騒動の終結
「・・ん」
「起きたみたいですね」
「おはよー村上」
「いい夢見れたか?」
(・・"なんでこいつらがいるんだ"?)
あの地獄が終わり数分が経った頃に慎也は目を覚ました。そして目覚めて最初に視界に入ってきた3人に、なぜか慎也は疑問を抱いた。
「さて、村上〜?これあんたどう責任取るの〜?」
そうニヤニヤしながら言う花乃。それを聞いた慎也は頭に?を浮かべながら体を起こし、荒れた教室を見渡した。
「お前、伊村のためとはいえ派手やったよな」
「臭いが少し気になったので嘔吐物は片付けましたが、それでもひどいものですよ」
「3人の血とか飛び散ってるからね」
「・・・」
「それにしても、ここまでやばいのだと罰ってどうなんだろうな」
「さあ?一応私フォローしようとは思ってるけど、結構えぐいんじゃない?」
「まあそれはお楽しみということで・・」
「・・なあお前ら」
「どしたの?」
「もしかして俺たちに罪を被ってほしいとか?w」
「悪いですが、自分の罪は自分で・・」
「"これどういう状況?"」
「「「・・・は?」」」
慎也の突然の発言に、3人は「コイツマジか」という目で慎也を見た。
「・・つまり村上君は、"昨夜寝てから今目覚めたところまでの記憶がない"と」
「ああ。だからここで何があったのかわかんねえだよな」
そう言って頭を掻く慎也。しかし慎也の話を聞いた3人はため息を吐いて慎也にジト目を向ける。
「嘘くさー」
「嘘じゃねえ」
「でも慎也。お前暴れてる間普通に喋ってたじゃねえか」
「そうなのか?でもたしかに言われてみればなんか俺が暴れたような暴れてないような・・」
「いや暴れたんだよ」
「なんか都合良すぎて嘘としか思えませんね」
「信じてくれよ〜!」
「まあどっちにしろ、村上が暴れたってのには変わらないんだしいいんじゃない?」
「それもそうですね」
(はぁ、俺はいったい罰は受けんのかねぇ)
「・・それはそうと慎也」
「ん?」
「記憶がないってことは、何があったのか知らないってことだろ?」
「当たり前だろ」
「じゃあ罪意識をもってもらうために見てもらいますか」
そう言うと亮太は自分の席に行き、なんとカメラを持って戻ってきた。
「カメラ?」
「あんた写真なんて撮る奴だっけ?」
「いや、部活で自分の動きを撮って今後に活かそうと思って持ってきたんだよ」
「ふ〜ん、真面目だな」
「そんでまあ、何かのあれになると思って念の為に慎也の犯行を撮っておいたんだよ」
「お前俺の味方じゃねえのかよ」
「・・おっしちゃんと撮れてるな」
「無視すんな」
「じゃあ再生す・・」
「ちょっと待って」
亮太が再生ボタンを押そうとした瞬間、花乃がその手を掴み止める。
「なんだよ?」
「それってさ、私のあの行動も映ってる?」
「ああもちろん。なんなら慎也が起きたところまで撮れてる」
「・・それ消してくんない?」
「なんで?」
「いや、その、えっと・・」
(もじもじすんな可愛いかよ)
「自分の行動を振り返ってみると、ちょっと恥ずかしいというか、大胆だったというか・・とにかく!お願い消して!」
「ふ〜ん・・・いやだ!」
そう言って亮太はダッシュで廊下へと逃げた。
「あ、ちょ!待ちなさーい!」
逃走した亮太を追いかけて花乃もダッシュで教室を出て行った。
「・・行ってしまいましたね」
「だな」
その場には慎也と怜が残った。すると怜は慎也の隣に座り、慎也に話しかけた。
「ほんとに記憶がないのですか?」
「ああ、残念ながら」
「ということは私にやったことも忘れてると」
「え、お前になんかやったの俺?」
「ええ。ほらこれ」
そう言うと怜は上着をめくって自身の腹部を慎也に見せる。そこは先程慎也に殴られたせいか、微かに青くなっていた。
「お前それ・・!」
「痛みは引きましたが、形として残ってしまってますね」
