席替え
言うの忘れてましたが、この章は6割日常です。
「おはよう慎也」
「おは〜」
翌日。出席停止前までのように登校した慎也は席について亮太と雑談を始める。
「戻ってきたなぁ」
「何がだよ」
「いや〜1ヶ月ぶりに慎也と教室で挨拶交わしたから、日常が戻ってきたなぁって」
「なるほどな。まあたしかに、昨日は停止明け初日で特別感あったからな」
「だろ?だから今日からまたいつも通りの日常ですよっと」
(そうだよやっと普通の生活だよ。てかもうずっとこのままでいいよ)
いつもの日常を噛みしめる慎也。するとそこに怜もやって来る。
「おはようございます2人とも」
「お!おはよう鈴川」
「はよ〜」
「・・戻ってきましたねぇ」
「お前もかい」
「そんなこと2人とも。今日は席替えですよ」
「あーそうだったな」
(いや知らねー!俺のいない間に決まったのか)
「俺もとうとう亮太離れする時がきたのか」
「親離れみたいに言わないでください」
「慎也が巣立ってくれて俺も嬉しいよ」
「はぁ・・」
「はーい席につけお前ら〜」
教室に入ってきた平島の号令でガヤガヤ騒がしかった教室も静まり皆席についた。
「それじゃあ日直よろし・・」
ガラッ!
「はぁ・・はぁ・・よしセーフ!」
平島がHRを始めようとしたところで花乃が息を切らせて教室に駆け込んできた。
「・・まあセーフでいいか」
「よーし!」
「よしじゃねえ。セーフつってもギリだからな」
「は〜い!次から気をつけま〜す!」
そう言うと花乃は慎也に軽く手を振ってから自分の席についた。
「じゃあ日直ー」
「起立!」
↓↓↓↓数分後↓↓↓↓
「・・こんなもんか。それじゃ日直号れ・・」
「先生席替えはー?」
「あーそうだったな。黒板に貼っとくからこれ終わったら見て移動してくれ。んじゃ今度こそ日直」
「気をつけ!礼!」
『ありがとうございました』
「じゃあうるさくしないようにな」
そう言うと平島は教室を出て行った。その瞬間クラスのほぼ全員が黒板に集まって行った。
「・・なん、だと?」
「席どうだった慎也?」
「絶望だよ」
慎也の席は1番前の真ん中、つまり教卓の目の前であった。それだけでも慎也にとっては最悪であったが、それにプラスで・・
「私の隣でよかったですね村上君」
「何がよかったなのかわからん」
真面目人間の怜が隣になったことで、いつもの慎也のぐうたらが許されなくなってしまい、慎也は膝から崩れ落ちた。
「くそ!これからは真面目に授業を受けないといけないっていうのか!」
「いや当たり前だろ。むしろ今までがおかしかったんだよ」
「森塚君の言う通りです。それにもうすぐ期末テストなんですから、しっかり勉強しないといけませんよ」
「いやだぁ!勉強したくないよぉ!」
「駄々こねないの村上」
3人のところに花乃がやってきて呆れ顔で慎也を見る。
「ちなみに伊村さんはどこなんですか?」
「私もあんたと同じで村上の隣よ」
「え?伊村も隣なの?」
(うわガチやん。側から見たら羨ましい席だけど、俺からしたら授業寝過ごさない最悪の席だな)
「そういや亮太はどこなんだ?」
「窓際の1番後ろだな」
「交換しろ」
「断る」
「なんでだよ!鈴川と伊村っていう美女と美少女が両隣にいる最高の席だろ!」
「最高の席なら尚更交換しなくていいだろ」
「くっ!初めてお前を憎いと思ったわ」
「まあせいぜい授業を真面目に受けるがいいさ」
「くそぉ〜」
「ねえ村上?私ってどっち?」
「え?何が?」
「美女か美少女か!今あんたが言ったでしょ」
「あー、お前は美少女だな」
「ふ〜ん、そうなんだ。ふ〜ん・・」
「てことは私は美女ですか。そうですか・・」
(なんだこいつら。まあいいや、決まったことを嘆いても仕方ねえし、さっさと荷物移動しよ)
何故かほんのり頬を赤らめてる花乃と無表情で下を見てる怜を置いて慎也は荷物を取りに行った。
「・・はぁ」
新たな席についてため息をつく慎也。
「ため息をつくなんて失礼じゃありませんか?」
「つきたくもなるわ。はぁ〜帰りたい」
「まだ1時間も授業してないんだけど」
「むしろ授業しなくていいだろ」
「そんなの無理に決まってるじゃないですか」
(今ここで魔法ぶっ放したら中止になんねえかな)
「洒落にならないこと考えないでください」
「心を読むな、そして冗談だ」
「はーい席つけー!」
席替えイベントで騒がしかった教室は教師の入室によって静まる。
「それじゃあ日直ご・・」
ガラッ
「すみません遅れました」
授業開始の号令をしようとした時、謝罪しながら篠宮が入ってきた。
「篠宮が遅刻なんて珍しいな」
「昨日少し寝るのが遅くなってしまいまして」
「そうか、次から気をつけろよ。なんか席替えしてるみたいだから確認を・・」
「篠宮君はこっちだよ〜!」
「・・だそうだ」
「わかった、ありがとう!」
教えてくれた女子にいつもの笑顔を向けて、篠宮は自分の席に向かった。
「村上君」
「ん?」
「篠宮君の右手の指見てください」
「指?」
怜に言われて慎也は目を凝らして篠宮の手を見る。篠宮の右手の指には、小さな黒い宝石がついた指輪がはめられていた。
「指輪だな。あれがどうした?」
「今まで指輪なんてしてましたっけ?」
「まあしてなかったと思うが、イメチェンかなんかじゃねえの?」
「・・だといいんですが」
そう言って怜は視線を前に戻した。
「・・・」
2人がコソコソと話している様子を見て眉にしわを寄せる篠宮。その瞬間篠宮のつけている指輪の黒い宝石が一瞬光ったのであった。