドインセクトの下に来ると力一杯剣を振り、ソリッドインセクトをさらに上空に打ち上げる。


「リア!」

「はい!『エレキテルショット』!」


リアの杖の水晶が黄色に光だし、そこから雷が上空から降下してきているソリッドインセクト目掛けて放たれる。その雷は見事ソリッドインセクトに当たり、体を震わせながらソリッドインセクトは地面に勢いよく激突する。


「あとは俺がこいつを刺せばいいんだな?」


そう言うとライルは地面に転がっているソリッドインセクトを仰向けし、剣を腹部に突き刺す。


「これで今度こそあと1体だな」

(これなら楽勝だな)


しかし慎也がそう思ったのもつかの間、慎也の背中に激痛がはしる。


「ぐはっ!?」

「慎也!」

「慎也さん!」


残ったソリッドインセクトが慎也の背中に突進したらしく、背中を急に攻撃された慎也はその場に倒れる。

するとソリッドインセクトが追い打ちをかけるように慎也に飛びかかる。


「させるか!」


間一髪のところでライルが剣でソリッドインセクトを弾き返す。そして倒れた慎也の側にリアが駆け寄る。


「慎也さん大丈夫ですか?」

「ああ一応」

「ちょっと背中を見せてください・・・・・結構腫れてますね。『ヒール』をかけるのでじっとしといてください」

「いや、回復は後にしよう。あいつを倒さないと安全に回復できねえからな。それにちょっと痛むくらいだから俺のことは気にしなくて大丈夫だ」

「・・・・わかりました。まずはあいつを倒しましょう」


そう言うとリアが立ち上がり、慎也も続いて立ち上がる。


「リア、さっきと同じ作戦であいつ倒すから魔法の準備をしといてくれ」

「わかりました」

「よし。ライル!さっきと同じようにリアの魔法で奴を空中に浮かせるから戻ってこい!」

「わかった!今行く!」


慎也の声掛けにライルが慎也たちの側へ駆け寄る。するとそれを追うようにソリッドインセクトが慎也たち目掛けて転がる。すると慎也の横から緑色の玉が通り過ぎ、ソリッドインセクトの目の前の地面に当たり、破裂すると同時にソリッドインセクトの体が宙に浮く。そこに慎也が先程と同じように剣でソリッドインセクトの体をさらに上空に打ち上げる。


「これで最後!『エレキテルショット』!」


リア杖から雷が放たれ、空中を降下しているソリッドインセクトに命中する。そして魔法が命中したソリッドインセクトは体を震わせながら地面に落下する。そこにライルが歩み寄り、剣を下向きに持つ。


「これで終わりだ」


ライルはそう言うながらソリッドインセクトの腹部に剣を突き刺した。








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