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世界渡りの少年  作者: 憧れる妄想
第二世界 第三章 好きな物には正直に
149/211

違和感




『ピピー!』


試合終了のホイッスルが鳴る。結果は3ー0で慎也のクラス勝利した。練習試合ではあるが、慎也のクラスの人らは皆喜んでいた。2人を除いて・・


「おい亮太」

「・・なんだ慎也?」


慎也に声かけられて平静を装う亮太。しかし慎也の次の言葉にそれも崩れる。


「なんでシュートを打たなかったんだ?」

「っ!」


慎也の質問に思わず亮太は慎也から目線を逸らす。それでも慎也は続けて言う。


「今回の3点、全部篠宮が決めたがどれもお前のパスからのシュートだった」

「・・ああ」

「でも見てる人からしたら、お前もシュートを打てる場面だった。というか、お前ならそのまま点も入れれただろ。素人の俺はそう思ったが、違うか?」

「・・いや、あってるよ」

「そうか・・やっぱあれのこと気にしてんのか?」

「・・当たり前だろ」

「なあ森塚。別に気にしなくてもあれは俺が・・」

「・・慎也が?」

「俺が、犯人見つけてあんなことやめさせてやる。だからお前は・・」

「・・無理だろそんなの」

「は?」


亮太からこぼれた否定の言葉。その言葉を聞いて慎也は亮太が解決を諦めていることを察する。


「お、おいおい、それは諦めてるってことか?そりゃまだ早いぞ」

「・・なんでだ?今のところ犯人の手がかりは無し。参考にしてた鈴川のあれも、伊村の言う通り意味がない。それでも諦めるなって言うのか?」

「っ」


亮太によって再確認された絶望的な状況。諦めるなと言っている慎也だが、この状況を打開できる策は思いついていない。それを亮太もわかっていたのだろう。


「俺のために動いてくれるのはありがたいが、もう無理しなくていいぞ」

「いや無理なんて・・」

「おーい亮太!」

「・・呼ばれたから行くわ。それじゃ」


そう言って亮太は友達の元へと行ってしまった。


「・・はぁぁぁ!」

(マジでどうすっかなこれ)


深いため息をついて、頭を抱える慎也であった。









「・・はぁ」

「今ので14回目ですね」

「なに数えてんだよ」


時間は進み昼休み。慎也と怜は食堂で昼食を取りながら今後のことで話し合っていた。


「まあそんなことより、どうしましょうか。今のままだと犯人が見つからないどころか、森塚君の精神が削れていくだけですよ」

「と言っても手がかり0だぞ?そっからどう犯人探すんだよ」

「そうですね・・・まず、犯行可能な人を絞りますか」

「・・むしろそれ最初にやることじゃないの?なぜ先に篠宮ラブの女子のところ行った?」

「・・まずは犯行時刻を考えましょうか」

(おい)


慎也の正論ツッコミをスルーして、怜は話を続ける。


「この学校、門が開くのは7時ですが、教室が開くのは7時半なんです」

「へぇ〜そうなのか」

「そして森塚君によると、サッカー部の朝練が終わるのは8時ぴったりらしいので、犯行可能な時間は30分ですね」

「30分か・・」

(その間に来た人が犯人か。でも俺いつもギリギリで来るから朝早く来る奴なんて知らんからな)

「・・なあ鈴」

「私もわかりませんよ。あなたと同じくいつもギリギリですから」

(知ってた。でも一応な)

「さてと・・では行きましょうか」


いつの間にか昼食を食べ終えた怜はそう言って立ち上がる。


「行くってどこに?」

「聞き込みですよ。それと、ここからは手分けして行きましょう。その方が効率良いですから」

「え、それは・・」

(まずい!こいつがいないと俺初対面の人に話しかけられないんだけど!)

「では行ってきますね」

「あ、ちょ・・!」


慎也の声を無視して怜は食堂を出て行った。


「・・はぁ」


取り残された慎也は本日15回目のため息を吐くのであった。









(やっぱこういう事件って大体灯台下暗しだろ。ということで扉オープン!)


1人では聞き込み出来ないと判断した慎也は、職員室で借りた鍵で物置の扉を開けた。


(さーて"あれ"はどこかなぁ〜・・っとあったあった)


慎也が探していたのは被害に遭った亮太の2つの机。そこにはあの2つの言葉が"綺麗"に彫られていた。


(・・さすがにねえか。そりゃあドラマとかみたいに現場に証拠を残すとかいうヘマやるわけねえか)


何の手がかりも掴めず、落胆する慎也。しかし次の慎也の発言で事態は一変する。


「・・それにしても、よくもまあ犯人はこんな綺麗に彫れたな。初心者の俺なら軽く30分はかか・・・ん?」


無意識に溢れた本音の発言。その自身の発言に違和感を慎也は感じた。


(ちょっと待てよ。たしかにこんな綺麗に彫ることなんて、初心者にはかなり困難だ。それに鈴川は犯行可能な時間は30分って言ってたけど、それはあくまで8時まで人が来なかったらの話。朝部活がなくても早く学校に来る奴なんていくらでもいるだろう。それを考えると犯行可能な時間はかなり少ない。そんな中でこんな綺麗に彫れる奴と言ったら、日頃から彫刻刀を使う奴くらいしか・・)


そこまで考えたところで、慎也の頭の中に1つの単語が思い浮かんだ。


(・・美術部か)


そう思った慎也はさっそく職員室に向かおうと立ち上がったが、その瞬間に予鈴のチャイムが鳴った。


(チッ、仕方ねえ。話を聞くのは明日でいいか。今日は部活もあるし)


そう思って慎也は物置を後にした。




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