王の邂逅
・・・篠宮視点・・・
コンコン
『お坊ちゃま、食事の準備が・・』
「いらん。食欲が湧かない」
『ですが・・』
「部屋の前にでも置いといてくれ。腹が減ったら食う」
『・・承知いたしました』
そう言うと扉の外から物を置く音がし、その後に人が立ち去る音がした。
「・・チッ、くそ!」
ある豪邸の一室。慎也のクラスメイトである篠宮賢斗はベットの上に寝っ転がり、悔しそうに歯を食いしばりながら拳を壁にぶつける。
(なんで村上に怜さんが奪われなきゃいけないんだ!本来あそこにいるべきなのは村上じゃなくて僕であるべきなのに、あんな楽しそうに登校しやがって!)
さきほどまで篠宮はいつも通り登校していたが、仲良く4人で登校していた慎也たちを見て戻ってきたようだ。
(・・あいつが転校してきてから全てが変わった。本来僕が手に入れるはずだった怜さんも、僕のものだった花乃さんも奪いやがって。僕は篠宮家を継ぐ男だぞ!あんなクソ野郎さえ転校して来なければ!)
篠宮は怒りのあまり壁に何度も拳を打ちつける。
「・・チッ」
(あーくそイライラする。飯でも食って落ち着くか)
そう思い篠宮は立ち上がると、扉を開けて先程置かれた食事を部屋の中に持っていこうとした。
「・・・あ?」
しかし食事は見当たらなかった。廊下に出て扉付近を探す篠宮だったが、やはりあるはずの食事は無く、篠宮は頭を掻いてイライラを募らせる。
「あいつ置いてねぇじゃねえか」
(でもたしかにさっき置いた音はしたしな。まさか盗まれた?いやないな。部外者が敷地に入った時点で警報が鳴るくらい警備は厳重だ。ならなおさらなんで・・)
不思議に思いながら篠宮は一度自室に戻ろうとUターンする。そして扉を開けたところで、"篠宮の体が固まった"。
『んー・・金持ちのご飯だから少し期待したんだけど、そこら辺の飲食店と大して変わらないわね。あんた食べる?』
『・・いらん』
『そ、なら私が全部貰うわね』
(なんだこいつら!?いつの間に俺の部屋に!?)
なんと部屋の中には、先程間違いなくいなかった"黒いローブを身に纏った白髪の女性"と、大型犬くらいの大きさの"白色の狼"がくつろいでいた。
「お、お前ら誰だよ!?いつからここに・・!?」
『・・っと。こんにちは、篠宮賢斗君?』
『お前の君付け気持ち悪いな』
『黙ってなさい』
「いいから答えろ!お前らは何者で、いつからここにいた!」
『何者か?そうね、強いて言うなら・・』
そして白髪の女性はこう言った。
『村上慎也の敵であり、あなたの味方よ』
「!」
その言葉を聞いた篠宮の口角は、無意識に吊り上がっていた。
「村上の出席停止解除を祝って、かんぱーい!」
『かんぱーい!』
とある某飲食店にて、慎也、亮太、怜、花乃、原田、岸井、瀬屈の7人は、慎也の登校解禁を祝して集まっていた。
※大人数のためここからは誰のセリフかわかるようにかっこの前に頭文字入れます。
慎「あ〜!」
慎(やっぱ飲み物はカルピスに限るなぁ)
怜「こうして大人数で集まるのも、球技大会の打ち上
げ以来ですね」
慎「え、その話俺知らないんだけど?」
怜「あれ?たしか私森塚に頼んだはずよ」
慎「あれ?亮太ー?」
亮「い、いやな?誘おうとは思ったんだけど、慎也が
なんかめっちゃ帰りたそうにしてたから気を利か
せてな?」
慎「な?じゃねえんだよ。あの大会のMVPである俺
に一声かけないとはどういうことだ」
怜「MVPといってもあなたが活躍したの最後だけで
しょう」
慎「うるせ、結果が良ければそれで良いんだよ」
亮「痛いところつかれて逃げたな」
花「で、森塚?ほんとのところなんで村上誘わなかっ
たの?」
亮「・・シンプルに忘れてた」
慎「おい忘れんな」
原「球技大会といえば、森塚がいじめられてたみたい
だけど、犯人って誰だったの?」
慎「あれか。ま・・」
慎(・・いや、やめとくか)
慎「秘密だ」
岸「え!?超気になるじゃん!」
瀬「教えてよ〜!」
花「まあ村上なりになんか考えてんでしょ」
怜「話は変わりますが皆さん、テスト勉強はしてます
か?」
良くも悪くもあった球技大会の思い出話から、怜によって話題が切り替わる。
原「いやなこと思い出させるわね〜」
岸「やばー!勉強しないと!」
亮「俺は推薦狙いだからいいや」
瀬「推薦いいなぁ」
花「次こそ一位取るために私はもう始めてるわよ」
原「あんた篠宮君関係なしに鈴川に勝とうとしてるの
ね」
花「あったりまえよ!小学生までは何かも1番だった
私が、ぽっと出の鈴川に負けて黙ってるわけない
でしょ!」
怜「まあ勝負というなら、受けて立ちましょう」
花「覚悟しなさいよ鈴川!」
慎「・・なあお前ら」
亮「どった慎也?」
慎「テストってなんのこと?」
岸「なにって・・」
瀬「再来週の"期末テスト"のことよ」
慎「・・・え?」
怜「・・まさか、知らなかったんですか?」
慎「初耳です」
花「は!?」
原「ちょっとあんたどうすんのよ!」
慎「どうするっつってもなぁ・・」
亮「慎也お前、1ヶ月分の授業見ても聞いてねえのに
大丈夫なのかよ?」
慎「大丈夫なわけないだろ〜」
怜「・・次開くのは勉強会ですかね」
慎「ど〜しよ〜!」
祝いの会は絶望の会に変わり、慎也は迫り来る期末テストに頭を抱えるのであった。