VS骨の魔術師 普通の本気
「鈴川!」
「村上君!」
(間に合え・・!)
その瞬間、魔法陣から赤い光の球が2人目掛けて放たれた。そしてその赤い光の球はそのまま・・
ドカーン!
何かに衝突して爆発を起こし、2人はその爆煙に包まれた。
『ハーッハッハッハッハ!!』
その後も骨の魔術師の高笑いが周囲に響く中、地獄の雨は数分続き、気づけば当たり一帯は建物や道路などが全壊していた。
『・・まだ息のある奴が何人かいるようだな』
「ひ、ひぃぃぃ!」
運良く生き残った警察官たちは、先程まで威勢よくガイコツたちに銃を撃っていた手を振るわせ、ただ怯えるしかなかった。
『・・村上慎也も生きているようだな』
そう言って骨の魔術師は近くの爆煙を魔法で吹き飛ばす。するとそこからは・・
「む、村上君・・」
「・・・」
爆煙からは、慎也を心配そうに見る怜と、その怜を守るように怜の体を自身に強く抱き寄せている慎也が出てきた。
『ふ、その女を庇ってわざわざ私の魔法を喰らうとはな。馬鹿な奴だ』
「・・止んだか」
魔法が止まったことを確認した慎也はすっと立ち上がり骨の魔術師の方に体を向ける。
『どうだった村上慎也、私の雨は?最高だっただろう?』
「ああ、最高にクソだったよ」
「む、村上君。私を庇って・・」
「気にすんなこれぐらい。大したことなかったよ」
『大したことなかった?強がりを言いよって』
「強がりじゃないぜ。証拠を見せてやろうか」
そう言って慎也は、軽く息を吸い込むと言い放った。
「俺はな・・
まだ本気の半分も出してねえんだよバーーーカ!!」
そう言い放つと同時に、慎也は自身の体から魔力を骨の魔術師に放った。そして骨の魔術師は放たれた魔力で、慎也の発言が嘘ではないことを察し、だんだんと冷や汗をかき出しながら、後ろに大きく下がり慎也から距離を取る。
『・・ふ、ふん!何を言い出すかと思えばデタラメを言いよって』
「そう言いながら体が震えてるぞ?デタラメと思うのは勝手だが、もし戦うなら本当だったってことを嫌でも痛感することになるぜ。雑魚野郎」
『な、なんだと?人間ごときが2度も私を侮辱しよって!私の力の前にひれ伏すがいい!』
そう言うと骨の魔術師の周りに複数の赤い魔法陣が展開され、その魔法陣たちは全て慎也へと向く。
『喰らえ!『ボンブイルプルゥ』!』
骨の魔術師の詠唱と共に魔法陣から先程の地獄の雨が慎也に放たれる。
(もしかしたらこいつの仲間がこれを見てるかもしれないしな。あまり敵側に俺の情報は渡したくないし・・)
「こっからは、"この状態"で本気で行くぜ」
そう呟くと、慎也は足と竹刀に魔力を込めると、飛んで来る地獄の雨を竹刀で捌きながら骨の魔術師に近づいて行く。
『なに!?』
(やっぱこいつ弱いな・・・いや、たぶんバルシムが強すぎたせいで感覚がバグってんだな)
『くっ、ならこれでどうだ!『ソルラマン』!』
骨の魔術師は地獄の雨を消すと、今度は茶色の大きな魔法陣を2つ出し、そこから土で出来た大きな手を召喚する。
『ぶっ飛ばされろ村上慎也!』
「んなのごめんだね!」
2つの土の拳を放つ骨の魔術師。それを慎也は1発目を横に受け流し2発目を飛んで躱す。
『馬鹿め!』
「やべミスった。っ!」
1発目の拳がUターンして空中で慎也に後ろから襲いかかる。瞬時に慎也は体を後ろに向けて竹刀でガードし、ダメージを最小限にして後ろに勢いよくぶっ飛ばされる。
『潰されろぉ!』
「うおマジか」
そこにさらに2発目の拳が上から勢いよく振り下ろされる。それを慎也は竹刀で受け止めて、潰されないよう足に力を入れる。
「こんなもん、『岩壊斬』!」
慎也は武技を唱え竹刀を強化すると、そのまま受け止めていた拳を打ち砕いた。
「!」
(やば後ろ・・!)
2発目に気を取られて1発目の拳が迫って来ていることに気付くのが遅れ、慎也は少しでもダメージを抑えようと背中に魔力を込め始める。
(っ!?嘘だろ!?)
しかしその瞬間、慎也と拳の間に1つの人影が割り込んだ。
『なんだと!?』
「っ!」
「鈴川!?」
なんと怜が竹刀で拳を受け止め、慎也と骨の魔術師は共に驚きの声をあげる。
「おま・・!」
「村上君!私のことは気にせず走りなさい!」
「!・・ああ、わかった!」
怜に一喝され、慎也は再び骨の魔術師に向かって走り出す。
『あの女ほんとに人間か!?』
(奇遇だな、俺も思った)
『・・先にあの女をやるか。『ボンブイルプルゥ』!」
すると骨の魔術師は、慎也を無視して怜に地獄の雨を放った。
「鈴川!そっちにいったぞ!」
「わかってます!」
そう言うと、瞬時に怜は土の拳の下に潜り込み、地獄の雨に土の拳を破壊させると同時に、それで生じた爆煙を利用して近くの瓦礫に身を隠す。
『くそ!あの女どこに!?』
(今のうちに一気に距離を・・!)
