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世界渡りの少年  作者: 憧れる妄想
第一世界 第二章 一時的な平穏
16/211

数日ぶりの再会




(さーて、今日は何のクエスト受けようかな〜・・・そういえば最近イムに会ってないな。よし、今日はあいつに会いに行こう!てことでついでにスライム討伐やろっと)


ライルとリアと別れた翌日。ギルドの掲示板の前で今日受けるクエストを選んでいる時、ふと慎也はここ最近会っていなかったスライムのイムのことが気になり、掲示板からスライム討伐と書かれた紙を手に取り、受付へ向かう。


「今日もクエストですか慎也さん」

「何か問題ですか?」

「いえ別に。それより昨日は何もなかったですか?」

「・・・・何もなかったですよ」

「少し間があった気がしますが、まぁいいです」

「今日はスライム討伐行くんで、心配はいりませんよエテラさん」

「スライムなら安心です。じゃあ冒険者カードとクエストの紙を貸してください」

「どうぞ」


エテラは慎也からカードと紙を貰い、別の紙に名前とクエスト内容を書き写す。そして紙に写し終わり、慎也が前に貰ったスライムの体液を入れる小瓶を渡し、カードも返そうとするが、エテラは手を止めて慎也のカードを不思議そうに見る。


「どうかしましたか?」

「いえ、慎也さんEランクにしてはレベルが高いなと」

「ああそれですね。おそらくゴブリンウォーリアーを倒した時に大幅にレベルアップしたんだと思います」

「そうですか・・・・・・え?慎也さん今何を倒したと」

「?ゴブリンウォーリアーですが」

「え・・」

「ん?」









「ええええええええええ!?!?」


エテラは慎也の言ったことに、驚きのあまり大声をあげる。その声にギルドにいる人全員がびっくりし、2人に目を向ける。


「エテラさんどうしたんですか!?急に大声なんかあげて・・」

「いや声もあげたくなりますよ!!Eランクの人があのゴブリンウォーリアーを倒すことがどれだけ凄いことだと思ってるんですか!?」

「・・・どんだけ凄いんですか?」

「スライムがEランク冒険者を倒すくらい凄いですよ!」

(たしかにそれは・・・凄いのか?)

「おいうるせえぞ。なんの騒ぎだ」


ギルドが騒がしくなった中、2階への階段から茶色のブレザーを着た白髪の男性が気だるそうに頭を掻きながら降りて来る。


「あ!ギルドマスター!」

(え、ギルドマスター?)

「なんだエテラか、どした?」

「ギルドマスターちょっとこっ・・」

「じゃ、じゃあエテラさん!俺クエスト行くんでそれじゃ!」

「え、慎也さん!?ちょっと待ってください!」


慎也は嫌な予感し、エテラから無理矢理カードを取りギルドを勢いよく出た。








「おーい!イムー!」


街を出て、草原に来た慎也はクエストの討伐対象であるスライムを5匹倒し、今はスライムのイムを探している。しかし、いくら探してもイムは見つからず、慎也が草原に来てから、かれこれ数十分は経っている。


(あいつどこにいんだ?全然見つかんないんだけど)

「・・・」

(さすがにあいつもずっとこの平原にいるわけじゃないし、どっか遠くに行ったのかな?まあそれならそれで俺は帰るけど)


そう思い、慎也は帰ろうと後ろを向く。その瞬間、足元にいた青い物体にびっくりし、声をあげる。


「うあぁぁぁぁ!?びっくりしたぁ!後ろにいるだったら頭突きするなりして俺を気付かせろ!心臓止まるかと思ったわ!」

「!」

「そんなに飛び跳ねて、どうしたんだ?あ、もしかして会いに来なかったこと怒ってるのか?もしそうならごめんな」

「 ♪ 」


イムが飛び跳ね始めたのが、怒っているのだと思い、慎也は地面に片膝をつきイムの頭を手で撫でる。するとイムが飛び跳ねるのをやめ、気持ち良さそうに身体を慎也の手に擦り付ける。


