高レベルな慎也のクラス
「なあなあ慎也!ニュース見たか!?」
「・・ああ見たよ」
昨日のショッピングモールでの一件がニュースになり、朝から学校はそのニュースの話題で持ちきりだ。そして昨日知り合った森塚亮太も慎也にその話題を持ちかけた。
「すげえよなぁ!現実でまさかアニメみたいなことが起こるなんて!」
「・・そうだな」
「俺もアニメの主人公みたいに化けもんぶっ飛ばしてえよ!」
「・・俺は怪我とか怖いからいいや」
「・・なんか元気なくないか?朝に親と喧嘩でもしたか?」
「んなことねえよ。ただの寝不足だ」
(嘘でーす。思った以上にかなり目立っててげんなりしてるだけでーす)
「そうか。夜ふかししてゲームしてたとか?」
「まあそんなところだ」
「はーいみんな席つけー」
平島が来たことによりさっきまで立ち話をしていた生徒たちは次々と席についていく。
「それじゃあ日直ー。昨日は青山やったし、今日は2番のやつ頼む」
「はい!起立!気をつけ!礼!」
『おはようございます!』
(この感じ久しぶりだなぁ)
「はいありがとう。今日から授業だけど、お前ら宿題持ってきてるよなー?」
「やっば俺忘れちまったー!」
「おい何やってんだwちゃんと教科担任の先生に謝るんだぞ」
「平島先生すみません!宿題忘れてしまいました!」
「忘れたの俺のかよ!」
『wwwwww』
(あー平和だ。もうこのままリオンズの幹部だけ来いよ。雑魚どもに街を荒さすなや)
教室の皆が笑っている様子を微笑ましく見る慎也。しかし次の話に行くところで平島の表情が真剣になる。
「さて、話は変わるがお前ら今朝のニュースは見たか?」
「あ、見ましたよー!」
「ショッピングモールのあれですよね!」
「ああ。そのことで警察が昨日からショッピングモールを中心にかなり広範囲で狼の化け物と謎の少年を捜索しているらしい。みんなも目撃したらすぐさま通報してくれ」
(うっわマジか。そんな状況で素顔とかアウトだな。サングラスもらえてよかったわ)
「逮捕に協力してくれたやつには警察からそれなりのお礼があるらしいから、まあ頑張れよー」
「先生は協力するんですかー?」
「めんどくさいからやんねえよ。それじゃあホームルームは終わりだ。次の授業の準備しとけ」
そう言って平島は教室を出て行った。
「・・だってよ慎也」
「いやだってよってなんだよ」
「逮捕に協力したら礼くれるらしいぜ」
(自首しろってかこの野郎)
「そういう面倒事には首を突っ込まん。俺は平穏な日常を過ごすから」
「・・なんか慎也、平島先生に似てるな」
「・・それは俺も自分で思う」
(あの人でなれるなら俺も教師にワンチャンなれるかもな)
「ねえ〜賢斗!もし変な化け物が襲ってきたら私のこと守ってくれる〜?」
「ああもちろんだよ花乃さん」
(あ?なんだあれ?)
声のした方を見ると、そこには身だしなみがキチンとした金髪のイケメンと、そのイケメンに明らかに好意を持って話しかける黒髪ツインテールの美少女がいた。そしてそれだけでなく、その賢斗と呼ばれたイケメンを中心に教室の女子ほぼ全員による人だかりが出来ていた。
「ねえねえ私は〜?」
「もちろん君も守るよ」
「私は私は!?」
「ここにいる人はみんな僕が守るよ。なんせこれからの学校生活を一緒に過ごす大切な友達だしね」
『きゃああああ!』
(・・なんだあれ?)
「うーわまたやってるよ篠宮の野郎」
「なあ・・・亮太?あれってなんなんだ?」
(一瞬名前が出てこなかったのは内緒)
「あー慎也初めてだったな。あれは所謂ハーレム、中心にいる男は篠宮家の御曹司、篠宮賢斗だ。かなり金持ちらしいし、全国の誰もが認める超絶イケメンのクソ野郎だ」
(金持ちでイケメンって完璧やん。てかこいつ今さりげなく馬鹿にしたな)
「そんで今篠宮の1番近くにいるのが伊村花乃で、頭も良ければ運動もできるし、何なら顔はくそ美人。まさに才色兼備の奴だ。入学当初はみんなあいつを狙ったんだが、今や篠宮に落とされちまって、凡人には手が届かなくなっちまった」
「へぇ〜。じゃああの2人は付き合ってんのか?」
「付き合ってはねえ。というか篠宮にその気がねえんだ」
「は?」
「あいつはハーレムを作って俺たち男に自慢したいだけなんだよ」
「タチ悪いなそれは」
「だろ?・・っともうすぐ授業だな。準備しねえと」
「それもそうだな」
(・・篠宮賢斗に伊村花乃か。まあたぶん関わんねえだろ)
そう思い、2人から視線を外して慎也は授業の準備を始めた。
「・・や・きろ!」
(・・んあ?)
