表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界渡りの少年  作者: 憧れる妄想
第二世界 第三章 好きな物には正直に
145/211

慎也が最も嫌うもの




時間は進み練習試合の翌朝、それは起こった。


(あ〜ねみぃ〜!)


眠そうにあくびをしながら慎也はいつも通り学校にやってきて、教室へと向かっていた。


(はぁ、遅くまでゲームしすぎたな。でもまあおかげで作りたい装備作れたし、結果オーライか)


そう思いながら、慎也は自身の教室がある階までやってくると、あることに気づいた。


(・・あそこって俺のクラスだよな?なんで人が集まってんの?)


なんと、慎也のクラスの教室前に大きな人だかりが出来ていたのだ。


(・・あれか、篠宮か鈴川あたりがなんかしてんのか。あの2人が原因なら納得だ。てことで俺には関係ねえし気にしないでおこ)


その時の慎也はそんな軽い考えで、とくに急ぐわけでもなくマイペースに教室へと向かう。しかしその時であった・・


『さっさと出てこいよおい!!!』

(・・今の声って)


その階全体に響き渡るほどの怒声。その声をつい昨日まで聞いていた慎也は自然と歩くスピードが速くなり、あっという間に教室へとついていた。


「おいおいマジかよ・・」

「誰だよやったの・・」

(くっそ何が起こってんのかわかんねえ!仕方ねえ!)


慎也は無理やり人だかりを掻き分け、この騒ぎの源である自身の教室に入った。そしてその中には・・


「おい黙ってねえで名乗り出ろよ!」

「・・はぁ、やっぱりお前か。亮太」


ただひたすら、自身のクラスメイトに怒鳴っている体育着姿の亮太がいた。その顔は、目は、凄まじい怒りがこもっている。


(なんに怒ってるか知らんが、ここは一旦止めるか)

「いい加減・・」

「おい亮太、一旦落ち着け」

「っ!・・慎也か」

「それで、お前は何に怒ってんだ?俺今来たところだから説明を求む」

「あ、ああ。実は・・」


そう言って落ち着きを取り戻した亮太は、自身の机を慎也に見せた。


「っ!?」


それを見た慎也は、吐き気を催し慌てて口を押さえてその場にしゃがみ込む。


「お、おい大丈夫か!?」

「ああ大丈夫。だがそれよりも、これは・・」


出てきそうになったものを引っ込めた慎也は、再度亮太の机の上を見た。そこには









刃物のようなもので、"お前ごときが出しゃばるな"と綺麗に彫られていた。


そしてそれは慎也が"何よりも嫌う"行為、"いじめ"であった。


「これって、いじめだよな」

「ああ。朝練から帰ってきた時にはやられてたよ」

(・・チッ、この世界にもあんのかよ。まあ人間の悪意なんて無限に生まれるから仕方ねえ)

「・・慎也?」

(いじめを誰が誰にしようが俺には関係ねえ。けど、その誰にが俺の友達なら話は別だ。さて、この犯人はどうしてくれようか。とりあえず"不登校"にでも・・)

「お、おい慎也!」

「え、あ、ああ悪い!」

「なんかお前、すっげえ怖い顔してたけど・・」

「え、そうか?でもまあそうなるわ。こんなの見せられたらな。これやった奴は絶対許せねえ」

「そうか、ありがとな」

「で、お前はどうすんのこれ?」

「一応犯人探して、次はこんなことをしないように怒るが・・」

「・・それだけ?」

「え、ああそうだが?てかそれ以外ないだろ」

(・・ああそっか。こいつと俺の普通は違うもんな。いやむしろ俺は変なのか?)


そんなことを話していると、HRの予鈴が鳴る。それと同時に怜も教室へと入ってきた。


「朝から騒がしいですね。一体何が・・」


そう呟きながら怜は騒ぎの元を探し、亮太の机を発見した瞬間、顔を険しくして2人の元へと向かう。


「ああ鈴川、おはよ」

「ええおはようございます。というかそれよりも」

「ああ。俺が朝練から帰ってきた時には・・」

「・・そうですか」

「とりあえず亮太。先生には俺と怜から言っとくから着替えてこい」

「そうですね。そのまま授業は受けれないでしょうし」

「そうか、悪いな。んじゃ着替えてくるわ」


そう言って亮太は着替えの入っている袋を持って教室を出て行った。


「・・さて、これはどうするべきでしょうか」

「亮太いわく、犯人突き止めて注意するらしいぞ」

「・・あ、いえ、そっちではなく、この机をどうしようかと」

「ああそっちか。でも俺ここに来たばっかだから物置の場所とか知らんぞ?」

「それに関しては先生に聞けばいいですよ・・・ほら、噂をすれば」


そう言って怜が前の扉に向けると、そこから今日も今日とて気だるそうに平島が入ってきた。その直後にHRを知らせる本鈴も鳴る。


「ほら鳴ったんだからお前ら座・・・なにこの感じ」


いつも通りのテンションでいこうとした平島だったが、教室内の変な雰囲気に気付き、教壇へと向かう足を止める。


「先生ちょっと!」

「村上か。どした?」

「ちょっと見てもらいたいものが!」


そう言われながら慎也に手招きされた平島は2人の元にやってくると、亮太の机の惨状を見て眉をひそめる。


「・・これ誰がやったかは?」

「わかってませんよ。それでとりあえず亮太の机を別のと取り替えたいんですが」

「それなら1階に物置がある。そこに机があるから適当に埃払って持ってこい」

「わかりました。ありがとうございます」

「おう。それと悪いが、ついでにこの机を物置に持ってってくれない?さすがに教室に放置するわけにはいかないし」

「了解です」


平島に言われて慎也は亮太の机を持ち、教室から出て行った。


「では私はこれで・・」

「あ、ちょっと待て鈴川」

「?なんですか?」

「出来れば村上の付き添いお願い出来ない?階段で転んだりしたら大変だし」

「・・わかりました」


少し悩んでから怜も平島の頼みを承諾して慎也について行った。


「・・さて、これからひと仕事ありそうだねぇ」


そう呟きながら平島はHRを始めた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