形勢逆転
バ「・・・ふっふっふっふ、はーっはっはっは!」
今の慎也の姿を見て高笑いするバルシム。かつて自分が使っていたスキルが、今こうして目の前の人間に使われている驚きよりも、そのスキルの強さを知っているからこそ、それを使った人間と戦えることへの喜びの方が勝ったのだろう。
バ「『トルネードトラスト』を使えるから、Sランク
のスキルを使えるとはわかっていたが、まさか『
ブーストアイ』とはな!」
慎「お前は今から40年前に自分が捨てたスキルにや
られんだ。覚悟しろよ」
バ「お前がそれを使うと、ますます前の俺に似てムカ
つくぜ。でもまあいい」
バルシムは慎也の方に体を向けて剣を構える。
バ「『ブーストアイ』を使ったんだ、期待してる
ぜ!」
慎「行くぞ!バルシム!」
慎也の言葉と同時に2人がお互いの距離を詰めて剣を振り、2人の剣がぶつかり合う。
レ「エリシア、あれがそうなのか?」
エ「ええ。おそらくあれが『ブーストアイ』でしょ
う。先程よりも格段に強くなっています」
レ「それじゃあ、私たちも負けてられないね。援護は
任せたよエリシア!」
エ「了解です!」
レイルは立ち上がってバルシムと慎也の元に向かう。
バ「おらおら遅えぞ!」
慎「くっ!」
慎(『ブーストアイ』を使ってもこれか!)
バ「もらった!」
慎「やばっ・・!」
エ「横やり失礼するよ!」
バルシムの剣が慎也に当たりそうなったところを、レイルが2人の間に入り防ぐ。
バ「チッ!」
レ「君と違って、慎也君には私のような仲間がいるか
らね!カバーなんて朝飯前だ!」
慎「レイルさん!助かりました!」
レ「慎也君も本領発揮したようだし、こっからはどん
どん押していくよ!」
慎「はい!」
慎也とレイルは交互に剣を振って攻めていく。しかしそれでもバルシムの攻撃速度は負けておらず、むしろ2人の方が防ぐので精一杯だ。
レ「やっぱりそう簡単にはいかないか・・!」
慎(レイルさんと攻めてもダメとかどんだけ強いんだ
よ!!)
レ「!慎也君!バルシムを上に!」
慎「え?・・!わかりました!」
バ「てめえら一体何を・・」
慎「『ハードスラッシュ』!」
レ「『岩壊斬』!」
バ「うおっ!?」
慎也はレイルの意図を察し、レイルと同時にバルシムを斬り上げ、上空に上げる。
レ「エリシア!」
エ「ありがとうございます!『マルチレーザー』!」
バ「・・やるな」
エリシアが魔法を唱えた瞬間、空中のバルシムを15個の黄色の魔法陣が囲み、そこから一斉にバルシム目掛けて黄色のレーザーが放たれる。しかしバルシムは臆さず、全身に魔力を込めて防御する。
慎(どうだ!?)
バ「良い威力だ・・・だが!」
なんとバルシムは、体を大の字に開いて周りに魔力の波動を放ち、魔法陣ごとレーザーを破壊した。
エ「『マルチレーザー』を魔法陣ごと!?」
バ「強度が足りないな。こんな簡単に壊れる程度じゃ
俺には勝てないぜ?」
慎(あれでもダメなのかよ!)
バ「次はこっちの番だ!『スラッシュレイン』!」
慎・レ・エ「「「っ!?」」」
バルシムの放った大きな大きな斬撃が分裂し、無数の斬撃の雨となって3人に襲い掛かる。
慎(ここで止まってたらさっきみたいに『スラッシュ
ストーム』にやられちまう!行くしかない!)
レ「私も行くよ!」
斬撃の雨の中、降ってくる斬撃を捌きながら進んで行く2人。それを止めようとバルシムは次々と『スラッシュレイン』を放っていく。
慎(くそ!数が多すぎる!捌き切れねえ!)
さすがの慎也でも全ての斬撃を捌き切れず、1つの斬撃が慎也に襲い掛かる。
慎「やば・・!」
ハ「『アロードール』、『トラストレイン』!」
するとハーツが無数の矢を操り、慎也に襲い掛かる斬撃ごと降ってくる斬撃を相殺する。
ハ「結構魔力込めたんだけど、それでも相殺か」
慎「ハーツさん!ありがとうございます!」
ハ「お前らだけにいい格好はさせねえよ!もういっち
ょ、『トラストレイン』!」
バ「甘い!『スラッシュストーム』!」
ハーツが無数の矢を放つも、バルシムの放った魔法が矢に触れた瞬間、放たれた斬撃によって全ての矢を斬り裂かれる。そして斬撃はそのまま周りの4人に襲い掛かる。
慎(これぐらいなら余裕で躱せる!)
慎也は向かってくる斬撃を容易に躱しながらバルシムに近づいていき、バルシムに剣を振るう。しかしそれをバルシムは容易く剣でガードする。
バ「おいおい、なんだそのへなちょこな攻撃は?そん
なんじゃ俺は倒せねえぞ?」
慎「チッ!」
デ「ならこの攻撃はどうだ!?『岩壊斬』!」
バルシムに後ろから斧を横に振り攻撃するディード。それをバルシムは後ろに高く飛んで躱した。
デ「くそっ!」
バ「お返しだ!『グランドブレイク』!」
デ「っ!ああもう仕方ねえな!」
慎「っ!?ディードさん!?」
バルシムの放った攻撃を、ディードは慎也を突き飛ばして1人で受ける。
慎(嘘だろおい!?)
