1日目 ミリユ編
言い訳タイム入りまーす!最近出たモンハンの新作が楽しすぎて書くのを忘れてました!
あの後、昼食を取りアイクと別れた慎也とミリユは特に目的もなく街をぶらぶらと歩いていた。
「・・・で、何かやりたいことは思いつきました?」
「んー、残念ながら何も」
「よく何も考えずにこれに賛成しましたね」
「最初は何かすぐに思いつくと思ってたんですが、案外思いつかないものですね」
「はぁ・・」
(まあたまにはゆっくりと街を見て回るのもいいかもな)
「あ、そうだ慎也さん」
「はいはいどしました?」
「"私の家"に来ませんか?」
「・・・すみません、よく聞こえなかったのでもう1回お願いします」
「私の家に来ませんか?」
「?????」
突然の突拍子もない誘いに、頭の中が?マークでいっぱいになりながらミリユの方を見る。
「え、急にどうしたんですか?」
「実は時々家族に慎也さんの話をするんですけど、その度に親が一度会ってみたいと言ってるのを思い出して」
「なるほど?」
「それで今特にやることもないですし、よかったらと思いまして」
「全然いいですよ。このままあと3時間ちょっと過ごすのも退屈ですし」
「それじゃあ案内しますね」
そう言ってミリユは慎也を連れて自身の家へと向かった。
「ただいまー!」
「お邪魔しまーす」
家に着いた2人はそう言って入って行くが、留守なのか返事は返ってこなかった。
「あれ、おかしいな。この時間はいると思ったんだけど。とりあえずお茶淹れるので慎也さんはそこに座って待っててください」
「はーい」
ミリユがキッチンへお茶を淹れに行っている間に、慎也は側にあった椅子に座り家の中を見渡す。
(やっぱ女の子って綺麗好きなのかな?めっちゃ壁とか床綺麗なんだけど。いやミリユさんの場合女の子と言うより女性か)
「お待たせしました。はいこれ」
「ありがとうございます」
先程まで歩いていたため疲労が溜まっているのか、お茶を飲んだ後慎也は背もたれにもたれる。
「ふぅー」
「すみません、あんなに歩かせてしまって」
「大丈夫ですよ。たまには運動も大事ですし」
(さっきインモータルバードで動きまくったばっかなんだけどね)
「あ、そうだ。ちょっと待っててくださいね」
そう言うとミリユはキッチンに向かい、引き出しをガサゴソと探ると小さな箱を取り出して慎也の前に置く。
「なんですかこれ?」
「なんか親が近所の方から貰ったお菓子らしいんですけど、私も中身がわからないのでよかったら慎也も食べないかと」
「とりあえず中身見ましょ?変な物だったら困りますし」
「そうですね」
ミリユの了承を得て慎也は箱の蓋を外す。すると中には小さな袋に入った複数のいろいろな色をしたクッキーが入っていた。
「「うわぁ・・」」
(見慣れたやつもあれば食欲の失せるやつもあんな。特に青色とか紫色のやつは絶対食いたくねえ)
「・・とりあえず慎也さん、普通のクッキーから食べていきましょうか」
「賛成です」
2人は異質な色をしたクッキーを残し、茶色系の普通のクッキーを減らしていく。そして残ったのは黒、黄、赤、紫、水色のクッキーである。
「・・残ったこいつらどうしましょうか?」
「食わず嫌いは良くありませんし、ひと口食べてから決めませんか?」
「まあたしかに。そんじゃこの黒いのいただきますね」
(頼むビターチョコみたいな感じであってくれ)
そう願いながら慎也は黒色のクッキーを口にした。するとその瞬間、慎也は顔を青ざめ、苦しそうにしながら口を手で押さえる。
「ミ、ミリユさん!トイレってどこですか?」
「そこの廊下の突き当たりを左に行ったところにある階段の真横ですけど・・」
「ありがとうございます!少し借ります!」
そう言うと慎也はトイレへと全速力で向かって行き、慎也が帰ってきたのはその5分後であった。
「おぉえ気持ちわる!」
「大丈夫ですか?」
「一応全部吐き出したんで大丈夫ですよ。とりあえずこれは処分しましょう」
慎也は目の前に残った黒い悪魔をゴミ箱にぶん投げ、クッキーの箱をミリユに差し出す。
「あとミリユさんも1つでいいんで食べてください。苦しみは平等に受けましょう」
「今のを見た直後に言いますかそれ?」
「ワンチャン当たりがあるかもしれないじゃないですか。てことでね?」
「・・・わかりましたよ。それじゃあこの黄色のをいただきます」
そう言ってミリユは黄色のクッキー口にする。するとミリユは何かに耐えるように目を力強く瞑る。
「ど、どうしました?」
「・・・酸っぱいです、とてつもなく!」
「・・え、もしかしてそれだけですか?」
「それだけです」
(おかしいだろ!なんで俺あんなクソみたいな気分味わったのにミリユさんは酸っぱいだけなんだよ!)
