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俺が黒の商人と呼ばれるまで  作者: 茄子大根
第二章 入学
32/69

2.5森人族の風習は理解が難しいです

 ラスティ先生との話は、明け方まで続いた。

 この際、一気に気になる事を聞いてしまおうと思ったからだ。

 ルーホール町やスタグ町では何で騒ぎにならなかったのか? とか、本当に巨乳とはいかないまでも普通の大きさの女性はいないのか? とかである。

 

 長話と寝不足で、頭も体もふらふらの状態で部屋に入って眠る。

 そして目覚めると、太陽が高いところに登っていた。

 ちなみに先の質問の答え、一つ目は「人の多い所では隠していたから」で、二つ目は「最高でAAAね」と返ってきた。

 俺は『AAA』サイズがどれほどかは知らないけど、無いに等しいことだけは分かってしまい、気まずさから目を逸らしたのは言うまでもない。


 慌てて飛び起きたところに、ちょうどビルとユーヤ兄が部屋へ入って来た。

「アルにぃおはよう」「む!」

 さわやかに挨拶する二人に俺は、挨拶を返しつつ聞く。

「えっと、今日は移動しないのか?」

 さっきまで寝ていた俺が聞くのも憚られたが、聞かないわけにはいかない。

 昨日の夜の話では、朝早くに集落を出ると言っていたのだから。

「えっと、何だっけ? そうそう、何か集落の偉い人から頼まれたのだって。1日待ってほしいって」

 

 ビルの話を信用しないわけでは無い。

 けど、ビルは細かいこと気にしないタイプだから一応、ユーヤ兄の方を見て確認を取る。

 間違いない様だ。一言だけど。

「そうか、今日は待機か」

「そうだよ。退屈だから、ワーグさんと近くに魔獣狩りに行こうって言っている。アルにぃもどう?」

 精神的に疲れがたまっている俺には、運動が必要だ。

 魔獣狩りは、それにぴったりだ。

 そう考えた俺は、ビルに「俺も行く」と伝えた。


――


「久しぶりだの、ラスティ」

「ええ、ご無沙汰しております。ヘムロック長老」

 アル君達が狩りに出かけているその時、集落の最奥にそびえる巨木の虚の中で、私はホワゴット大森林森人族長老の一人、ヘムロック長老と話をしていた。


「それで、話というのは」

「はい、既に集落の人々のうわさでお聞きだと思いますが、この胸の事です」

 言いながら私は胸を強調する。

 枯れたお爺さんとはいえちょっと恥ずかしい。

 アル君にならいくらでも出来るのに。


「ふむ、昨日皆が騒いでおったが、それは本物なのだな」

「はい、脱いでお見せしましょうか?」

「いやいや、それには及ばん、昨日、孫娘も直に見て騒いでおったからの。にわかに信じられずにな、疑っている訳でないのだ。すまぬ。」

 少しだが頭を下げる長老に私は安堵した。

 本当に見せろって言われたらどうしようかと思っていたから。


「信じられない気持ちは、分かります。私自身、未だ夢ではないかと思う事もありますので」

「そう言ってもらえると助かる。それで、本題なのだが、その誰でも大きくなるのか?」

「申し訳ありませんが、まだ、分かりません。他の人で試したことがありませんので」

「そうなのか。それなら、まずは試してみるしかないの。体に悪影響は?」

「私には、ありませんでしたが、他の人は分かりません」

 次々に放たれる質問に私は真摯に答えていく。

 そして、とうとうこの質問が来た。


「それで、その術を使えるのは、ラスティだけなのか」

「はい、今のところ私だけです」

 ここだけは嘘をつくことにした。

 正直に答えてもアル君の迷惑になるだけだから。

「人に伝えることは可能か? もちろん報酬は出す」

「はい、可能です。ですが、まずどなたかで試してみることが必要かと。ですので、これから私が向かう領都ラークレインで試してみたいと思います」

 この言葉に長老の表情が少し顰められた。

 おそらく集落に残ってほしいのだろう。

 でも私は出ていく。

 アル君について行くって決めているから。

 これだけは譲れない。


「もし、早く結果が知りたいのであれば、どなたか随行していただいても構いません。あと、ラークレインで施術の希望者も集めたいですし」

 この提案で、また長老の表情が変わった。

 いや、戻ったというべきか。

 穏やかな笑みに。

 恐らく随行者は、彼の孫娘になるだろう。

 昨日、一番騒いで、私の胸を揉みしだいた少女に。

「出発は、明日早朝だったな。手配しておく」

 その後、報酬について話をして二人の会議は終わった。


――


「よう、アル、昨晩はお楽しみだったようだな、がははは」

 狩りの為に集落を出て人気が無くなったところでワーグさんが放った言葉だ。

 言われた当初、俺には何のことか分からなくって首をかしげていた。

 だが、次にワーグさんが放った、「男になっただろ」という言葉で理解してしまった。


 確かに、昨日は明け方近くまでラスティ先生の部屋にいた。

 しかも豊胸の理術を使えるようになりたいという、要望に応えるためゴソゴソと動いていたことも確かだ。

 その上、ラスティ先生ったら、自分で理術を使いながら出すのだ、「もっと奥」とか「うん、いい感じ」とか色っぽく意味深な言葉を、おかげで俺も成長して大人になりつつある下半身を抑えるのに大変だった。

 その音が聞こえていたのだろうワーグさん、ニヤニヤとこちらを見ている。

 

 だが言おう、俺は清廉潔白だ。

 やらしい事は一切していない。

 ただ、理術を教えていただけだ。

 だから、俺は極めて冷静にワーグさんに答えた。

「ワーグさん、確かに夜中、一緒にいたことは認めます。で、す、が、早合点しないで頂きたい。私こと、アル・クレインは、一切の下心なく、ただ理術をご教授頂いただけでございます」

 これでもかというほど真面目な顔で言った言葉に、ワーグさんはかなり引いていた。


「嘘だろ……、今のラスティと……、巨乳の森人族と一晩一緒で手を出さないなんて……アル、お前本当に男か?」

 心外な言葉だ。

 確かにかなりぐらっと来るものがあるシチュエーションだった。

 だが、それでもそう簡単に手を出したりなどしない。

 たとえ子供が出来難い、故に望まれれば比較的簡単に生殖行為をするという森人族――通称エロフ――を前にして手を出さないという事は、このジアス中の男から甲斐性なしと呼ばれるような行為であったとしてもだ。

 俺の決意は固い……多分。

 だから、これ以上の議論は平行線だと感じ、話を終わらすことにした。


「ふーん、ワーグさんってラスティ先生の事、そんな目で見ていたのですね。ローネさんに報告しないと、ね、ユーヤ兄。」

 効果覿面だった。すごい勢いで俺の口を押えに来るワーグさん。

「何言っている、アル。そんなわけあるか。違うぞ、違うのだぞ、ユーヤも分かっているな、違うからなー!」


 森の中にワーグさんの情けない声が木霊した。

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