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世界渡りの少年  作者: 憧れる妄想
第二世界 第一章 新たな世界へ
130/211

VS悪魔の巨花 慎也の油断




(マジかぁこれ。茎斬ったらどうにかなるかな?)


おそらくリオンズの刺客であろう10m超えの巨大な花を目の前にして、慎也は地面から伸びている茎に狙いを定める。


『ブヴォォォォォ!!』

(っ!いきなりかよ!)


巨花が雄叫びをあげると、地面から大きなつぼみが複数ついた根っこが慎也目掛けて飛び出していく。慎也はそれを咄嗟に躱して巨花から距離を取る。


(なるほど触手系かぁ〜。今思うとそういう系の敵と戦ったことねえな。でも剣でとりあえず斬っとけば・・)

『プギャァ!』

「あ!?」


慎也が悠長に剣を抜いていると、飛び出してきた根っこに付いたつぼみたちが開き、先が尖った手足のついた小花の怪物が根っこから出てくる。


(うそーん、どうすんのこれ?)

『プギャァ!』

「とりあえずこれ以上被害が出ないうちにやりますか!」


向かってきた小花たちの体を慎也は剣で瞬時に真っ二つにし、剣に魔力を込めて巨花に向かって走り出す。するとそれに気付いた巨花が数十本ものつぼみが付いた根っこを全方位に放つ。


『ブヴォォォォ!!』

(何やってんだこいつ?根っこ出すなら俺に直接やればいいのに)


不思議に思いながら慎也は向かってくる根っこや小花たちを斬って行く。


(さーて、あいつまであとちょっとだな。それじゃちゃちゃっと茎斬って終わらし・・)

「うわあああああ!」

「ん!?チッそういうことか!」


突如大きな声がし、慎也は思わずそっちに目を向けると同時に巨花の行動の意図を理解した。慎也の目線の先には、巨花が生み出した小花たちに襲われている逃げ遅れた子供がいた。


(・・行くしかねえか)


慎也は方向転換して子供の助けに向かう。そして小花たちが子供に攻撃を仕掛ける直前のところで小花たちを剣で仕留める。


「大丈夫かお前?」

「う、うん・・」

「お前親は?」

「・・はぐれちゃった」

(マジか。そうなると昨日みたいに親に連れてってもらうこと出来んのか。しかも今回は狼と違って根っこで離れてても攻撃されるからな、ワンチャン目を離すとその隙にやられかねん)

「お、お兄ちゃん?」

「・・はぁ、仕方ねえ。警察が来るまで守ってやるよ」

(今回ばかりは警察に頼らせてもらうぜ)

『プギャァァ!』

「さっそく来たか」


向かってきた小花を慎也は一瞬にして戦闘不能にする。そんな慎也を子供はキラキラした目で見ていた。


「・・お兄ちゃんってさ!」

「ん?」

「なんだか本物のヒーローみたい!」

「はあ?まあたしかにこの構図はヒーローっちゃヒーローだけどさ」

「ねえねえ!もしかして変身とか出来るの!?」

「出来るわけねえだろ・・」


子供の相手をしつつ、向かってくる小花と巨花の根っこを捌く慎也。すると遠くからパトカーのサイレンの音が耳に入る。


「お、やっと来たか」

「パトカー来たよお兄ちゃん!もう安心だね!」

(・・思ったんだけど、こいつ警察にどうにか出来るもんなのか?銃が効かない場合もあるだろうし、ここはやっぱ俺が相手した方がいいのかな)


巨花の相手をどうするか考えている間に、数台のパトカーが慎也たちの後ろや向かい側にやってき、中から銃を持った警察官が出てき、慎也に銃口を向ける。


「動くなそこのサングラスをかけた男!」

「大人しくその剣を地面に置いて子供をこちらに差し出せ!」

(・・まあそうなるか。だが今警察に構ってる暇はないんだよな)

「おいお前、警察官のおじさんたちのところに行けるか?」

「うん!」


元気よく返事すると子供は警察官たちの方に走って行く。しかしその瞬間だった・・


「っ!まずい!」


慎也から子供が離れたところを狙って、巨花の根っこが子供に襲い掛かった。それに気づいた慎也は瞬時に足に魔力を込めて子供の方に行き、根っこと子供の間に入り、そして・・









「・・ぐはっ!」

「お、お兄ちゃん?」


根っこは止まらずにそのまま慎也の脇腹に突き刺さり、慎也は口から吐血した。その光景に警察官たちは少し困惑している様子である。


「だいじょ・・」

「こっち見んな!真っ直ぐ警察の方に行け!」

「!・・う、うん」


慎也の言われた通りに子供は警察官の方に走って行き、無事子供は警察官に保護された。そしてそれを見た警察官たちは向けていた銃を次々と降ろしていく。


「・・私たちは、君のことを味方として見ていいのかね?」

「物分かりがいいじゃねえか。ぐっ・・!」

(くそ、思ったより深いな。すぐに『ヒール』で回復しないとまずいか・・)

