異世界から来たれし紅青の救世主
ラ「やらせるかあああああ!!!」
そう言いながら1人の少年が慎也を助けようとバルシムに斬りかかる。
慎「ライ、ル・・!」
ラ「慎也は殺させねえよ!慎也は俺たちの仲間なん
だ!こんなところで死なせてたまるか!」
そう言ってライルはバルシムに何度も剣を振るが、攻撃力が足りないのか鎧には傷1つつかない。
バ「言うか迷っていたが、今だから言おう。貴様はこ
いつらの中で1番弱いぞ」
ラ「っ!」
バ「そんなお前が俺に傷なんてつけられると思うか?
無理に決まってんだろ」
ラ「・・・んなことわかってるよ!」
バ「ならそんな無駄な足掻きはやめて・・」
ラ「でもだからって、仲間を見捨てることが出来るか
よ!!」
慎(ライル、お前・・)
バ「そうか、なら!」
バルシムは慎也をライルに投げて剣に魔力を込める。
バ「村上慎也ごとお前もあの世に送ってやる!」
エ「『ライトウォール』!」
突如2人の前に現れた光の壁によって、バルシムの攻撃が防がれた。
バ「チッ!」
エ「私がいる限り、誰も死なせませんよ!」
そう宣言してエリシアは杖に魔力を込める。
バ「ならさっさと本気で俺を倒しにきたらどうだ?ま
だあのスキルを使ってないだろ?」
エ「ええ、もちろんそのつもりですよ。ですが私があ
れを使ったらあなた勝てますかね?」
バ「この前それでやられた奴が何を言ってんだ
か・・」
レ「悪いけど、今回は私もいるんでね!」
そう言ってエリシアの横に立ち、剣を構えるレイル。
バ「・・・なるほど。貴様も中々強いと思っていた
が、まさかその女と同等とはな」
レ「なあエリシア。こうして本気の私たちが共に戦う
なんていつぶりだろうね?」
エ「はっきり覚えてるのは3年前、ハーツさんたちを
助けた時が最後ですね」
レ「そんなにか。私たちって意外と一緒にいないんだ
ね」
エ「まあパーティーとかは組んでませんから」
レ「なら、このひと時をじっくりと味わうとしよう」
バ「お喋りは終わったか?ならさっさとスキルを使
え。そして俺を楽しませろ!」
レ「ならお望み通りに。剣姫の力、見せてやろう!」
エ「あなたのそういうノリはあまり好みませんが、今
回は付き合いますよ。聖女の力、見せてあげま
す!」
レ「『ソードプリンセス』!」
エ「『マジックグロウ』!」
ラ「・・・すまねえな、慎也。俺じゃ力不足だった
な」
バルシムとエリシアたちの戦闘による轟音が鳴り響く中、表情を曇らせてライルはそう口にする。
慎「ライル・・」
ラ「やっぱあの2人異次元だし、そんな2人を同時に
相手してるあいつもやべえよ」
慎「どうしたんだよそんな弱気になって!いつものお 前は・・」
ラ「もっと強気ってか?でもさっきの見ただろ?お前
を助けようとして攻撃しても、あいつには全く効
いてなかったんだぜ?痛感したよ。どんなに頑張
っても俺は通用しないって。それなのにいつもの
調子でいれるわけねえだろ」
慎(ライル、どうして・・・いや、当たり前だよな。
誰でもあんなのを味わったらこうなっちまうのも
無理ない。でも・・)
慎「だからって、戦うのをやめんのか?」
ラ「・・・戦っても足手まといになるだけだろ」
慎「なあライル。お前はさ、何のために今こうして俺
とここにいるんだ?」
ラ「え・・?」
慎「俺が仲間だからか?みんなが戦うからか?」
ラ「・・・半分はそうだ」
慎「なら残り半分を教えてくれ」
ラ「俺は、俺は・・・・家族や、仲間を、守りたいん
だ!」
絞り出すように言い放ったライルの言葉。慎也はそこに嘘偽りがないと感じられるほどの意志が感じた。
慎「立派じゃねえか」
ラ「でも俺じゃ力不足で、誰も守れねえ・・!」
慎「何言ってんだお前。お前は俺を守ってくれたじゃ
ねえか」
ラ「は・・?」
慎「お前がさっきバルシムの気をひいてくれたからエ
リシアさんが動けたんだ。もしお前が動かなかっ
たら今ここに俺はいねえよ」
ラ「慎也・・」
慎「ライル、まだいけるか?」
ラ「・・・ふ、お前こそ、そんな体でいけんのか?」
慎「そこは気合いだ」
ラ「ったくお前は。まあそれも悪くないな」
そう言って立ち上がる2人。その目にはたしかな『バルシムを倒す』という意志が宿っていた。
慎「それじゃあライル、行こうぜ」
ラ「ああ!」
?『行く前に待て、慎也』
慎「!」
今にも駆け出しそうになっていた慎也を呼び止める『ブーストアイ』。
ラ「どうしたんだ慎也?」
慎「・・『ブーストアイ』だ」
ラ「!・・わかった」
慎也の一言で察したのか、ライルは慎也を置いて仲間たちの元へと向かって行った。
ブ『お前とあいつが行ったところで勝てると思ってん
のか?』
慎(厳しいだろうな。レイルさんとエリシアさんが本
気で協力して戦ってもバルシムは余裕そうにして るし、きっとまだ何か隠してんだろ。そんなとこ
ろで俺らが行ったところでな・・)
ブ『じゃあどうすんだ?このまま諦めるか?』
慎(んなわけねえだろ。けどまあちょうどいい。『ブ
ーストアイ』、頼みがあんだ)
ブ『力を貸してくれってか?なら・・』
慎(いや、今回は違う)
ブ『あ?じゃあ何だってんだよ』
慎(『ブーストアイ』。お前の力を・・・"くれない
か"?)