「慎也起きろ!もう昼だぞ!」
「・・え、マジか」
授業中に寝てしまったのか、慎也は昼休みに亮太によって起こされた。
「なに授業中寝てんだよ」
「いや、これは眠くなる授業をした国語の教師が悪い」
「その意見が通ったら俺も寝てるわ。とりま食堂行こうぜ、腹減った」
「へぇ〜、ここ食堂あるんだ」
(飯コンビニで買ってきたんだけど、一応食堂がどんな感じか見に行こうかな)
「ここの食堂の飯マジで美味いからな!そこらのコンビニとかじゃ満足できなくなるぜ!」
「ほぉー、そこまで言うなら明日から昼食堂にしようかな」
「そんじゃ早く行こうぜ!」
「へいへい」
↓↓↓↓移動中↓↓↓↓
そうして慎也たちは食堂に到着した。中はかなりの広さで、ざっと見渡す限りでも中は全校生徒がいるのかと勘違いするほどの生徒で埋まっていた。
「うへ〜。相変わらずの人気だな」
(いやエグすぎだろ。どんだけここの飯美味いんだよ)
「それじゃあ俺飯買ってくるから。慎也は席探しといてくれ」
「りょー」
慎也は一旦亮太と別れ、2人分の席を探す。
「ねえ怜さん。よかったら一緒にお昼を・・」
「お断りします」
(お?あれは・・)
すると少し離れた場所で超絶イケメンの篠宮賢斗が、怜という黒髪ロングの美少女をご飯に誘っていた。
(少し聞いてみるか)
「そう言わずに、ね?1人よりみんなで食べた方がきっと楽しいし」
「たしかにそうかもしれませんね」
「でしょ?だから・・」
「ですが、少なくとも私はあなたとお昼を一緒にするよりかは1人で食べた方がマシです」
(お、おお。ガンガンいくじゃんあの女子。篠宮が可哀想に思えてきた)
「それに、私が提示したあの"条件"、まさか忘れたとは言わせませんよ」
(ん?条件?)
「そ、それは・・」
「それでは失礼します」
そう言って怜という美少女は篠宮賢斗から離れて行き、慎也の方へと歩いてきた。
(あ、こっち来た。道開けるか)
そう思って慎也は体を横にずらすが、怜は慎也の顔を視界に入れた瞬間、その場に立ち止まって慎也の顔を凝視し始めた。
「んー?」
(え、ちょ、何?)
「えーっと、何か?」
「・・いえなんでもありません。気のせいでした」
そう言って怜は立ち去って行った。そしてそれと入れ違うように、亮太が慎也の元にやってくる。
「なんだ慎也?あの鈴川怜になんかしたのか?」
(鈴川怜って今のか)
「いや何も。てかあいつ凄いな、イケメンの篠宮の誘い断るとか」
「まあこの学校で唯一篠宮に落ちなかった女だからな」
「へぇ〜。でも篠宮ほどの優良物件は他にないと思うんだが」
「いやそれがな、鈴川には顔とか家柄は眼中にないんだ」
「じゃあどうやって彼氏とか決めんの?もしかしてずっと1人でいるとか?」
「そうでもない。鈴川ってほら、結構可愛いだろ?だから男はこぞって怜に行ったんだが、鈴川は誰1人として相手にしなかった」
「でも彼氏に興味がないわけじゃないんだろ?」
「ああ。だからしつこく迫ってくる男たちに鈴川はある条件を提示したんだ」
(条件ってさっきもそんなこと・・)
「その条件ってのが、"『分野を問わず、自分と1対1で勝負して1勝すること』"。これが条件だ」
「はぁ?それなら自分の得意分野で挑めば楽勝じゃん」
「みんな最初はそう思ったよ。だが鈴川はあらゆる分野で天才だったんだ。スポーツ、勉強、娯楽まで、誰も勝てなかったんだ」
(マジ?ゲームもか)
「俺もサッカー得意だから挑んだんだけど、全く歯が立たなかったぜ。才能は俺あるんだけどな・・」
(・・そういや平島先生がサッカーうまい奴がいるって言ってたけど、こいつのことだったか)
「まあそんなわけで、鈴川も無理、他の女子は全員篠宮だからこの学校で彼女は諦めとけ。いい加減飯持ってるの疲れたからとっとと飯食おうぜ」
「そうだな」
そう言って2人は昼食を食べて昼休みを終えた。