『ブヴォォォォォ!!』

「っ!」


怪我をした慎也に追い打ちをかけるように巨花は自身の根っこと小花を仕向ける。


(・・正直今の俺ならこの程度、適当にやっても片付くと思ってたんだがな・・)

「少し、本気でいかせてもらうぜ!」


そう呟いた瞬間、慎也は自身の四肢と剣に魔力を込めて向かってくる根っこと小花たちを捌き、巨花へと近づく。


(傷の痛みは我慢だ!今はとにかくこいつを仕留める!)

『ブヴォォォォォォォ!!!』


雄叫びをあげ、巨花は慎也と警察官に無作為に数え切れないほどの根っこを放った。


「うわあああああ!!」

「ぐああああああ!!」

(見境なしだな・・っとこっちも来るか)


向かってきた根っこを躱し、慎也は着実に巨花との距離を詰める。するとそれを阻止しようと小花たちが一斉に慎也に飛びかかる。


『プギャァァ!!』

「じゃまじゃおらぁ!『スプレッドフレイム』!」


飛んできた小花たちを手から出した炎で焼き払う。


(小花どもくそめんどいな。どうしよ)

『ブヴォォォォォォォ!!』

(・・これで行くか)


巨花の放った数本の根っこ。それを次々と躱し、最後の1本を慎也は躱してそれを足場にして巨花の身長を超えるほどの高さまで飛び上がる。


『ブヴォォォォォォォ!!』

「足場の提供ありがとさん!」


巨花は釣られるように空中の慎也に根っこを放つ。慎也は剣でその根っこの軌道を無理矢理下にずらし、その上を足場にして巨花に近づく。


『プギャァァ!』

(地上にいるより圧倒的に楽だな)


慎也が足場にしてる根っこから小花が次々と出てきて慎也に襲い掛かるが、慎也はそれらを容易く処理していく。


『ブヴォォォォォォォ!!』

(そろそろ決めに行くか!)


向かってきた根っこを捌き、足に力を入れて巨花の茎に急接近する。


『ブヴォォォォォォォ!!』

「もう遅え、これで終わりだ!『岩壊斬』!」


慎也はそう唱えて武技を発動し、茎に剣を勢いよく振る。


「おらああああああああ!!!」


そしてその剣はそのまま巨花の茎を通り切断した。


『ブヴォォォォォォォォォ!!!!』


巨花は断末魔を上げながら切断された上の部位が地面に落ち、根っこごと灰となって消滅した。









「はぁ・・はぁ・・」

(・・やっっっと!終わったぁ!)


息を吐きながら、慎也は剣を鞘に戻して達成感に浸る。しかしそんな時間も警察官たちに囲まれて終わってしまう。


「・・おいおい、マジか」

「今回の騒ぎの鎮静化にはこちらとしても感謝している。しかしこのまま帰ってもらうわけにもいかないんでな。ご同行願おうか?」

「街救ったのにこの仕打ちかよ・・・ちなみに断ったら?」

「愚問だな」


そう言うと警察官の1人が銃口を慎也に向ける。そしてそれに続くように周りの警察官たちも銃を構えた。


(はぁ・・仕方ねえな。ここは・・)


慎也はゆっくりと両手を上げようとする。しかしその手はそのまま上ではなく後ろへと向けられた。


「なにを・・!?」

(・・逃げるか)

「『エアブラスト』」


そう唱えると慎也の手から風で出来た球が後ろの警察官の方に飛んで行き、着弾した瞬間そこから強烈な突風が起こり、近くにいた警察官たちをぶっ飛ばした。


『ぐああああああ!!』

「貴様・・!」

「それじゃあ皆さんさようなら〜!」


そう言って慎也は足に魔力を込めて目にも止まらぬ速さでその場から逃走して行った。


↓↓↓↓移動中↓↓↓↓


「・・ふぅ」

(警察は・・来てないな)


どこかの路地裏まで逃げて来た慎也は警察が追って来てないのを確認するとサングラスを外して脇腹の傷に『ヒール』をかける。


(あ〜疲れた!マジ傷も痛いわ警察めんどいわでくそ疲れたわ〜!)


ここに来るまで、そして今も慎也の頭の中は先程刺された腹の傷の痛みと警察への対応でいっぱいであった。









・・だからこそ、慎也は気付けなかった。


「・・・」


自分がサングラスを"外すところ"を撮られたことに。




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