ブ『!・・やっときたか』
今までは借り物だった『ブーストアイ』の力を今回は自分の物にしたいと頼む慎也。
ブ『それは『自分のものになってくれ』っていう解釈
でいいんだな?』
慎
ブ『くく、どれだけお前を待ってたことか』
慎(てことは・・!)
ブ『おっと、待ってたからって無条件で渡すわけには
いかない。今から俺が提示する条件をクリアした
らお前にくれてやるよ』
慎(条件?出来れば今すぐ出来るやつにしてくれ
よ?)
ブ『なーに、内容は単純かつ、簡単だ』
慎(それならよかった。それで条件ってのは・・)
ブ『条件は、"『ブーストアイ』を使ってバルシムを倒
すことだ"。それが出来たらはれて『ブーストア
イ』はお前の物だ』
慎(いや難易度激ムズじゃねえか!)
ブ『"1人"、ならな』
慎(!・・)
ブ『今お前の周りには何がいる?仲間だろ?そいつら
と協力すればバルシムなんて楽勝じゃねえか』
慎(他人事のように・・・・けどまあそうか。あいつ
らがいれば敵無しだな!)
ブ『・・・今のお前は、バルシムに実力で負け、経験
で負け、才能にも負けてる』
慎(そんなに俺をディスりたいのか?)
ブ『だがお前は、今のあいつの持ってない"仲間との
絆"を持っている!』
慎(・・ああ、そうだな)
ブ『Sランクスキルである俺が断言してやろう!お前
が絆を信じる限り、バルシムにも、これから戦う
であろう敵にも、負けはしない!』
慎(!・・ありがとな)
ブ『いけ慎也!健闘を祈ってる』
慎(ああ!)
そして慎也は、『ブーストアイ』に背中を押されるようにバルシムの元へと走り出して行った。
ブ『お前と仲間の絆があいつの"憎しみ"に勝つ瞬間
を、俺に見せてくれ、慎也』
エ「はぁ・・はぁ・・」
バ「どうした?もう終わりか?」
レ「さすがに、強すぎでしょ・・!」
レイルとエリシアが本気で戦ったにも関わらず、バルシムには勝てず、それどころ2人が満身創痍の状態で地面に膝をついていた。
ハ「くそ!『トラストレイン』!」
バ「それはもう効かないってさっき分かっただろ」
ハーツが放った攻撃も虚しく、バルシムの放った魔力の波動で落とされる。
ディ「これなら!『岩壊斬』!」
バ「それも無意味だ!」
ディードの放った渾身の一撃もバルシムは剣で容易に受け、衝撃にも微動だにしない。
ディ「チッ!」
ア・ラ「「うおおおお!!」」
バ「スキル無しの通常攻撃は論外!」
バルシムはディードの斧を跳ね飛ばし、向かってくるアイクとライルを斬りつけてぶっ飛ばす。
ミ「『ドラゴンフレイム』!」
バ「それも見飽きたぜ。『斬連波』」
襲いかかってくる2体の炎の竜もバルシムは斬撃を飛ばして斬り裂き、魔法の発動者であるミリユにもダメージを負わせる。
リ「みんなが・・」
バ「さて、あとはお前だけだ小娘」
リ「こ、来ないで!『フレイムボス』!」
残ったリアに歩み寄って行くバルシム。リアも魔法を何度も撃って対抗するが、それらをバルシムは次々と剣で弾き飛ばしていき、ついにはバルシムの剣が届く距離になってしまう。
リ「あ・・ああ・・」
ラ「リア逃げろ!」
エ「リアさん!」
バ「終わりだ。雑魚なりに頑張った方だぜ、お前は」
そう言ってバルシムはリアに剣を振り下ろした。しかし、剣があと数ミリで触れるというところでバルシムが剣を止める。
慎「そういえばお前もいた・・・っ!?お前それ
は!?」
リ「え・・?」
突然驚いたバルシムの見る方向に目線を合わせるリア。2人の視線の先には・・・
慎「待たせたな、バルシム。これが俺の本気だ」
そこには左目が青に、右目が"紅"に染まった慎也がいた。