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世界渡りの少年  作者: 憧れる妄想
第二世界 第三章 好きな物には正直に
157/211

追及




『ピ、ピ、ピー!』


その時、試合終了のホイッスルが鳴った。そしてその場にいた皆の視線が得点板に集まる。


           "3ー2"


(やった、のか・・)

『うおおおおおお!!!!』


喜びの声を上げながら、慎也のクラスメイトの男子が全員亮太へと駆け寄って行った。


「やったな森塚!」

「俺たちの勝ちだ!」

「やっぱお前すげぇよ!」

(・・俺も頑張ったんだけどなぁ)


全員が亮太を称賛し、さらには胴上げまでする始末。それを見て少し苦笑しながら、慎也は立ち去ろうとした。


「待て、村上慎也」

「?」


しかしそこで神早に呼び止められる。


「お前、サッカー部に入れ」

「は?」

「今回はお前らの勝ちだ、認めてやる」

「は、はぁ」

「だからお前はサッカー部に入れ!そして俺が森塚もろとも潰してやる!」

(案外負けず嫌いなんだなこいつ)

「まあ誘ってもらったところ悪いんだが、俺はサッカー部に入れねえわ」

「なぜだ!?」

「だって俺あいつに束縛されてんだもん」


そう言って慎也は怜を指差す。怜にも話が聞こえていたのか、険しい表情をしていた怜に慎也は苦笑する。


「とまああんな感じだから、悪いけどサッカー部には行けねえわ」

(まあ鈴川関係なしに行きたくないけど)

「・・なるほど、お前があいつと一緒にいるって話は本当みたいだな。たしかに俺でもあいつには敵わないし、逆らわないのが1番だな」

「ちなみにお前らってなんかで勝負したことあんの?」

「一度50m走で戦ったぞ。俺が6秒2であいつが6秒ジャストだったな」

「は?ちなみに女子の50mって世界記録どんだけだっけ?」

「たしか5秒9くらいだな」

(世界に通用するの草。そりゃあ俺と一緒に戦えるわけだ)

「・・さてと、それじゃ俺はこれで失礼する。呼び止めて悪かったな」

「おう」

「あ、それと!」

「?」

「次また戦うようなことがあったら、今度は俺が勝つからな!」


そう言うと神早は自チームのところへと戻って行った。


(神早みたいな奴でも鈴川には勝てねえのか。こりゃあ探ればいろいろと出そうだな)


苦笑しながら慎也は怜たちの方へ向かった。


「お疲れー村上」

「どうも」

「村上あんたすごいじゃん!急に動いたと思ったらすっごい速さで走って行って、私ちょっと目を疑ったわ!」

「同意だね。いつもぐうたらの村上が、実はあんなに速かったなんてね」

「いやー、あはは・・」

「・・よかったんですか?みんなの前で」

「亮太のためだ、背に腹はかえられん」

「そうですか」

「ちょっとちょっと!何2人で話してんの?」

「いえこっちの話です。それより篠宮君のところに行ったらどうですか?」

「・・それもそうね!賢斗〜!」


篠宮の名前を言いながらその場を去って行く花乃に苦笑する3人。


(・・ん?あれは・・)


その瞬間、慎也は体育館裏へと見覚えのある人物が行ったのを目視した。


「・・悪い鈴川。少し行ってくるわ」

「え?ええわかりました・・」


怜にそう伝えると慎也も体育館裏へと向かった。













「何よ何よあいつ!ふざけやがって!」


明るい午前中にも関わらず、建物の影で薄暗い体育館の裏の空間。そこで1人の生徒が苛立った様子で体育館の壁を蹴っていた。


「最近は篠宮君のサポートをしてるから見逃してあげてたのに!仕方ない、次はあれ以上のことを・・」

「悪いが次はないぜ」

「っ!誰!?」


急な声に、先程まで苛立っていた生徒は驚いてそっちに振り返った。そこには笑みを浮かべた慎也がいた。


「あんた、たしか転校生の・・」

「俺のことはどうでもいい。そんなことより、亮太のこといじめてたのはお前なんだろ?"牧本星子"」

「・・それって何か証拠はあんの?」

(さっきのセリフ録音出来てたら1発KOだったんだけどな)

