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世界渡りの少年  作者: 憧れる妄想
物語は次世界へ
109/211

残された時間




(・・・ついに、この世界ともお別れか)


慎也がこの世界にきた時に目覚めた始まりの場所。平原にポツンっと立った1本の木の下に展開されている魔法陣を目の前に、慎也はこの世界での思い出に浸っていた。


(思えば、この世界には1年もいなかったのにいろいろなことがあったな)


短い期間の中、慎也はいろいろな経験をした。仲間との出会いや、魔物との戦闘。その中には辛いこともあった。しかし慎也はそれを乗り越えて今こうして立っている。


(・・もう思い残すことはない!行くぞ、次の世界に!)


その決意を胸に、慎也は魔法陣へと歩み出した。











これはバルシムとの戦いから数日経ったところまで遡る。


「「うおりゃあああああ!!!」」


慎也たちの生活に平穏が戻り、皆それぞれ羽目を外していた。そんな中慎也はディードに腕相撲を挑まれ、今現在ギャラリーに囲まれながら2人はギルド内で全力でぶつかり合っていた。


(くっそ力強え!俺これ全力でやってんだけど!)

「ひょろっひょろのくせに中々やんじゃねえか!」

「ディードさんは想像通りの馬鹿力ですね!」

(『ブーストアイ』使ってんのにこれとか頭おかしいだろ!)

「ディードそんなガキやっちまえ!」

「おいガキ!ディードに赤っ恥かかしてやれー!」


2人の戦いが激しくなるにつれてギャラリーたちの熱気も増していき、皆の視線は2人以外のものを捉えていなかった。だからこそ誰も気づかなかったのだろう、テーブルにヒビが入っていたことに。


バキッ!


『・・・あ』


横長のテーブルが真っ二つに割れた瞬間、皆が揃ってそう声を漏らす。どうやらテーブルは2人のパワーに耐えれなかったらしい。


「すぅー・・・逃げ」

「逃さねえよ?」


ディードの手を離して逃げようとした慎也だったが、いつの間にか後ろにいたハーツに行手を阻まれる。


「お前らが次に取る行動はわかってるな?」

「わ、わかんねえなぁ〜」

「そうか、なら教えてやるよ。このテーブルの弁償だよ!1人銀貨10枚!さっさと出しやがれ!」

「は、はーい」


ハーツに怒鳴られ大人しく2人は懐から言われた通りに銀貨を出してハーツに渡す。


「ったくお前らは。だがそろそろギルドの机も買い替えた方がいいかもなぁ」

(まあここの机結構傷とかついてるしね)

「チッ、慎也!この決着はまた今度だ!」

「やるとしても今度は床でやりましょうね。流石に弁償はもう勘弁ですから」

「おや、3人揃ってなんの話をしているのかな?」


2人の腕相撲が終わりギャラリーたちがいなくなったところにちょうどクエストを終えて帰還してきたであろうレイルがやって来る。


「あ、レイルさん」

「中々この組み合わせは見な・・・って、派手に壊れてるねこのテーブル」

「ああ、これは俺と慎也が腕相撲してぶっ壊したんだ」

「何誇らしげに言ってんだお前」

「なるほど腕相撲ね。なあハーツ君、私たちも一戦・・」

「お前今の話聞いてたか?腕相撲でテーブルぶっ壊れたっつってんのにさらにぶっ壊す気か?」

「私も女だ、そんな簡単に壊すことなんて・・」

「レイルは女というよりゴリラだろ」

「・・ディード君。それ以上喋るなら私は君の首を刎ねることになってしまうよ」

(うわこわっ)

「一応私は乙女なんだから、言葉には気をつけたまえ」

「まあお前まだ22だからな。まだ乙女か」

(へぇ〜、結構若い)

