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世界渡りの少年  作者: 憧れる妄想
第二世界 第四章 正義の憎しみ
176/211

断罪




・・・怜視点・・・


(・・・)


明らかに様子が変な慎也に、無意識に警戒する怜は竹刀へと手を伸ばす。


「・・全員いるな」


そう慎也は呟くと教卓へと歩き、平島に話しかける。


「先生、少し時間いただきますね」

「あ、ああいいが。どうしたんだ村上?」


さすがの平島でも慎也の様子に気づいたのか、少し動揺していた。しかしそんな平島を無視して慎也は淡々と話した。


「今からくそ野郎の断罪を行うだけですよ」

(断罪?)

「それじゃあまあ、とりあえず全員机と椅子を後ろに下げてくんね?」


そう慎也は言うが、当然誰も言うことを聞かない。怜と亮太に関しては、いつもと違う慎也の雰囲気に困惑していて動けないでいた。


「・・仕方ない。こういう時はやっぱ、実力行使だよな」


そう呟いて慎也は拳を作ってそこに魔力を込めると、その拳を振りかぶり、黒板へと勢いよく振った・・


「言う通りにするからやめて!」


するとその瞬間そんな声が教室に響く。その声に、慎也は振った腕を寸でのところで止める。そして皆の視線がその声の方に向けられた。


(あなたは・・!)

「・・いい判断だ、牧本」


声を上げたのは、一時期森塚をいじめていた牧本であった。


「み、みんな!早く彼の言う通りにして!」

「ま、牧本さん?どうしたんだい急に?」

「篠宮君!みんなに机と椅子を下げるよう言って!じゃないとみんなが・・!」

「・・牧本?」

「ひぃぃぃ!ご、ごめんなさい!」

(・・あの様子だと牧本さんは味方というより、村上君に怯えて従っているようですね。それにさっき実力行使とか言ってましたし、素直に言う通りにするのが吉ですね)

「皆さん、ここは言う通りにしましょう」

「す、鈴川ぁ・・!」

(そんな目をキラキラさせて見ないでください牧本さん)

「まあ怜さんがそう言うなら・・」

「篠宮君がやるなら私も」

「私も下げよっと」

(・・なるほど、これが狙いでしたか)


慎也の思惑は怜→篠宮→女子たちという流れで言うことを聞かせようというものだった。そして女子たちが動けば、数の圧力で男子たちも自然と動く。慎也の思惑通り皆は机と椅子を教室の後ろに下げた。


「・・オッケーだな」

「おい村上。こんなことさせて何を・・」

「言ったでしょ先生、断罪ですよ」

「・・断罪ってまさか」









       「原田!岸井!瀬屈!前に出ろ!」


慎也がこの3人を呼んだ理由がわかってるのは呼ばれた3人と平島だけである。それゆえ他の者は不思議に思っていた。


「なぜ彼女たちが・・」

「彼女たちが犯人だからなんじゃないかな」


怜が呟いた疑問にいつのまにか近くにいた篠宮が答える。篠宮自身、確証は持っていないが、慎也の雰囲気と昨日のやり取りでなんとなく理解したのだろう。


「あなたは知っていたんですか?」

「いや確証はないよ。でも村上君のあの様子を見ればわかるでしょ」

「早く前に出てこい!」

「・・ふ」


慎也に呼ばれた3人は口角を上げて余裕の笑みを浮かべて慎也の前に出てくる。


「な〜に村上〜?」

「私たちあんたに何かしたっけ?」

「俺は何もされてねえな」

「でしょ〜?」


3人は未だヘラヘラと笑っている。すると原田は慎也の肩に手を置いて耳打ちする。


「今更何のつもりか知らないけど、あんたが私たちをここで告発しても誰も信じないからね?」


そう言い原田は慎也を嘲笑うようにニヤリと笑みを浮かべた。しかし慎也はその言葉に眉ひとつ動かさず、こう言った。


「お前らが伊村をいじめた犯人で、俺はそれを知っている。今はそれだけで充分だ」

「は?」


そして・・


ボゴッ!

「・・え?」


慎也は原田の腹部を容赦なく殴った。それを受けた原田は腹部を押さえながら後ずさり・・









「ヴォェェェェェ!!」


その場にうずくまり嘔吐した。そんな原田を見て後ろにいる岸井と瀬屈は顔を青ざめながら慎也を見る。そして周りで見ているクラスメイト、怜までもが絶句していた。


「む、村上!?あんた・・」

「次はお前らだ」

「ひっ!」

「や、やめ・・」


時すでに遅し、慎也は足払いで2人を浮かせて顔を掴み床に死なないように、そして気絶しない程度に叩きつけた。


「痛い痛い痛い痛い!」

「痛い、痛いよ・・!」

「うるせえ騒ぐな」


後頭部を押さえてじたばたする2人の足を、痣ができるほどの力で掴む慎也。この時点で岸井と瀬屈は痛みによって涙を流していた。そして慎也はそのまま2人を引きずり回そうとしたのだが・・


「いや!いやぁぁぁぁぁ!!」


そんな悲鳴を上げながら原田は逃げようと扉へ走った。その様子を慎也は無表情のまま見ていた。そして原田は取手に手をかけて扉を開けようとした。


「っ!?な、なんで開かないの!?」


しかし扉はびくともしなかった。


「もうこの教室の扉はしばらく開かねえよ。少し細工をさせてもらった」

「細工って何を・・」

(!あれは!)


よく見るとなんと扉の下の方が氷に覆われていたのだ。


「な、なんで凍って・・」

(村上君の魔法ですか。皆が机と椅子を下げている間に打ったんですね)

「さて、逃げようとした罰も上乗せしないとな」

「ちょ、ちょっと男子!黙って見てないで助けなさいよ!」


そう男子たちに呼びかける原田。そして慎也の行動に絶句していた男子たちも我に返ったのか、慎也を止めようと駆け寄る。


「お、おい村上!その辺で・・」

「・・邪魔すんなてめえら。てめえらもああなりてえのか?」


そう言いながら慎也は男子たちを睨み、いまだに痛がっている岸井と瀬屈を指さす。すると、慎也の鋭い眼光と脅しに怯えて男子たちは後ろに下がった。


「ちょっと男子!何逃げてんの!」

「お、俺らだって痛い思いはしたくねえんだよ!」

「チッ、なら先生!大人なら子供を助けてよ!」


今度は平島に助けを求める原田。しかし平島はその場を動かずに口を開いた。


「俺に村上を止める権利も資格もない」

「何言って・・」

「むしろ俺はお前たちと同じく、罰を受ける必要がある」

「そんなのどうでもいいから!あんた先生なら私を・・!」

「お前ちょっと黙れ」


そう言って慎也は原田の頬に平手打ちし、平島の方に歩いて行く。


「では先生。あなたは今ここで俺があなたを殴っても文句はないと」

「俺は伊村を助けることはできなかった。だから俺は罰を受けて、お前を止めずに、教師を辞める覚悟でここに立っている」

「・・いい心がけですね」


そう言うと慎也は手刀で平島の首を叩いた。それを受けた平島は床に倒れて慎也を見た。


「あなたにはこれで充分です」

「なん、で・・」

「あなたはこれから、良き"指導者"としてみんなを導いてもらいますから」


その慎也の言葉を聞いたのを最後に、平島は意識を失った。


「・・さて、先生への罰は終わったし再開するか」

「ひっ!」

「もういやぁ!」

「だ、誰か・・!」

「そろそろ痛みも引いた頃だろうし、容赦なく苦しめていくからな」


そう言って慎也は3人の元へと歩いた。




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