1日目 エリシア編
「それで単刀直入に聞きますが、エリシアさんは俺と何をするんですか?」
「そうですね、行ってからのお楽しみというのは・・」
「無理です。今日は散々な目に遭いましたから」
今日というたった1日で慎也はいろんなことがありすぎてかなり疲弊していたため、キツいお願いは避けたがっていた。
「アイクさんから聞きましたが、インモータルバードと戦ったようですね」
「そうですよ!しかもそのあとミリユさんの家で変なクッキー食わされるわでもう身も心もボロボロなんですよ!」
「大変だったんですね。でもご安心を、私はそんなハードなことはさせませんから」
(エリシアさんが言っても信用ならないんだよな)
「それで結局なにするんですか?」
「全く慎也さんはせっかちですね。まあ仕方ないので教えてあげますよ」
(これでくそやばいやつだったら逃げてやる)
「慎也さん、私と"星を見に行きませんか?"」
「・・・え?」
日も落ちていき辺りが暗くなってきている草原、その中を慎也とエリシアは横並びに歩いていた。
「それにしても急に星を見に行きたいだなんて、なんかありました?」
「いえ、とくになにもありませんよ。ただ私も1人の女性ですから、男の人と一緒に星を見るっていうロマンチックなことをしてみたかったんですよ」
「そうなんですか」
(女ってみんなそういうことしたいのか?俺にはちょっとわからね)
「それでエリシアさん」
「はい?」
「俺らって今どこに向かってるんですか?」
「ここから少し先にある小さな丘ですよ。そこなら山などの邪魔なく星が見られるって聞いたので」
「へぇ〜」
(この平原結構歩いてんだけどな、そんなところあるんだ)
「ところで慎也さん」
「はい?」
「そろそろ1日目の締めに入るところですが、今日一日どうでしたか?」
「そうですね・・」
慎也は今日のことを思い返す。アイクとのクエスト、ミリユの家でのクッキー、2つとも慎也の身に危険が生じるほどの出来事であった。しかし・・
「・・・なんやかんやありましたが、それでも2人と過ごせて良かったと思いました」
「それならよかったです」
「というか急にどうしたんですか?そんな質問して」
「ただ私たちのやったことで慎也さんが不快な思いをしてないか心配になっただけですよ。でもその様子なら安心ですね」
「そんな心配にならなくても、あまりにも酷いことをしない限りは大丈夫ですよ」
「それなら安心です・・・・あ、見えてきましたよ!」
エリシアの指した先には周りの地面より少し高い小さな丘があり、その周りにはエリシアの情報通り山や森などの遮蔽物がなかった。
「たしかにあそこならよく空が見えそうですね」
(でもわざわざ丘に行く必要ある?エリシアさんなりのこだわりとか?)
「私のこだわりですよ」
「あ、また読んだ」
「ただ草原に立って上を見上げるだけじゃつまんないじゃないですか。なので丘など周りとちょっと違った場所に座って見てみたかったんです「
(まあたしかに一理あるな。それに男女2人が草原に棒立ちで星を見るとかシュールだし)
「ほら慎也さん、早く行きましょう」
「へーい」
その後丘に着いた2人は、エリシアがどこからか出した小さなマットに座って空を眺めていた。
「ところで慎也さん。もし流れ星が流れたら何かお願いしたいことはありますか?」
「願い事ですか?んー・・」
(世界に攻めてきてる奴ら一掃してほしいとかダメかな?そしたら俺の仕事無くなるんだけど)
「慎也さん何か楽しようとしてませんか?」
「ソンナワケナイジャナイデスカ」
「かたことで否定されても説得力ありませんよ」
「そう言うエリシアさんの願いは何なんですか?」
「そうですね・・・慎也さんのお嫁さんとか?」
(・・本当にそうだったらよかったと思っている自分がいることが否めない)
「まあ冗談はさておき、私の願いは今の皆さんとこれからも一緒にいることですね」
「!」
「正直私、バルシムに少し感謝してるんです」
「バルシムに?」
「慎也と私が出会うきっかけをくれ、そして慎也を通して皆さんと出会うきっかけをくれました。今回みたいな世界への襲撃がなければ本来出会うはずのない私たちを出会わせてくれました」
(・・・たしかに、俺たちがこうして今ここにいるのはバルシムが襲撃してきたからなんだよな。あ、そういえば・・)
「エリシアさん、俺と最初会った時に俺があの"ギルドいるって聞いた"って言ってましたよね?それって誰から聞いたんですか?」
「あーそれですか。実はそれ知り合いの占い師の方から聞いたんですよ」
「へぇ〜」
(占いか。俺も時間があったらエリシアさん通して占ってほしかったな)
「あ、慎也さん見てください!」
「はいはいどうしました・か・・」
エリシアが声を上げて指した空、それを見た慎也は驚きのあまり声を失ってしまった。
(・・・マジかよ。今日の悪運が幸運になって帰ってきやがった)
慎也たちの目の前に広がる綺麗な満天の星空、しかしそれはただの星ではなく、どこかへと空を流れる星であった。
(流星群!アニメ以外では初めて見るわ)
「・・綺麗ですね、慎也さん」
「はい。まさか流星群が見れるとは思いませんでしたよ」
「もしかしたら今お願いしたら叶う確率が上がるかもしれませんよ?」
「それじゃあやってみま・・・ってもうやってるし」
エリシアは流星群に向けてお祈りをするように手を合わせて目を閉じる。それを見た慎也もエリシアと同じように手を合わせ、目を閉じて願い事を心の中で呟く。
(俺の願い事か。そうだなぁ、強いて言うなら・・・
俺を含む俺の周りの人が幸せになりますように)
そばにいるエリシアはもちろん、ここにはいない仲間たち、そして別の世界にいる友人を大切に思う慎也だからこそ、その者たちと自分の幸せを願うのであった。
「・・・終わりましたか?慎也さん」
「はい。しっかりお願いしましたよ」
「それではそろそろ帰りましょうか。時間も時間ですし」
「はーい」
こうして慎也たちは満天の星空の下、街へと戻るへと戻るのであった。
そして長かった1日目が終わりを迎えた。