「・・悪い」
「まあこれからゆっくりと償っていただければいいですよ」
(もう俺一生こいつに逆らえないんだけど)
「・・村上君」
「ん?」
突然真剣な面持ちで慎也に話しかける怜。そしてこんな質問を慎也に投げかけた。
「あなたは、自分が敵の力を使えるとしたらどうしますか?」
「・・は?」
「いいから答えてください」
「・・その力を利用して、仲間を守る」
「暴走してあなたが仲間を傷つけるとしても?」
「それは・・」
「・・まあ今はいいですよ」
「じゃあなんで質問したんだよ」
「いつかあなたはその力によって"決断しないといけない時が来る"、そんな気がしたからです。頭の片隅にでも置いといてください」
そう言うと怜は慎也の肩にもたれて目を閉じた。
「お、おい」
「最初の償いです。疲れたので私の枕になってください」
「は?ちょお前・・」
「・・すぅ・すぅ・」
(寝るの早!?どんだけ疲れてたんだよ)
目を閉じてすぐに寝息を立て始めた怜を見て、ため息をつく慎也。
(こいつやっぱ寝顔も可愛いな。見えるようにしよ)
怜の頭を肩から膝に移す慎也。その最中、怜の先程の言葉を思い返す。
「『決断しないといけない時が来る』、か。そんなの来て欲しくないけどな」
そう呟く慎也であった。
そしてそれから何事もなく、数日が経った。
(・・暇だ)
今回の騒動で慎也はもちろん罰を受けたのだが、騒動の大元が花乃へのいじめであり、それを行った原田と岸井、そして瀬屈が被害が受けたこと、そしてそのいじめを止められなかった学校側にも非があるとされ、1ヶ月の停学で済んだ。
(ゲームはある程度やることやったし、他にもやることないしどうしよ〜!)
そして慎也は現在、家でソファに寝っ転がりながらダラダラしていた。
(時間は・・・まだ17時か。早めのお風呂に入るかぁ)
慎也はダルそうに立ち上がり、着替えを取りに行こうと階段に向かった・・・と、その時だった。
ピンポーン!
(誰だよこんな時間に?宅配は頼んでねえぞ)
ピンポンピンポンピンポンピンポン!!!
「はいはい!今行きますよ!」
疑問に思いながらも、慎也は玄関に向かい扉を開けた。
「やっほー村か・・!」
バタン!ガチャ
(・・気のせいか)
慎也は頭を掻きながら再度階段に向かおうとする。
ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポ
「あーわかったわかったわかった!!」
怒涛のピンポンラッシュに負けた慎也は諦めて扉を開けて客を招いた。
「ちょっと村上!なんで閉めるのよ!」
「今のはちょっと引いたぞ慎也」
「まあ村上君だからと言われれば納得ですが」
「・・いやお前らさ、なんで俺の家知ってんの?」
「「「平島先生から聞いた(聞きました)」」」
(先生この野郎ーー!!!)
平島に恨みの叫びを心の中でする慎也。そんな慎也にお構い無しに3人は靴を脱いでずかずかと家の中に入って行った。
「あんた普通に良い家住んでるのねー」
「俺マンションだから羨ましいわ」
「お前ら少しは遠慮を・・」
「まあいいじゃないですか。あなたのことですから、ちょうど暇してたところでしょう?」
「・・よくお分かりで」
「俺らがその暇を潰してやるよ!」
「ということで、じゃーん!人生ゲーム!ボッコボコにしてやるからね!」
「勝負事となれば、手加減はしませんよ」
「お前も乗り気かよ」
「じゃあちゃっちゃと準備しちゃいましょ!」
そう言って花乃は断りもなくリビングへの扉を開けて入って行った。そして花乃に続いて亮太と怜もリビングへと入っていった。
「はぁ・・」
(・・まあ、あの騒動で迷惑かけたみたいだし許すか)
そう思って慎也も3人の待つリビングに入った。
これにて『正義の憎しみ』は終わりです!次章は早めに出す予定なのでお楽しみに!