『!そう簡単に近づけさせないぞ!』
「チッ!めんどくせえ!」
骨の魔術師は怜から慎也に標的を変え、地獄の雨を慎也に放つ。一方怜は・・
「この状態が続けば被害が増える一方。私も攻撃しなければ。しかし浮いている相手にどう攻撃を・・」
怜は何かないかと辺りを見渡す。すると1つの手頃な大きさの石を見つける。
「・・野球の感覚でやればいけるでしょうか」
そう呟くと怜はその石を片手に、上に放り投げると竹刀を構える。そして・・
「すぅー・・はあああ!」
ベストタイミングで骨の魔術師の頭部目掛けて石をかっ飛ばした。その石は勢いを落とすことなく、そのまま骨の魔術師に向かっていき・・
『っ!?なに!?』
「マジか!?だがナイス!」
骨の魔術師の頭部に見事命中した。思わぬ攻撃に骨の魔術師はよろけて思わず地獄の雨を止めてしまう。そのチャンスを逃さず、慎也は足に魔力を込めると骨の魔術師目掛けて勢いよく飛び上がる。
『あの女よくも・・!』
「もらったぜ!」
『!?くそ『ミュ・・』
「遅え!『岩壊斬』!」
骨の魔術師に壁を貼らせる前に、慎也は渾身の一撃を骨の魔術師にぶつけて地面めがけてぶっ飛ばした。
『ぐああああ!!』
「チッ、やり損ねたか」
「ですがかなりのダメージは与えられたはずです」
「ああそうだな。てか今のはナイスすぎたわ鈴川。マジサンキュー」
「力になれたならよかったです」
『くそがああああ!!』
「「!」」
怒号と共に、骨の魔術師は周りに魔力を放つ。するとその魔力に触れたかなりの大きさの瓦礫が骨の魔術師の上へと浮かんでいく。
『まさかこれを使うことになるとはな』
「・・村上君。あれはどうにかできるんですか」
「当たり前だろ。じゃなきゃあいつに雑魚とか言ってねえわ」
『死ねえ!『マヌーヴル』!』
そう骨の魔術師が唱えた瞬間、その巨大な瓦礫は2人に向かって放たれた。
「・・いくぞ」
それと同時に慎也は竹刀の先端が後ろに向くように向きを変え、竹刀に魔力を込め始める。すると竹刀は白色の光を放った。
『そのまま潰れてしまえ!』
「・・っ!『グランドブレイク』!」
そう武技を唱えると、慎也は竹刀を勢いよく振った。すると竹刀から白色の光線が勢いよく放たれ、飛んできた巨大な瓦礫をぶち壊して、白色の光線はそのまま骨の魔術師へと飛んで行った。
『なに!?』
返されるとは思っていなかった骨の魔術師は躱すのが遅れ、体の半分がその光線に飲まれて消滅する。しかしそれでも絶命までには至らなかった。
『く、くそぉ・・』
「もう1発ぶち込んで・・」
もう1度撃とうと慎也は竹刀に魔力を込める始める。しかし今の一撃で限界が来たのか、竹刀は粉々に崩れてしまった。
「まああれだけの攻撃をすればそうなりますよ」
「はぁ・・鈴川、お前の貸してくれないか?」
「・・壊したら弁償ですよ」
「金ならいくらでも払ってやる」
「壊す前提ですか」
そう言いながら怜は慎也に竹刀を渡す。竹刀を受け取った慎也は再度竹刀に魔力を込め始め、先程と同様の構えをとる。
(この距離から撃っても躱されるだけだな。なら限界まで近づくか!)
今の状態のまま、慎也は骨の魔術師へと走り出した。
『!く、来るな!『マヌーヴル』!』
慎也の接近を阻止しようと、骨の魔術師は周りに落ちている無数の瓦礫を一斉に慎也に放つ。
「遅え遅え!簡単に躱せちまうぜ!」
瓦礫たちを自身の身のこなしだけで回避しながら着実に接近していく慎也。しかしそれでも骨の魔術師の攻撃は止まない。
(瓦礫の数多すぎだろ!剣なしで躱し切るとか無理ゲ)
「っ!やっべ!」
躱すことに集中していて地面に注意を払っておらず、慎也は小さな瓦礫につまづいてしまった。そこにすかさず骨の魔術師は複数の瓦礫を放つ。
『これで終われ!』
(くそ、無理にでも躱せ・・!)
「させませんよ!」
その瞬間、怜が慎也の後ろから小石を豪速球のごとく骨の魔術師に投げ、その小石を骨の魔術師の頭部に命中させて意識を痛みに逸らした。その影響で慎也に向かっていた瓦礫が軌道を変えて慎也の横へと落ちた。
『女ぁ!』
「化け物かよお前!」
「・・褒め言葉としてもらっておきます」
すぐに体勢を立て直した慎也は勢いよく走り出し、タイミングを見計らって骨の魔術師へと飛び上がった。
「この距離なら、躱せねえだろ」
『や、やめろ!『ミュ・・』
「だから遅えんだよお前。『グランドブレイク』!」
壁を貼らせる暇も与えず、慎也は竹刀を振って溜めに溜めた魔力を一気に放出するかのように白色の光線を骨の魔術師に放った。
『クソォォォォ!!』
光線に飲まれた骨の魔術師は、跡形もなく灰と化して消滅した。