「さてと・・・イム、お前少しは友達できたか?」


慎也がそう訊ねた瞬間、イムの身体が止まる。


「その反応見る限りできてないんだな」

「!」

「いや別に馬鹿にしてるわけじゃねえよ。どんな生物にも得意なことがあると同時に不得意なこともある。もしお前の不得意が友達作りなら、俺で良ければその・・・・と、友達になるぞ?」

「!・・♪ 」

「おっと・・・そんなに嬉しいのか?」


イムは慎也の言った言葉が嬉しかったのか、慎也の胸に飛びつく。慎也はそれを受け止め、再びイムの頭を撫でる。


「あれ、慎也じゃん!何してんのこんなところで?」

(ん?この声はたしか・・)


後ろから声をかけられ、慎也は後ろへ振り向く。そこには、昨日知り合ったライルとリアがいた。


「ああお前らか」

「あれ?反応薄くね?」

「じゃあ大袈裟なオーバーリアクションした方がいいか?」

「それはそれでちょっとやだ」

「それはともかく、慎也さんはこんなところで何をしているんですか?」

「こいつ撫でてる」


慎也は身体を2人の方へ向けて、イムを見せる。


「それは・・・スライムですか?」

「おう、こいつはイムって言うんだ。さっき友達になった」

「見つけた俺たちだから良かったものの、他の奴が見たらお前を魔王側だと勘違いされるからあまり魔物と仲良くしない方がいいぞ」

「忠告どうも。でも、同じ種族からはぶられてるこいつを見たらほっとけなくてな」

「え?でもスライムって、常に群れで生活する習性を持っているはずですが・・」

「でもこいつ、やけに他のスライムから嫌われてるぞ。俺が見ただけでも他のスライムに2回も頭突きされてるし、この前なんか俺だけじゃなくイムもスライムたちに襲われたぞ」

「そんなにですか」

「ああ、だから俺がたまに会いに来てるんだ」

「・・・なぁ慎也」

「どしたライル?」

「人と話してる時くらい手を止めろ。何?お前ってそんなに過保護なの?」

「いやぁこれが結構気持ちよくてな。ついつい撫でたくなるんだよ」

「そんなに気持ちいいんですか?」

「ああ。なんなら触ってみるか?」

「それでは少し」


リアは慎也言ったヒントを頼りに考えていると、ふとイムに目を向け、そのまま観察するかのようにイムの身体を指で突いたり、摘んだりする。


「これは・・・・ひんやりしてて尚且つ、スライム特有の柔らかさが相まってとても気持ちいいです!」

「ふっ、リア、お前もこの気持ち良さがわかるか」

「触った瞬間枕にして寝たいと思うくらい気持ち良いです!」

「だよな!なんなら今ここで、こいつを枕にして寝たら数秒で寝れる気がする」

「あれ?なんか俺空気?てかさりげなく何ひどいこと言うなよ。それ慎也達は気持ち良いかもしれんが、そのスライムは頭が重いとしか感じねえよ。ってほら、そのスライムの身体が震えてるぞ」

