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世界渡りの少年  作者: 憧れる妄想
第二世界 第四章 正義の憎しみ
174/211

慎也の過去 後編




(状況が変わらねえ・・)


2人が先生に相談した日から1週間が経った。しかし夏菜の私物は変わらず消失し続けていた。


(親が学校に連絡してるところを夏菜が見てるっつってたし、何かしら学校が動いてもいい気がすんだけどなぁ)


そう慎也は頭を抱える。そんな慎也の視界に、自身の机で読書をしている夏菜が入る。


(・・最近あいつ、トイレ以外は席立たねえな。まあ私物が無くなってんだからしょうがないっちゃしょうがないんだけど)


慎也は重い腰を上げて夏菜の方に向かう。


「おい」

「・・どうしたの慎也?」

「いや、お前が本読むなんて珍しくてな」

「私だって本くらい読むよ!」

「わかってるよ。んで何読んでんだ?」

「私が読んでるのはねぇ〜・・」


そこからは本のことを楽しそうに話す夏菜。そんな様子を見て安心したように微笑みながら相槌を打つ慎也。


『キーンコーンカーンコーン』

「あ・・」


しかし休み時間の終了を知らせるチャイムが鳴ると、寂しそうに表情を曇らせる夏菜。その様子を見て慎也はため息をつく。


「別に本の話なんていつでも出来るだろ?俺ら一応友達なんだから」

「!そうだよね!私たち友達だもん!」


そう言って元気を取り戻す夏菜。それを見た慎也も安心したように席に戻った。


(とりあえず明日もこの調子であいつ支えて、解決するまで耐えてもらうか)

「頑張れよ、夏菜」


そう呟いて慎也は次の授業の準備をし始めた。そんな明日など来るとも知らずに・・









翌日。慎也はいつも通りに起きて、いつも通り登校の準備をして、いつも通りに朝食を食べていた。


(パンうめ〜)


そんな呑気なことを考える慎也。しかしそんな日常も、一本の電話で全てぶち壊れた。


『prrrr!』

「お母さん!電話鳴ってるよ!」

「はいはい。何かしらこんな朝から・・」


母親が応対したのを見た慎也は、さっさと朝食を済ませて洗面台に向かおうとする。しかしそんな慎也を母親が呼び止める。


「ねえ慎也」

「ん?なにお母さん?」

「なんか夏菜ちゃんが部屋から出てこないんだって」

「・・は?」


↓↓↓↓数分後↓↓↓↓


「わざわざきてくれてありがとね慎也君」

「いえいえ。俺も夏菜が心配なんで」


夏菜のことが心配になった慎也は急いで家を出て夏菜の家に来た。迎え入れた夏菜の両親に気になっていたことを聞いた。


「そういえば学校に電話するっていう話ってどうなってるんですか?」

「あーそれがね・・」

「実は夏菜に相談された日の翌日にすぐ連絡したんだが、担任の先生が聞く耳を持たなくてな」

「あ〜・・」

(あの人はたぶんそうだろうな)

「他の先生には相談しなかったんですか?」

「僕もそう思って、担任の先生に変わってもらうよう言ったんだけど、夏菜の被害妄想に他の先生も巻き込む気か!って言われて切られたんだよね」

(くそみたいな先生だな)

「それから私たちがどんなに電話しても、夏菜の被害妄想って言って聞かなかったのよ」

「それは仕方ないですね」

「全く、なんであんな人が先生になれたんだか・・」

「とりあえず俺は夏菜のところに行ってきますね」

「ああ。夏菜の部屋は2階の1番奥だから」

「へーい」


慎也は夏菜の話を聞くべく夏菜の部屋に向かった。


↓↓↓↓移動中↓↓↓↓


「おーい。夏菜ー?」


慎也は呼びかけながら夏菜の部屋の扉をノックする。すると中から夏菜の声が返ってくる。


「・・慎也?」

「おう俺だ。どうした引きこもって?」

「・・学校に行きたくない」

「いじめられるからか?」

「うん」

「あのな、そんなのいつか終わるんだよ。だからそれまで我慢を・・」

「終わらないよ」

「え?」

「終わらないよ!絶対!」


突然の夏菜の大声に慎也は驚く。そしてさらに夏菜は続ける。


「私わかるよ。いじめてるのって他の女の子なんでしょ?いつも私が男の子たちと一緒に遊んでるから、男の子たちが近づけないようにいじめてるんだよ!だから学校に行ったらまたいじめられるんだ!」

(・・こいつ自分が可愛いって自覚ないのに、そういうのはわかるのか。やっぱ頭いいなこいつは)

「大丈夫だ。そういうのは大体相手が飽きるんだよ。だからいつか終わる」

「・・なんでそう言い切れるの?」

「そんなの俺の経験からだな」

(まあそんな経験ないんだけど)

「・・・」

「とにかく!俺と一緒に学校行こうぜ?それに女子たちがどんなにいじめようと、俺は"友達"として一緒に・・」

「・・慎也は友達なの?」

「え?いやお前がそう言って・・」

「じゃあなんで・・









         "助けてくれないの?"」


そう言うと同時に、扉の下の隙間から1枚の紙が出てくる。


「これは?」

「昨日、いつのまにか机に入ってたやつ」


慎也はその紙を開く。そこにはなんと、『村上はあんたのことを友達だと思ってない。だからあんたをたすけない』と書かれていた。


「お前こんなの信じて・・」

「でもそれの言う通りじゃん!慎也は私がいじめられてるのに全然助けてくれない!」


プツン


その夏菜の言葉に、慎也の中の何かが切れた音がした。そして慎也の中から沸々と怒りが湧いてくる。


「っ!なにが助けてくれないだ!むしろ俺が一番助けてやってるだろ!」

(やめろ俺。落ち着けよ!)

