一章2『帰宅と開封』
『World Unity Online』を手に入れ、海斗はタワーマンションの最上階にある家へ帰ってきた。
そしてリビングに入るといる筈がない人物がいる。彼女の名は優である……
「おい!何自分のうちですよ感出して『World Unity Online』の開封をしてるんだ!」
「いいじゃない海斗と私の仲なんだからさ!」
「あのなぁ……いつの間にか二階の眺めの良い部屋を占領したのを知ってるんだぞ。あの部屋をどう使おうかずっと考えてたのに……」
この半年近い間にこの駄メイドは俺の家の居候になっていた。
うちにある階段を昇り、廊下を進んで角部屋……一際目立つ窓から東京を一望できる素晴らしい部屋なのだ。この部屋に本棚を置き、素晴らしい東京の夜景を見ながらラノベでも読もうと考えていたのに、依にもよって一番大事にしようとした部屋を占領されたのだ。
ベッドが置かれ、テレビも置かれ、化粧台、お洒落なテーブル、俺の部屋よりもよっぽどお洒落で品があって……
なんだろう考えている間に無性に腹が立ってきた。
そんな感情が顔に出てしまったのだろうか?優はジト目で此方を見てきている。
「何怒った様な顔をしているの?」
「ん?いやなんでもない。てか駄メイドははよ帰れ」
「なんで!私の家を出て行かないと行けないの!」
あぁ……この子やばいよぉ〜俺のうちを私の家とか言っちゃってるよ……最近連泊してるなって思ってたけど、意識がこの家の主人とか思ってないだろうか。
「此処は俺の家だ!駄メイドの家じゃねぇー!」
「器が小さいね!お義母さんから許可は貰ってるの!」
「「……」」
其れから暫くは長い沈黙の時間が流れた。
なんの音すらも聞こえることのない時間。唯一感じられたのは、己の心臓が刻むドクドクというもののみであった。
優はそんな空気に耐えきれなくなってしまったのか、『World Unity Online』を持ち、「今後も住むから!」と言い残し、占領した部屋に行ってしまった。
一瞬何が起こったのか分からず、唖然としてしまったが、気を取り直し海斗は部屋に行った。そして、『World Unity Online』の開封を行った。
説明書によるとプレーする為に行う事は次の三つ。
一 アバターの登録
アバターは現実の容姿に近い形で形成され、体重、身長、そして顔を登録して完成する。(既にアバターがある場合は流用可能)
二 種族設定
各種族によって能力に差がある場合がある。亜人を選んだ場合上位種への進化がある。
人族、猫族、犬族、兎族、狐族、鬼族、竜族、エルフ族のうちから選択。
三 所属設定
自分が所属したい国家の選択。(初回版のみランダムで決定)
海斗は一先ずベッドに寝転がり『World Unity Online』にダイブした。
アバター名を『シュラ』とし、種族は亜人でも良かったが、安易に人族を選択した。
残念ながら初回版だった為、所属国家の選択は出来なかった。
「ふぅ……取り敢えず此処まで出来たな。ん?所属国家は……魔王国なのか。他の国家は支配者が選択されてるのに、魔王国は未だいないのか。親父が『支配者は大変だからなぁ〜作ったこっち側がいうのはなんだが、あんなのやる奴は変態だわ(笑)』とか言っていたから、魔王にだけには選ばれたくないな……まっ最悪リセマラだな」
俺はこれがフラグになっていようとは、思いもしなかった。