「慎也君?意外そうな顔をするんじゃないよ」

「てっきり30はいってると思ってました」

「おっとぉ?さすがの私でもそれは傷つくよ?」

「そういやレイル、お前クエストに行ってたんだろ?さっさと報告してきたらどうだ?」

「あ、それもそうだね。それじゃあは私はこれで失礼するよ」


そう言うとレイルは受付へと向かって行った。


「そんじゃ俺は仕事に戻るかな」

「俺はさっきの腕相撲が中途半端に終わっちまったせいで力有り余ってるし、魔物にでもぶつけるかな」

「それはいいが、ほどほどにしろよ?」

「わかってらぁ」


レイルに続いてハーツとディードもその場を離れて行った。


「・・さてと」

(俺も適当にクエスト行って今日は宿で寝ようかな)


今日の残りの予定を決めた慎也はさっそく掲示板へ向かおうと歩き出す。


『すみません、失礼します!』

「っ!?」


するとその瞬間、慎也の脳内に謎の声が流れると共に慎也の視界が歪んでいく。


(なんだ、急に!?)

「あれ、慎也じゃ・・って大丈夫か慎也!?」

「慎也さん大丈夫ですか!?」

(やべ、意識も・・)


たまたま通りかかったライルとリアが慌てて声をかけるも、その声は慎也には届かず、慎也は次第に意識を失っていった。









(・・・ここは?)


慎也が目を覚ましたのは、天井が無ければ壁も無いただ白い空間だった。そして慎也にはこの光景に見覚えがあった。


(ここってたしか・・)

「この空間に来るのはこれで2回目ですよね、村上慎也さん」

「!」


後ろから突如声がし、すぐさま慎也は振り返り身構える。するとそこには、ロングヘアーの水色髪で、美しく整った顔をした美女がいた。


「・・えーっとどちら様でしょうか?」

「あ、自己紹介が遅れましたね。私の名前はメリエヌス、先程まで慎也さんがいた世界の管理をしている神です」

「・・・あー思い出しました」


慎也は面識は無いが、手紙による意思疎通(メリエヌスからの一方的な)をしているため、名前だけは知っていた。


「それで用はなんですか?まあ大体予想はつきますが」

「その予想は当たってると思いますよ。ただその前に言わなければことがありますね」


そう言うとメリエヌスは慎也に向けて深々と頭を下げた。


「この度はバルシムの撃破、お疲れ様でした。そして私の世界を救っていただき、ありがとうございました!」

(ここは素直に受け取っとくか)

「ど、どういたしまして・・・ん?てかメリエヌスさん、なんでバルシムの名前を?」

「実はですね、慎也さんたちが戦ってる様子を皆さんと見てたんですよ」

(あーなるほどね。まあそりゃあ自分の世界の命運が懸かった戦いの結果は気になるよな)

「それで次のお話なんですが・・」

(やっぱまだあるよねー)

「慎也さんが全ての世界を救った時の要求、アティスから聞いております」

「!・・やっぱり神の中で共有してますよね」


慎也の要求とは、慎也が元いた世界の神であるアティスと世界を救うと約束した時に要求した報酬である。(内容はまだ未公開)


「単刀直入にいいますが、私は慎也さんに"その力"を与えることに賛成しています」

「いいんですか?下手したら俺が世界をめちゃくちゃにするかもしれないんですよ?」

「慎也さんはそんなことしませんよ。あの戦いだけでなく、いろいろな慎也さんを見てきました。それで私は報酬の件に賛成したんですから」

「・・ん?私"は"というと?」

「やはりアティス以外の皆さんは、"慎也さんがどんな人かわからない以上それには賛成出来ない"、だそうです」

「妥当な判断ですよね。まあ追々世界を救っていく中で信頼を勝ち取りますよ」

「そこは応援しておきます」

(・・さて、この人と話すことといったらあと1つしかねえよな)

「それじゃあ最後にもう1つお話を」

(・・ついにくるか)

「慎也さんに話しておきたいのは、"次の世界"のことです」


次の世界。それは新たな旅の始まりでもあれば、過去との別れでもある。慎也がメリエヌスと今こうして会って1番聞きたかったことだ。


「やっぱり行くんですね。それで出発はいつ頃?」

「それに関してはもう決まっております」

「というと?」









 "3日後"慎也さんが目覚めたあの木の根元に来てください




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