「大丈夫だぞイム。お前は身体がぷにぷにしてるからあまり重さとか感じねえよ・・・・たぶん」

「いや重さを感じる感じないの問題じゃねーから」

「慎也さん。ライルがさりげなくツッコミ役になってるのでそろそろボケるやめてください」

「はいはい、悪かった。でもまぁ、こいつの感触が気持ち良いってのは本当だ」

「なんか無駄な時間を過ごした気がする」

「そんなことより、慎也さん。このあとって時間ありますか?」

「あるぞ。ありすぎて暇なレベルだ」

「じゃあこのあと、私達と一緒にクエストを受けませんか?」

「おういいぞ。あ、でも討伐系のクエストにしろよ。俺は採取とかそういうのはやだから」

「それに関しては安心しろ慎也。俺とリアは採取とか苦手だから」

「ライルはともかく、リアが苦手なのは意外だな」

「私実は昔から不器用でして」

「そんなことより早く行こうぜ2人とも」

「はいはい、そんな焦んなよライル。それじゃイム、できればまた明日会いに来るよ」

「!」

「それじゃあまたな、イム」

「おーい!慎也早く行こうぜ!」

「あーもうわかったから。今行く」


慎也はイムを地面に下ろし、ライルとリアと共に街へ

戻った。








草原から戻り、ギルドに向かい歩きながら慎也達は雑談をしていた。


「そういえば慎也さんってあと何個クエストをクリアしたらDランクになるんですか?」

「今回受けたスライム討伐はクリアしたからあと5個くらいじゃないか?てかどうした急に」

「少し気になったので。じゃあ冒険者になったのっていつですか?」

「うーん・・・たしか6日前だったかな」

「いや慎也遅すぎね?EランクがDランクに上がるのって4日が平均だぞ。なのに6日って」

「別にいいだろ、自分のペースで」

「いやでもEランクで受けれるクエストって、報酬が少ないからいつか財布が空っぽになりますよ」

「た、たしかに・・」

「でしょ?飢え死したくなかったら早くランク上げた方がいいですよ」

「そうだな・・・・よし!明日からはランク上げ頑張るか!」

「そう言う人って大体頑張んねえよな」

「俺をそういう輩と一緒にされてはこまる。いいか?俺の頑張るは結構本気なんだぞ」

「だといいんだがな」


そんな他愛もない話をしていると、気づけば慎也達はギルドの前まで来ていた。


「それじゃあ俺はクエストの報告をしてくるから、お前らは受けるクエストを選んどいてくれ」

「わかりました」

「さてと、さっさと報告済ませるか」

「し〜んやさん」


ギルドに入り、2人と一旦別れた慎也は、受付の方へ行こうとすると、エテラが慎也の前に笑顔で立つ。しかし慎也はエテラの顔を見るなり背筋が凍り、身体中から冷や汗が流れる。


(わーお、エテラさん表情は笑ってるけど目が笑ってなーい。もしかしなくても朝逃げたことを怒ってるよね。まぁ俺あの時エテラさんを無視して一目散に逃げたからなぁ・・・・やべ、俺の脳がエテラさんから逃げてって信号を送ってくる。隙をついて逃げるか)

「朝ぶりですね、慎也さん」

「そ、そうですね。そ、それよりもエテラさん、どうしたんですか?そんなに怒って」

「あら、よくわかりましたね。実はある冒険者の方が朝に私のことを無視してどっか行っちゃたんですよ」

「そ、それはひどいですね。もしその冒険者を見つけたら俺がエテラさんのもとに連れて行きますね。それじゃあ俺はこのあと用事があるのでこれで失礼しま・・」

「逃がしませんよ?」

「ですよねー」


そう言ったエテラは、慎也の手首を力強く掴み、階段の方へ慎也を引っ張る。


「慎也さんは今からギルド長室へ連行します」

「え、なんでですか?」

「どうやらギルドマスターが慎也さんにいろいろと聞きたいことがあるらしいので」

「それ絶対めんどくさいことじゃないですか!行きたくないです離してくださーい!」

「いやです」

「ヘループ、誰か助けてー!ライルかリアでもいいから助けてー!」

「!」


慎也がエテラに抵抗しながら助けて求めていると、エテラが歩みを止める。


「慎也さん?」

「なんですか?急に動き止めて。あ、もしかして開放してくれるんですか?いやーやっぱりエテラさんって優し・・」

「リアって、誰ですか?」

「え?」


そう言ったエテラの目は光を失っている。急なことに慎也は本日2度目の恐怖を感じた。


「あのーエテラさん?どうしたんですか急に?」

「私の質問に答えてください。リアって誰ですか?」

「そ、それは」

「だ れ で す か ?」

(ふぇええええ怖いよー)

「はぁ・・・・言いたくなのであればいいです。ギルドマスターの用事が終わったあとに、じ〜っくりと尋問して吐いてもらいますから」

「ひぃぃ!」

「ほら、早く行きますよ」

「・・・・はい」


慎也は抵抗をやめ、おとなしくエテラについていきながら心の中で、エテラを怒らせないようにすることを固く誓うのであった。




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