「親に相談するよう提案したのは俺だし!先生と一緒に相談しに行ってもやった!」

(やめろ、やめてくれ俺!夏菜は何も悪くないんだ!)

「っ!でもいじめは無くなってないじゃん!それなのに助けたとか言わないで!」

「てめぇ・・!」


そこからは2人の口論がヒートアップしていき、その声を聞いて夏菜の両親がやってきた。


「ちょっと2人とも!」

「何をそんなに喧嘩して・・」

「・・もういいよ」

「あ?」

「元々慎也と友達になったのって、私のわがままだもんね。慎也はそれに付き合ってくれたからなんだよね。ありがとう、でももういいよ」

「おい夏菜・・!」

「慎也君ごめんね。夏菜が変なこと言って・・」

「いや、もういいっすよ。こっちもうんざりしてたところだ。毎回毎回俺を振り回しやがって。むしろ解放されて清々する」

「っ!なら"友達じゃない"慎也は早く出てって!」

「ああ出てくさ!じゃあな元友達!」

「慎也君!」

「おじさんおばさん、お邪魔しました」


そう言って慎也は夏菜の家を出て行った。









(・・・)


あれから慎也は学校に登校して休み時間まで過ごした。ほとんどの人が外に遊びに行っているため、慎也のクラスには慎也合わせて数人しかいない。そんな中慎也はただ1人で窓の外を眺めていた。


(・・なんであんなこと言っちまったかな)

「はぁ・・」


ため息をついて夏菜の席を見る慎也。夏菜はあのまま休んだためそこは空席になっていた。


「・・夏菜、大丈夫かな」

(・・って、あいつはもう友達じゃないんだ!友達じゃないやつを心配する義理はないな!)


そう思って慎也は読書を始める。しかし夏菜のことが気になってか本の内容が頭に入らない。


(・・あーもうだめだ。全然入ってこねえ)

「・・水飲みに行こ」


気を紛らわそう慎也は廊下に出る。人が全くいない廊下に、慎也の足音が響く。


(・・俺はどうしたらよかったんかね)

「はぁ・・」


息を吐くようにため息を連続でつく慎也。すると前方から3人の女子が歩いてきた。


「でさ〜!」

「ほんとにそれ?」

「おもしろ!」

(・・・)


慎也と女子たちはお互いにお互いを気にもとめていない。そして慎也と女子たちがすれ違った。


「それにしてもさ〜・・












     やっと夏菜ちゃんいなくなってくれたね」


その女子のセリフに慎也は進めていた足を止めて女子たちの方に振り返る。幸い女子たちは慎也の様子に気づいておらず、そのまま会話を続けた。


「あ、ほんとそれ!あの子自分が可愛いからって男子たちにいい顔してさ!」

「マジうざかったよね!w」

(・・なんだ、ただの嫉妬か。止まって損し・・)

「ほんと、"いじめてよかったわ"!」

(・・・は?)


1人の女子のその発言に、慎也は無意識に女子たちに向かって歩いていた。


「ちょwこんな廊下で言わないの!」

「いいよほとんど人いないんだし」

「それもそっかw」

(・・・あいつらが、夏菜を)

「最初の方はあんま意味ないかなって思ったけどさ、どんどん元気が無くなってくの見ててめちゃくちゃ面白かったわ!」

「ほんとにね!教室で笑い我慢するの大変だったわw」

「あ、そういえばさ。盗んだ夏菜ちゃんの物ってどうしたの?あんたが持ってってたよね?」

「え?あんなの捨てたに決まってんじゃんw」

「マジ〜?w」

「まあ男子を独り占めにした"罰"だよね〜w」

(なにが罰だよ!)


女子たちの会話が続くにつれて、慎也の足も速くなっていく。


(あいつのどこに罰を受けるところがあった!)

「いつもいつも男子たちと遊んで、きっと私たち女子を心の中で笑ってたんだよ!」

(違う!あいつはただ単純に体を動かして遊ぶのが好きなんだよ!だからいつも俺に外で遊ぼうと誘ってきた!他の男子たちと遊んでいた!)

「絶対そうだよ!だってこの前さ、私が男子たちと遊ぼうとしたら急に夏菜ちゃんが来て、『私も入れて〜』とか言って邪魔してきたんだよ!」

「なにそれ!」

「さいてー!」

(それも違う!あいつは純粋に、みんな遊びたいだけなんだ!お前らが考えてるようなことは一切考えてねえんだよ!)

「ほんと夏菜ちゃんってさ、"いらないよねw"」


プツン


女子のその言葉に、夏菜の時と同様に慎也の中でなにかが切れるような音がした。しかし湧いてきたのは怒りではない。もっとドス黒い何かであった。


「あー明日来なければいいの・・」

「おいお前ら」

「え?なにあ・・」

「死ねよ」


その言葉と共に慎也は拳を振った。


(夏菜は、俺が助ける)















その日のことは学校中・・・否、地域中に知れ渡った。


 "1人の男子が3人の女子を瀕死になるまで殴り続けた"と。




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