2日目 リア編
「それじゃあ慎也君!次の者はこの噴水に来るから待っているがいい!」
「はーい」
レイルの番が終わり、レイルと別れた慎也は待ち合わせ場所と伝えられた噴水のベンチに座って次の人の到着を待っていた。
(今日はずっと剣振ってたから疲れたな。まあディードさんはともかくレイルさんとの時間は結構有意義だったし文句無いんだけど)
そんなこんな慎也が噴水に来てから数分経つと、慌てた様子でリアが慎也のところに向かってくる。
「すみません待たせてしまって!」
(次はリアか)
「大丈夫だぞー。そんな待ってねえから」
「それならよかったです」
「で、リアは俺と何すんだ?」
「そうですね・・・特に決めてないですね」
「はぁ?」
「普通にどこか行くっていうのでもいいんですが、それだけだおなんだか味気ないっていうか・・」
「まあ俺は疲れなければ何でもいいんだが」
「うーん・・・そういえば慎也さんって、全然自分のこと話しませんよね?」
「そうか?」
「そうですよ!例えば、趣味に好きな物や嫌いな物、あとは元いた世界にいた時のこととか、聞いたことありません!」
「マジか。じゃあよかったら今日はお前の質問になんでも答えてやるよ」
「ほんとですか!?なら慎也さんの異性のタイプとか・・」
「やっぱなんでもってのは無しで、答えられる範囲で答える」
「逃げましたね」
「なんとでも言うがいい」
「まあいいです。それなら・・」
そこからリアからの質問責めが始まった。
「慎也の好きな食べ物ってなんですか?」
「特にこれといったものはないな。甘い物だったら何でもいける。あとは焼きそばっていう俺の世界ある食べ物だな」
「へぇ〜。それじゃあ逆に嫌いな物は?」
「野菜が無理。レストランみたいにちゃんと味付けされたやつがギリいけるレベル」
「まあたしかにレストランとかで出されるサラダって美味しいですもんね」
(まあコンビニ弁当についてる野菜は味関係無しに残すんだけどね)
「それじゃあ次は慎也のいた世界について教えてください!」
「教えるっつっても何から話せばいいんだ?」
「ほら、例えばこの世界との違いとか!」
「違いか。まずこの世界特有の魔物や魔法は無いな」
「魔物がいないんですか?てことは結構平和な感じですか?」
「いや、俺の世界は運が良いやつじゃない限り頭が良くないと金があまり稼げなくてな、そのせいで金目的の犯罪がかなり起こってるんだ」
「え!?そうなんですか!?」
「あとは他人の金を言葉巧みに騙し取る詐欺師やら、他人のことを恨んで殺しちゃうとか、言うほど俺の世界も平和じゃないぞ」
「なんか慎也さんの世界も大変なんですね」
(ほんと大変だよ・・・学校の宿題とか)
「それで慎也さんの周りとか大丈夫だったんですか?」
「特に何もなかったぞ。友達もいたし、家もどこにでもあるような普通の家庭だったし」
「へぇ〜」
(ただ小学生の時にいろいろとやっちゃって、かなり面倒なことになったんだけどね)
自身の苦い思い出を思い出す慎也。するとリアは今度は慎也の身の回りについての質問をし始める。
「慎也さんの両親ってどんな方なんですか?」
「どんなか・・・母さんは家事は全部できるし、俺が誤ったことしたらちゃんと叱ってくれるし、俺が何か成し遂げればちゃんと欲しいもん買ってくれるから、正直母さんが親で良かったと思ってるよ」
「いいお母さんですね!お父さんの方は?」
「父さんもいい人だぞ。ちゃんと俺たちのために仕事は頑張ってくれるし、休みの日は俺たちのために時間作ってくれたりで好きなまである」
(ほんとこんな出来た夫婦の下になんで俺が生まれたんだろ)
「普通すぎて逆にすごい家庭ですね。お友達はどうだったんですか?」
「友達は2人なんだが、1人は妹離れが出来ない同い年のシスコン男で、もう1人は普通の同い年の女だな」
「なんか1人変な人いませんでした?」
「だよな、シスコンは普通じゃないよな」
(でもそれあいつに言うと『シスコン界隈では普通だ』、とか意味わからんこと言うんだよな)
「それにしても、なんだか羨ましいです」
「羨ましい?」
「はい。その人たちは私たちより長く慎也さんといれたってことですよね。それがちょっと羨ましいんです」
「そ、そうか」
(ちょっとドキッちゃったわ。やっぱ思春期ともなるとそういう発言には敏感だな)
「それはそうと、質問は終わりか?」
「・・・そうですね。聞きたいことはとくにもう」
「それじゃあ夜飯食いに行こうぜ」
「え!?」
慎也からの突然の誘いに驚くと共に戸惑うリア。
「ん?どしたそんな驚いて?」
「いつも自分からは滅多に誘わない慎也さんが急に言ってくるもんですから、つい」
「あーたしかに。腹減ったから無意識に誘ってちゃったわ。でもお前といてまだ1時間もしてねえのにここではいバイバイは流石にやだろ?」
「まあ、そうですね」
「そんじゃさっさと行こうぜ」
そう言って飲食店を探しに歩き出した慎也。それをリアは慌てて追いかけて行った。そしてその後、2人は夜食を終えてブラブラと街中を歩いて時間を潰していた。
「・・そろそろ4時間経つな」
「あ・・」
最終的に元いた噴水に戻っていた2人。慎也のその言葉で先程まで慎也といれて明るかったリアの表情は一変して暗くなってしまう。
「もうお別れですか」
「今日は、だろ?それに俺がこの世界から旅立っても一生会えないとは限らねえんだし、そんな気を落とすなよ」
「たしかにそうですけど・・」
「・・・はぁ仕方ねえな。宿までは一緒に行こうぜ。それで今日は終わりだ」
「!・・ありがとうございます」
そして2人は慎也行きつけの宿に向かって歩き出した。その間リアはずっと何かを考え込んでおり、それに気を遣って慎也は話しかけずに、結局会話のないまま宿についてしまった。
(・・ついちゃったな)
「つき、ましたね」
「・・・リア」
「はい?」
「お前との時間もそうだったが、今日一日も個人的にかなり楽しめたぜ。だからよ、俺が戻ってきたらまた誘ってくれよ」
(自分で言ってて恥ずかしい!)
「!」
「そ、それじゃあ俺はそろそろに宿に・・!」
あまりの恥ずかしさに宿に入ろうと扉に手をかけた。
「っ!慎也さん!」
「え、なにリ・・」
そこで慌ててリアに斗呼び止められ、慎也はリアの方に振り返る。するとその瞬間・・・
慎也の右頬に柔らかい何かが触れた。
「・・え」
一瞬何が起こったのかわからずフリーズした慎也はすぐさま正気に戻りリアの方を見るた。
「こ、これが私の気持ちです!世界を救って戻ってきた時にお返事を聞かせてください!私、ずっと待ってますから!」
そう言い放ち、リアは赤面の顔を手で覆い隠しながらその場から走り去って行った。
「・・・マジか」
あまりに衝撃的な出来事に慎也の脳は処理しきれず、その場でショートしてしまい立ち尽くしていた。
こうして慎也はリアとの時間を終え、それと同時に2日目も終わってしまい残り1日となってしまった。