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世界渡りの少年  作者: 憧れる妄想
第二世界 第五章 堕ちた王と氷狼
180/211

傷つけた者たちの謝罪




(・・どっちだ?)

「村上君早くしてください」

「まあ待て。ちゃんと選ばせろ」


そう言って慎也は顎に手を当てて、目線を左右に交互に動かしている。


「・・よし、こっちだ!」


意を決して慎也は右へ手を伸ばし、その手で怜の手からカードを引いた。


「・・残念でした」

「マジかぁ!?」


その引いたカードには、JOKERと書かれていた。


「ちょっと2人ともまだー?」

「この光景3回目なんだが」

「そう急かすなってお前ら」


花乃と亮太のブーイングを流して、慎也は2枚のカードを体の後ろで混ぜて怜の前に差し出した。


「さあどっちかわか・・」

「こっちですね」


慎也が問う前に怜は即決してカードを引く。そしてそのカードにはJOKERではなく数字が書かれており、それを見た怜は慎也にドヤ顔を向けながら自身のカードと共にそのカードを床のカードの山に落とした。


「うざ」

「また最下位ですね村上君」

「村上よ〜わ〜い〜!」

「うるせえ」


あの慎也の断罪ショーが終わり、その罰として出席停止を受けて暇していた慎也だったが、そんな慎也のことを想って遊びに来ている3人との娯楽遊びであっという間に日にちは過ぎていき、今では出席停止の日数もあとわずかとなっていた。


「それにしても、もう慎也の家が俺らのたまり場みたいになってるな」

「そりゃ週4で来てたらそうなるわ」

「明後日も来る予定ですから、週5に更新ですね」

「はぁ?お前らそんなに来て親になんか言われないの?」

「村上君に家に行くと言ったら許されました」

「友達の家って言ったら許してくれたわよ」

「俺の親は基本放任主義だからな。問題さえ起こさなければ大体許されるぞ」

(え、親ってこんなもんなの?)

「そういえば村上の親はどうしてんの?」

「ぎくっ」

「あ、そういえば何回も来てんのに1回も鉢合わせないよな」

「それは・・」

(助けて鈴川!)


事情を知ってる怜に視線を送って助けを求める慎也。しかし怜は首を横に振った。


(見捨てやがったなこの野郎)

「親は・・・海外で仕事しててな、家にいるのは年に数回程度なんだよ」

「へぇ〜」

「お前寂しくねえのかよ」

「いや全然。ちゃんとお土産は買ってきてくれるし、帰ってくるたびに数ヶ月分の生活費と小遣いは貰えるから苦労はない。むしろ家で好き勝手できるから楽だね」

「村上君らしいですね」

「まあ慎也がそう言うならいいか」

「・・あ、そろそろ帰らないと」


時計を見てそう言った花乃は立ち上がり、自分の荷物を持って玄関に行く。それに続いて亮太と怜も玄関へと向かった。


「じゃ、俺らは帰るわ」

「おう。気をつけろよ」

「鈴川がいるから大丈夫でしょ」

「私を護衛か何かと勘違いしてませんか?」

「でもいざって時は?」

「・・まあその時はその時です」

「そこは守るって言いなさいよ」

「いいから早く帰れ。親心配するぞ」

「そうですね。では」


そうして3人は帰って行った。それを見送った慎也はリビングへと戻り、ソファに寝っ転がりため息を漏らす。


「はぁ・・」

(疲れたわー。なんであんなに騒げるのかねあいつらは)

「・・片付けは明日でいいか」


3人の来訪によって散らかったリビングを放置して慎也は眠った。そしてそんな日々が続き・・









数日後


(あ〜行きたくねえ〜)


出席停止の期間も終わり、久しぶりの登校日。慎也は身支度を整えて玄関の扉を開ける。すると外では怜、花乃、亮太の3人が待っていた。


「お、ちゃんと出てきた」

「まあ昨日メールであんなに脅されたらさすがに出るわ」

(なんだよ学校来なかったら恥ずかしい写真ばら撒くって。いつ撮ったんだよ。しかもさりげなく出る時間も指定されたし)

「それじゃあ行きましょうか」

「急がないと置いてくわよー」

(むしろ置いてってくれ)

「ほら行くぞ慎也」

「いやだー!」


亮太に引きずられながら、慎也は学校へと向かった。


↓↓↓↓移動中↓↓↓↓


登校中は特に何事もなく、慎也たちは昇降口で靴を履き替えて教室へと向かう。


(・・めっちゃ見られてる)

「どうかしました?」

「いや、なんかめっちゃ見られてるなと思って」

「そりゃあんだけのことやったんだから当然だろ」

(その記憶ないんですけどね)


