慎也のこれから
「ごちそうさーん」
(やっぱスパゲティはうめえわ)
外が暗くなるまで買い物をして帰宅した慎也は、コンビニで買った弁当を食していた。
(さーてゴミ袋ゴミ袋〜)
スーパーの袋からゴミ袋を取り出した慎也は食べ終えた弁当の入れ物をゴミ袋に入れ、何気なくテレビをつける。
(この世界のテレビってアニメとかやってんのかな。バラエティとかは興味ねえしいいや)
テレビの番組表を開いてそれを凝視慎也だったが、気になったものがなかったのかテレビを消し、元々リビングに置いてあったソファに寝っ転がる。
「・・・スマホ弄りてえ」
今の現代社会、必須とも言える道具スマホ。慎也も元いた世界ではそれでゲームをやったり動画を見たりと暇な時は常にスマホを弄っていた。しかしこの世界は第一の世界と違い、スマホ代わりに暇を潰すものがないため、自然と娯楽を求めてしまう。
(ルキエスさんに頼んだら貰えねえかな・・・でもここまで俺をサポートしてくれたんだし、さすがにわがままは言っちゃいけねえよなぁ)
ため息をつくと慎也はソファから立ち上がり、リビングを出て風呂場へと向かった。
(風呂入って寝よ。やることねえし)
その後は何事もなく、慎也は風呂を終えて就寝した。そしてこれで第二の世界での初日が終わった。
(・・・またここかい)
目覚めると慎也はまた白い何もない空間へと来ていた。そしてその空間にはもちろん、今慎也がいる世界の神であるルキエスがいた。
「やっほー。急に呼び出してごめんねー」
「そういやまだ伝えることがあるって言ってましたね」
「そーそれ。ただ本題に入る前に渡す物があるんだ。ほいっ」
そう言うとルキエスは長方形の薄い板のような物を投げる。慎也は咄嗟にそれをキャッチし、その物の正体を見ると目を見開いて驚いた。
「ルキエスさんこれって!?」
「ああ、スマホだよ。アティスに聞いたところ、僕と彼女の世界にはそれが必須レベルって言ってたからね。あ、ちなみにそれ僕の世界の最新型ね」
「ありがとうございます!」
(めちゃ助かるわぁーこれ!)
「あとそれ充電は無限だからね」
(さりげなく凄いこと言うなぁこの人。あ、そもそも人じゃなかったわ)
「それじゃあ本題に入ろうか」
「あ、はーい」
慎也はスマホをポケットにしまい、ルキエスの方に向き直る。
「それじゃあまず、君の元いた世界とメリエヌスの世界の話をしようか」
「というと?」
「結論から言うと、今2つの世界の時間軸を遅らせている」
「え?何故?」
「君が他の世界に滞在してる間も他の世界は動いてるからね。君の知らないところで大きな変化があると君も戸惑うだろ?だから変化は最小限にと思ったらしい、アティスが」
「あー・・」
(なるほどそれがあんのか。たしかにそれは助かるな)
「ちなみに遅らせたってどのくらいなんですか?」
「んー、ざっと君が他の世界で1ヶ月過ごすにつき1日ってところかな」
(わーおすっごい遅らせてる)
「それじゃあ世界についてはこの辺にしといて、次にいこう」
「へい」
「今話した通り、君の知らないところで仲間や友達が過度な成長をすることはない。しかしだからと言って君が何も成長しなくていいわけじゃない」
「それはまあごもっともです」
(・・・なんか嫌な予感が)
慎也の面倒事センサーがビンビンに反応しているが構わずルキエスは続ける。
「そこで、だ。君にはね・・
"学校に通って"学力をつけてもらう!」
「・・・は?」
一瞬ルキエスの言っていることが理解できなかった慎也。それでもルキエスは構わず学校について説明する。
「名前は大須賀中学校なんだけど、君の家から徒歩10分のところにあるから場所はすぐにわかるはずだよ」
「・・・」
「それから・・ん?どうかしたかい?」
「・・1つよろしいですか?」
「いいよ全然」
「なんで他の世界に来てまで学校に通わないといけないんですか?」
「君のことだから、将来のこととか考えて勉強!とかしないでしょ」
「そ、それは・・」
「図星だね。ちなみに君がどんなにごねてもこれは決定事項だから」
「えぇ〜!」
「1週間後、君は大須賀中学校の1年生の転校生として行くことになってる。いろいろあると思うけど頑張って」
そう言うとルキエスは姿を消し、それと同時に白い空間が消滅していき慎也は意識を失った。
(・・・朝か)
外からの日差しで目を覚ました慎也。一瞬あのルキエスとの会話を夢だと思いたかった慎也だが、ポケットの中のスマホにあれは現実だということを思い知らされる。
(・・今何時かな)
おもむろに慎也はスマホのホーム画面を開く。画面には7時と出ており、その下に8月24日とも出ていた。
(1週間後って夏休み明け初日かよ。なんかもういろいろとめんどくせえ)
慎也はスマホをしまい、ため息をついて気だるそうに寝室を出て行った。