「証拠はねえよ。でもお前が犯人である推理はできる」

「へぇ、じゃあ聞こうじゃない」


そう言って牧本は余裕の表情を浮かべながら腕を組んで慎也の話に耳を傾ける。


「それじゃあお言葉に甘えて。お前が最初に反抗に及んだ日のお前の行動はこうだ」



①7時半に教室に来て彫刻刀で亮太の机に文字を彫る。

②そのあとは彫刻刀をゴミ箱で処分し、職員室に行ってアリバイ作り。

③そしてみんながいじめに気づいたタイミングで自身も野次馬を装った。



「まあこんなもんだ。なんか反論は・・まああるだろうな」

「ええもちろん。まず彫刻刀で机を彫ったところ、別に私じゃなくても出来るでしょ?」

「いいや出来ないな。実は7時45分に到着した北原ってやつがいるんだが、そいつの証言によると、45分の時点ですでにやられてたらしいんだ。そうなると犯行可能な時間は10分ちょっとにまで縮まるんだ」

「それがどうしたの?」

「『出しゃばるな』って文を、たかが小学生の頃少し触った程度の素人が10分程度で、しかも綺麗に彫れるわけないだろって話だ。すると必然的に彫刻刀を使ったのは、使い慣れてる美術部の人になるんだよ」

「・・・」

「そんでお前、この前話聞いた時に「美術部を辞めて茶道部」に入るとか言ってたよな?逆に言えばそれって、お前が元々美術部だったってことになるよな?」

「・・ええそうね」

(よーしいい感じに追い詰めれてんな)


そこまで話すと慎也は勝ちを確信してか内心ガッツポーズをしていた。


「で、他に反論はあるか?」

「もちろん。さっき私がアリバイを作りに行ったって言ってたけど、それなら私が学校に来た時間が8時なのはわかるでしょ?」

「いいや、お前が来たのは8時よりかなり前だ」

「それはどうして?」

「職員室入室時のルールだよ。たしか手荷物は教室などに置き、手ぶらの状態で入室だったな。そんでお前を相手した平島先生によるとお前は手ぶらだった。ということはお前は職員室に来る前に教室にすでに行ったことになる」

「でもそれってほんの数分の誤差でしょ?それぐらいじゃ私のアリバイは崩せないわよ」

「ああわかってる。そこで北原の登場だ」

「?」

「どうやら北原は教室に来た時に教室内で赤いリュックを見たみたいなんだ」

「・・それが?」

「そのリュックがお前のだとしたら、お前は45分前にいたことになる。つまりお前に犯行が可能だったってわけだ!」

(さあどうだ!)


勝ち誇ったような顔で牧本を見る慎也。一方牧本は顔を俯かせて肩を震わせていた。


「あ?どうした?」

「いえ、ちょっと・・ふふ・・あなたが、まさかそこまで頭が・・ふふ・・悪いとは思わなくて・・・ふふふ」

「は?んだとごら?」

「・・さてと、それじゃあ私も本気で反論するわね」

「え?」

「まず・・



①美術部の人が犯人ってだけで、私とは限らない。

②赤いリュックが私のだという証拠はあるのか。

③そもそも美術部だからといって私が彫刻刀を使えるとは限らない。



・・まあこんなもんですね」

(・・たしかに)


牧本の怒涛の反撃に慎也は普通に納得させられてしまった。


(普通にこいつが言ってること正論でやばいんだけど。てか俺あんなあやふやな考えでいけるとか思ってたの?馬鹿じゃん恥ずかし)

「で、何か反論は?」

(くっ!)