至るところところから恐怖の視線を浴びる慎也。すると階段を登り終えたところで平島に鉢合わせした。


「あ、先生」

「4人ともおは・・」

「すみませんでした!!!」


平島が視界に入った瞬間、慎也は光の速さで土下座する。慎也は記憶が無かったので3人から話を聞き、自分が平島にしたことをわかっていたのだ。


「ちょw慎也必死すぎw」

「はぁ・・顔上げろ村上」

「先生・・」

「お前のやったことに俺は感謝してるんだ」

「え?」

「本来原田たちに罰を与えないといけなかったのは俺たち教師なんだ。そこをお前が、やり方はあれだったけど、俺たちの代わりにやってくれた。その影響か、あれから3人は良い方に変わってくれたからな」

「変わった?」

「原田たちね、一応あんたと同じく出席停止になったのよ。そんで停止明けの最初の登校日に私に謝ってきたのよ。あ、もちろん許したわよ」

「あの時はびっくりしたよな?」

「ええ。それから3人は今までの面影が無く、別人のように過ごしていますよ」

「そうだったのか」

「まあそういうこった。だからお前がそんな気にすることはねえよ」


そう言うと平島は慎也を立たせた。


「あ!平島先生ちょっといいですか!」

「あ、呼ばれちゃったから俺はこれで」


他の先生に呼ばれて平島はその先生と共にその場を離れて行った。


「・・さ、教室行こうぜ!」

「私もう立ち疲れたー」

「そうですね、早く行きましょう」

(こいつら切り替えはや)


慎也が3人の切り替えの速さに驚きながら、4人は教室へと向かう。そして教室につき、扉を開けると教室は静まり返った。


(なんで俺が入ったら静かになんのかね?新手のいじめか?)

「むしろ正常な反応でしょう」

「心読むなや」


自分に集まる視線を無視して慎也は自分の席に座る。するとある人物たちが慎也の机へとやってきた。


「・・村上」

「3人揃ってどうした?」

(原田さん御一行じゃねえか)


慎也の元にやってきたのは、なんと原田と瀬屈、そして岸井の3人であった。3人の来訪に慎也が驚いていると、突然3人は頭を下げた。


「なんだよ急に」

「私たちはあんたの友達を傷つけたからさ。ごめんなさい」

「ごめん村上」

「もう一生こんなことはしない」

(・・こいつら変わりすぎだろ)

「いや俺には謝んなくていいよ。傷ついたのは伊村だし、その伊村はお前らを許したんだろ?」

「伊村から聞いたのね」

「ああ。だから俺に謝る必要はない」

「でも・・」

「というかむしろ、謝るのは俺の方だ」

「「「え?」」」

「お前らが伊村をいじめたからって、あれはさすがにやり過ぎだった。だから俺の方こそ、悪かった」


そう言って慎也も3人に頭を下げた。そんな慎也を見て3人は目を見開いて驚いた。


「ちょ、ちょっと村上!?」

「頭あげなさいよ!」

「悪いのは私たちなのに・・」

「素直に受け取ったらどうなの?」


戸惑っている3人に、なんと伊村がそう言ってきた。


「今回の件は客観的に見て、私をいじめたあんたたちも悪い、そしてそんなあんたたちにやり過ぎた罰を与えた村上も悪い。だからおあいこってことでいいじゃない」

「・・そうね」

「私は村上を許すよ」

「私も!」

「私も許す。村上はどうなの?」

「・・許さない理由がない」

「そこは素直に許すって言いなさいよ!」

「小っ恥ずかしくて言えねえよ」

「はい!じゃあこれでこの話は終わり!」

(なんか伊村に世話になってばっかだな)

「それはそうとあんたたち?今日村上の出席停止解除を祝って放課後に集まんだけど、来る?」

「え!?」

「い、いいの?」

「でも私たちはあんたらを・・」

「何言ってんの?和解したんだし、もう私たち友達じゃん?」

「「「!?」」」

「で?来んの来ないの?」

「・・そっか友達か。わかった、私は行く」

「私も私も!」

「私も行きたーい!」

「じゃあ3人追加ね」

(こいつほんとすごいなぁ・・・ん?)

「ちょっと待て伊村。その放課後の話聞いてな・・」

「あ?なんか言った?」

「・・何も言ってません」


会話を終えた(?)5人。するとタイミングよくHRを知らせるチャイムが鳴った。


「はーいお前ら席つけー!」

「じゃ、また後でー」


平島が入ってきたことにより、クラスの人たちは自身の席に座って行った。


(・・なんかもう、伊村と鈴川に逆らえなくなっちゃったな)


そう考えながら慎也は机に突っ伏して目を閉じた。









HRにて。


「それじゃあ出席確認を・・・あれ、まだ"篠宮来てない"のか」




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