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世界渡りの少年  作者: 憧れる妄想
第二世界 第三章 好きな物には正直に
154/211

神早颯の実力




「行くよ森塚君!」

「・・ああ」


慎也たちの組のキックオフで決勝戦は開始された。篠宮は亮太にボールを渡すと、自身は敵陣に向かっていく。それに並ぶように亮太も敵陣へ突っ込む。


(出だしは今までと同じ。お前はどう出る?神早)


慎也はDF陣から問題である神早颯の様子を伺う。そしてちょうど亮太が神早の目の前にやってきた。


「篠宮!」

「ああ!」


神早と1対1はダメだと判断した亮太は、すぐさま篠宮にボールをパス。そして自身は神早を抜き、篠宮からパスを受けてボールを保持する。


「・・・」


しかしそれを見た神早は表情を変えないどころか、その場が微動だにせず、ただ亮太と篠宮を目で追っているだけだった。


(?あいつ何考えてんだ?)


慎也は不審に思いながら神早の観察を続ける。そして亮太の華麗なドリブルによって、気づけばボールはゴール前に運ばれていた。


「っ!来い森塚!」

「・・・」


GKと1対1の状況。亮太は無言のまま足を振り上げシュートを・・


「篠宮!」


打つと見せかけて、篠宮にパスをした。GK含め敵全員の意識が亮太に向いており篠宮はフリーだったため・・


「先制点貰うよ!」


篠宮のシュートにGKが間に合わず、慎也たちのチームに点数が入った。


「やったね森塚君!」

「・・ああ。もう1点いくぞ」


そうして2人は自陣に戻って行った。そんな様子を見て神早は・・


「・・あーなるほどね」


そう呟きながら不敵な笑みを浮かべて、自チームの人らを集めて何かを話し始めた。









・・・亮太視点・・・


続いて神早のクラスのキックオフ。最初にボール持ったのは神早であり、亮太たち前衛は身構える。


(来い神早!この前の練習試合は抜かれたが、今回はそうはいかんぞ!)


そう思って亮太は神早に向かって勢いよく駆け出した。しかし次の瞬間・・


「ほらよ」

「は!?」


なんと敵チームである神早が亮太にパスしたのだ。その行為を見て亮太たちのチームどころか審判や観客も驚いていた。


(何のつもりだこいつ!?こいつ勝つ気あんのか!?)

「ほら、行きなよ?君のドリブルでさ」

「っ!舐めたことしやがって!いくぞ篠宮!」

「あ、ああ」


イラつきながらも亮太はボールを持って敵陣の中を駆け抜けて行く。しかし神早だけでなく、他の敵チームの人たちも亮太と篠宮を見るだけでその場から一歩も動かずにいた。そしてあっという間に亮太と篠宮はゴール前に来た。


(これで1て・・)


シュートを打ちそうになった亮太だったが、すぐに我に返りシュートを寸前のところで中断した。


(あぶねぇ、シュートを打つのはあくまで篠宮だ)

「篠宮!」

「え!?」


亮太はすぐさま方向を変えて、ボールを篠宮へとパスした。









「ビンゴ♪」

(!?)


しかしその瞬間、どこからともなく神早が2人の間に入ってパスをカットしたのだ。


「てめえいつの間に!」

「そんじゃあな!」


すぐさまボールを奪い返そうとした亮太だったが、そんな亮太を神早は自慢の足で置き去りにして亮太たちのチームの陣地へと駆けて行った。




・・・慎也視点・・・


(っ!?マジか!?)


遠目からその様子を見ていた慎也は目を見開いて驚いていた。


(まさかあいつ、さっきのゴールで亮太の状態を把握したのか!?くそ!)


ボールを持って神早は慎也チームの前衛中衛を次々と抜いていき、最終ラインである慎也たちの前までやってきていた。


「止めるぞ村上!」

「ああ!」


慎也はもう1人のDFと神早の前に立ちはだかる。しかし神早は余裕の表情で2連続股抜きを成功させて2人を抜いた。


「だああくそ!」

(っ!行かせるかよ!)


慎也は抜かれた焦りからなのか、場と状況を考えずに足に魔力を込めて爆発的なスピードで神早に追いついた。


「!?やっぱりお前はすごいな。でも・・」


そこまで言うと神早は一瞬減速する。


(っ!減速!?)


それにつられて慎也も減速してしまい、それを待っていたかのように神早は加速して慎也を振り切った。


「お前は技術が足りない」

「くそ!」

「それじゃあ同点といくかな」


そう言って神早はゴールの右上へと勢いよくボールを放った。


「うおおお!」


GKはそれに合わせて飛ぶが、ボールはその方向とは真逆の左下に弧を描くように急カーブし、ゴール中へと入って行った。


「この様子なら勝ちはもらったかな」


そう言って神早は自陣へと戻って行った。


(まずいぞこれ!このままじゃ・・)


去って行く神早の背中を見ながら慎也は焦りを感じていた。




そして試合は慎也たちのチームのキックオフで再スタート。


「森塚君!」

「ああ」


篠宮からボールを受け取ると亮太は先程同様敵陣を駆け抜けて行く。しかし敵チームも先程同様に何もせずただ2人を見ているだけだった。


「っ!ならこれでどうだ!」


そう言って亮太はゴールに着く前に篠宮にパスを出し、篠宮は無事にそれを受け取る。


(!たしかに、それならゴール前のパスは邪魔されないし、篠宮もシュートが打てる。でもそれじゃ・・)

「もーらい!」

「あ!ごめん森塚君!」


今まで点が決められたのは亮太がゴール直前までボールをキープしていたおかげだ。しかしそれが出来なくなってしまった以上、篠宮が持って行かないといけないが、そんな技術は篠宮には当然なく、簡単にボールを取られてしまった。


「行け神早!」

「あいよ!」


そして奪われたボールは案の定神早へと渡される。


「おいみんな来るぞ!」

(次は絶対止める!)


ボールを持って颯爽とグラウンドを駆け抜けて行く神早に動きが間に合わず、慎也たちのチームの守備陣の人たちは次々と抜かれて行く。


「行こう村上!」

「ああ!」


先程と同様に2対1の状況にする慎也たち。そんな2人は先程やられたせいか、若干股を気にしながら神早とぶつかる。


「来いよ!股は抜かせねえぞ!」

(さあ下は警戒済みだ。右と左、どっちに出る!?)

「・・・」


2人を相手にしながら、一瞬後ろを見た神早はおもむろに横へとボールを出す。その行動に当然2人は驚いた。


(こいつどこにボールを・・・っ!?)

「・・サッカーってのは、チームプレイなんだよ、お2人さん」

「サンキュー神早!」


神早に集中していてもう1人敵が向かってきていることに気づかなかった2人は、その者へのパスを許してしまった。そしてボールが渡ったことを確認した神早は2人の横を通ってゴールへと走り出す。


(っ!せめてこいつだけでも!)


ファウル覚悟で慎也は神早の肩へと手を伸ばす。しかし慎也が掴んだのは肩ではなく空気であった。


「お前の速さは認めてやるが、それ以外はゴミだな」

「っ!」


そう言い残し、神早はパスを受けてゴール前へ。そしてシュートの体勢を取る。


「はい、2点目っと」


そう言って神早の放った急カーブシュートにGKはなすすべなく、ゴールを決められてしまった。




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