「万事休すか!」そう慎也は思った。









「もちろんあるに決まってるじゃない!」

「「っ!?」」


その瞬間、なんと2人の前に赤いリュックを持った"花乃"が現れた。


「伊村!?」

「なんであなたがここに・・!」

「そんなの、村上の手助けに決まってるじゃない」

「はあ?」

「ってお前、反論あるっつったけど、なんか情報持ってんのか?」

「ええ。昨日あんたが北原に話を聞きに行く前に、私も調べたいことがあるって分かれたでしょ?」

「ああそういえばそうだな。てことはあの時に?」

「そそ」

「じゃあその反論ってのを聞かせてもらいましょうか」

「言われなくても」


そう言うと花乃は懐から手帳を取り出して話し始めた。


「それじゃあ1つずつ丁寧にいくわね。まず①についてだけど、調べたところあの日はあんたに"しか"反行は不可能だったわ」

「何を根拠に・・」

「美術部の顧問に聞いたんだけど、12月に絵のコンクールがあるみたいじゃない」

「"そんな話知らない・・"」

「そしてあんたが犯行に及んだ日、顧問はその話を伏せて部員を朝に集めて"8時"に解散したらしいわ。コンクールは知らなくても、召集がかけられたのは知ってるでしょ?」

「・・まさかあれが!」

「ちょっと待て!8時解散ってことは!」

「そう。そして牧本は今の反応からわかると思うけど、召集には応じなかったの」

「で、でも!私以外にも欠席者はいたんじゃないの?」

「いいえ残念ながらいなかったわね。顧問はその日に点呼を取ってメモしたらしいから間違いないわ」

「くっ!」

「とまあ、これで牧本しか犯行に及べないのがわかったわね。それじゃあ次は・・」


花乃は次に手に持っていた赤いリュックを前に出した。


「それは・・」

「うちのクラスにあった唯一の赤いリュックよ。そんで中身を軽く見てみたんだけど、あんたの生徒手帳やらなんやらが入ってたし、あんたので間違い無いわよね?」

「で、でもそれが朝にあったとは限らないわよ!犯人が見られたと考えて、リュックを変えた可能性があるし!」

「じゃあ今から北原に確認しに行く?それですぐ解決だけど」

「・・・」

(めっちゃ伊村優勢じゃん。もう勝ったろ)

「で、正直ここまでの情報であんたが犯人なのは確定なんだけど・・」

「・・まだよ!そもそも私が彫刻刀を使えなければ、実行に移れても遂行は出来ないわよ!」

「・・仕方ないわね。トドメを刺してあげる」


そう言うと花乃は突然拍手をし始めた。


「あなた何を・・」

「いや、別に。ちょっと褒めておこうと思って」

「は?」

(何言ってんだこいつ?)

「だってあなた夏に・・









   木彫のコンクールで賞を取ったみたいだから」

「「っ!?」」


その発言に慎也は驚き、牧本は青ざめた顔で花乃を見ていた。


「まさか忘れたとは言わせないわ!体育館で表彰されていて、さらには教室で他の女を嘲笑うように賢斗に褒められていたものね!」

「っ!」

(うわ〜・・)

「でまあ、賞を取ったあんたが、まさか彫刻刀は使えませーん!なんて言えるわけないわよね?」

「くっ・・!」

「で、何か反論はあるかしら〜?」

「・・・」

「・・ま、そういうわけで、あとはよろしくね村上。それと、これで借り1つね」

「あ、ああ」


そう言うと花乃はリュックを持ってその場を去って行った。


(まあ普通に助けられたし、1つくらい言うこと聞いてやるか。さてと・・)

「もうお前が犯人決定でいいよな?」

「・・・のよ」

「あ?」

「あいつが悪いのよ!!!」

「!?」

「あいつが篠宮君より目立つのがいけないのよ!篠宮君に比べたら他の男子なんてゴミ以下の存在のくせに!篠宮君を差し置いて出しゃばりやがって!!それにあんたもあんたで!伊村と手を組んで私のことを邪魔しやがって!次はあんたらも一緒にやってやる!」

(えぇマジですか・・)


牧本の開き直りっぷりに少々・・・いやめちゃくちゃひいていた。しかしそれと同時に、牧本の意思も理解していた。


(でもまあなるほど、反省する気はさらさらないと。なら仕方ないな・・・やるか)


そう思った慎也は無表情で牧本に向かって歩み始めた。




すぅー・・・まあ予定って言っただけで、絶対最後にするとは言ってないしね。うんセーフセーフ・・・





・・・次は頑張るから!すみません本当!


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