「はぁ・・・お茶いります?」
「はい、お願いします!」
「どぞー」
「ありがとうございます!・・・・・ふぅー助かりました」
「そんじゃもう残りやつらは全部処分しましょう。全部嫌な予感がします」
「えー、さすがにひと口は食べてから処分しましょうよ」
「ミリユさん正気ですか?」
「ほら、この赤いのとか。この世界の赤い果物が使われてるかもしれないじゃないですか」
(・・・果物。果物=甘いもの)
「・・まあ食べる価値はありそうですね」
「でしょう?」
「じゃあ赤いのは俺がいただきますね」
甘いもの好きの慎也はミリユの話を聞いてすぐに赤色のクッキーを口にする。しかし慎也の口の中に広がったのは甘味ではなく・・
「かっっっっら!!!」
強烈な辛味だった。あまりの辛さに慎也は側のお茶を一気に飲み干し、辛さを和らげる。
(何使われてんだよこれ!?一瞬お花畑が見えたわ!)
「大丈夫ですか慎也さん!?」
「大丈夫じゃないです。全然人殺せますよこのクッキー」
「そ、そんなに辛かったんですか?」
「人知を超えた辛さでしたね。てかミリユさんも紫色のやつ食べてくださいよ。俺だけこんな思いするのは不公平です」
「さすがに断れませんねそれは」
ここまでの慎也が味わった苦しみに同調し、渋々ではあるがミリユは紫色のクッキーを手に取り、口に入れる。
「・・・ん?」
明らかに見た目があれなクッキー、しかしそれを口にしたミリユは特に苦しんだ様子はなく、むしろ美味しいと思えることに首を傾げる。
「どうかしましたかミリユさん?」
「・・・普通に美味しいですねこれ」
「え?」
「てっきりすごく不味いと思ってたんですが、普通に美味しいですよ」
「・・この世は理不尽だ。日頃の行いだったら断然俺の方がいいはずなのに」
「ま、まあたまたまかもしれませんし」
「もう最後のこの水色のクッキー、ミリユさんが食べてくださいよ」
「えぇ、私上げられて下げられるの嫌なんですけど。むしろこれが美味しかったら慎也さんが損ですよ?」
「・・・わかりました。ここは公平にジャンケンでいいましょう。これで恨みっこ無しで」
「了解です!」
「いきますよ?せーっの・・」
「「最初はグー!ジャンケン・・・ポン!」」
結果としては慎也がパーでミリユがチョキを出して思いっきり慎也の負けであった。
「・・・」
「はい、どうぞ慎也さん」
「えぇ・・」
「男に二言はないってやつですよ」
「・・・はぁ、食うしかねえか」
渋々慎也は最後の水色のクッキーを口にする。するとその瞬間慎也を強烈な睡魔が襲い、慎也はテーブルに突っ伏して寝てしまった。
「・・・どうしましょうこれ」
「すぅ・・すぅ・・」
寝てしまった慎也をどうしようか考えるミリユ。すると突然、家の玄関からガチャッ、と音が鳴り、玄関が開きミリユに似た女性が入ってくる。
「あら、ミリユ帰ってたの・ね・・」
「あ、お母さん。こ、これはちが・・!」
「娘が誘拐を・・お父さんにどう説明したら」
「私の話を聞いてー!」
それからミリユは母親の誤解を解くべく、30分かけてなんとか事情を説明して難を逃れた。そして慎也が起こされたのはそれから1時間半後であった。
「あーめっちゃ酷い目に遭った」
「すみませんほんとに」
「まあおかげで退屈はせずに過ごせましたけどね」
太陽が落ちかけてき、辺りも少し暗くなってきた頃。ミリユは慎也を1日目の最後の人との待ち合わせ場所に連れて行っていった。
「それで時間的には大丈夫なんですか?」
「全然間に合いますよ。待ち合わせ場所の噴水がそろそろ見えて・・・あ、いましたね」
「え?」
ミリユの言う待ち合わせ場所である噴水の前に、見覚えのある後ろ姿に慎也は猛烈にここからの展開に嫌な予感がした。
「それじゃあ私はこれで。慎也さん頑張ってくださいね」
そう言ってミリユはその場から去って行った。慎也も慎也で意を決して噴水に歩み寄って行く。
「・・・今日の最後はあなたなんですか」
「そうですよ・・・時間ぴったり、慎也さんらしいです」
「それじゃあお手柔らかにお願いします。"エリシア"さん」
「はい!よろしくお願いします、慎也さん!」