バ「これでまずはひと・・」
デ「やられてねえよ!『空裂斬』!」
バ「!」
魔力を全身に込めて耐えたのであろう。バルシムの攻撃を受けても倒れず、ディードは爆煙を斬り払いそれと同時にバルシムに斬撃を放つ。しかしディードの放った斬撃もバルシムは容易に真っ二つに切り裂いた。
慎(この人マジかよ。普通にすご)
バ「今ので倒れなかったのは褒めてやるが、無傷とい
うわけではないだろう?」
デ「残念ながら魔力が切れただけだ。それに魔力も
俺ならすぐに回復できるしな。エリシア!」
エ「わかりました!『フレイムボム』!」
ディードが指示するとエリシアはバルシムではなくディードに魔法を放つ。
バ「自滅する気か?」
デ「んなわけねえだろ。『マジックイーター』!」
ディードがスキルを発動した瞬間、ディードの体が水色のオーラに覆われる。そしてエリシアの放った魔法がその水色のオーラに触れた瞬間、爆発するのではなく、そのオーラに飲み込まれていった。
バ「!・・なるほど。他者の魔法を吸収して自分の魔
力に変えるスキルか」
デ「まあそういうことだ」
慎(結構有能でワロタ。相手が魔法使いとかだったら
ディードさんが絶対勝つじゃん)
デ「さてと、魔力も回復したし、こっからどんどん攻
めてくぜ」
ア「僕たちのことを忘れてもらっちゃあ困るよ!」
そう言ってバルシムに後ろからアイクが槍を突き出すが、それをバルシムは容易に躱し、反撃しようとする。しかしミリユの放った2体の炎の竜に防がれる。
ア「ナイスカバーだよミリユさん」
ミ「相手も相手なんですから慎重にいきましょう
よ!」
ア「ごめんごめん!ここまで強い相手と戦うのはグラ
ドス以来だったからつい舞い上がっちゃって」
バ「俺を相手によそ見とは随分と余裕そうじゃねえ
か!『スラッシュレイン』!」
慎(やべっ!)
バルシムの放った斬撃の雨を的確に捌き、躱す4人。
ア「同じ手は通用しないよ!」
バ「ならこれはどうかな!?」
そう言ってバルシムは剣に魔力を込めて勢いよく振り、衝撃波を放った。突然で反応できなかった4人は勢いよくぶっ飛ばされる。
慎(いった!剣振っただけでこれかよ!)
バ「死ねえ!村上慎也!」
慎「っ!」
慎也に追い打ちをかけるように慎也に斬りかかる。慎也も応戦して剣を振るが、バルシムの力に勝てず手から剣が離れる。
慎「しまっ・・!」
バ「終わりだ!」
ラ「させるかよバーカ!」
慎也の胸に向かってバルシムは剣を突き出すが、2人の間にライルが割り込み自身の剣で防いで慎也を守る。
慎「ライル!」
ラ「言っただろ?慎也は殺させねえって」
バ「ならてめえごと串刺しにしてやるよ!」
ラ「っ!力つっよ!」
リ「任せて!『フレイムボム』!」
ライルが力負けしそうになっていたところにリアがバルシムに魔法を放ち、ダメージは与えられなかったものの、爆発の衝撃でバルシムを2人から引き離す。
ラ「サンキューリア!」
リ「油断禁物だよ!」
バ「チッ、小癪なマネを!」
レ「おっと、ここから私たちのターンだよ!」
バ「っ!」
リアに斬りかかろうしたバルシムだったが横から入ってきたレイルに邪魔をされる。
レ「いくよ!『神速剣』!」
バ「甘い!」
レイルの目にも止まらぬほどの速さの連撃を、バルシムは容易く全て捌いていく。
バ「そんなスピードじゃ俺にはとどかねえよ!」
ア「それじゃあ連携といこうか!『獣滅槍』!」
レ「ナイスだアイク君!」
突然レイルの後ろから現れたアイクの攻撃を咄嗟にバルシムは剣でガードするが、衝撃バルシムは上空に突き飛ばされる。そしてレイルは足に魔力を込めて飛び、瞬時にバルシムの後ろに回る。
レ「みんな今だ!」
バ「っ!」
慎也たちに合図すると同時にレイルはバルシムを皆の方に斬り飛ばす。それを咄嗟にバルシムは体を後ろに向けて剣で防ぐ。
エ「みなさんいきますよ!『エクスプロージョ
ン』!」
デ「喰らいやがれ!『グランドブレイク』!」
ハ「『ドラゴントラスト』!」
ア「『ライトニングスピア』!」
ミ「『ドラゴンフレイム』!」
慎(剣を拾ってる暇はねえ!)
慎「『ドラゴンフレイム』!」
ラ「俺たちもいくぞリア!『スラッシュカッタ
ー』!」
リ「うん!『フレイムボム』!」
皆の攻撃が一点に、バルシムに集中して放たられる。しかしそんな状況でもバルシムは笑っていた。
バ「・・・ふ、まさかここまで楽しめるとはな。なら
そろそろ俺も・・
"本気"を出すか」
そうバルシムが呟いた瞬間、バルシムを中心に全方位に膨大な魔力の波動が放たれ、慎也たちの攻撃が打ち消された。そして空中にいたレイルも衝撃でぶっ飛ばされた。
ラ「なんだよ今の!?」
エ「すごい魔力です!さっきまでとは比べ物になりま
せん!」
慎(一体あいつ何を・・・・っ!?)
ハ「あ、あれは・・!」
皆が目にしたのは、さっきまで持っていた剣とは一回りも二回りも大きな大剣を手に持ち、"黒いオーラ"を纏ったバルシムであった。
バ『『ヘイトオーラ』。さあ、こっからが本番だ』