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俺が黒の商人と呼ばれるまで  作者: 茄子大根
第二章 入学
31/69

2.4打ち明けてみたら大笑いされてしまいました

 シェールにやり込められた後、子供達だけで集落を見て回った。

 もちろん俺は、夜の事が気になって何も入ってこなかったけど。


 そして、夕食、入浴と着々と時間は進み、寝る段になっていた。が、俺は気が進まないでいる。

 そこに。

「アル兄さん、時間よ!」

 宿の男の子部屋までシェールが呼びに来た。

 俺の行動などお見通しの様子だった。


 その後ろでは、ふんわりパジャマを着たサーヤが、「ガンバ!」とか言いながら両手を胸の前に出し、拳を握っている。

 おかげで、大きく育った胸が余計に強調され、俺の心を揺さぶる。

「ラスティ先生、3つ隣の部屋だから。今お風呂から帰ってきているはずだから急いで」

 俺が、部屋が分からないとか、風呂に行っているとか、言おうとしたらシェールに先を越された。

 ほんと、全部分かるのね。三つ子って怖い。

 それでも未練がましい俺に、先生の部屋を指さすシェール。

 目が早くいけってと物語っている。

 ビルとユーヤ兄も、何のことかわかってないようだけど、邪魔にならないよう部屋の隅で固まっている。

 空気読みすぎだ! とか思うけど、シェールの顔見たら何も言えないのも良く分かる。

 もうどうにでもなれ! と、俺は、部屋を出て行った。



 コンコン。部屋をノックする。

「はーい、どなたー」

「あの、アルです」

「アル君なのー、それなら、入って入って」

 部屋の中から聞こえるラスティ先生の声、とても上機嫌だった。

 対する俺の声は、沈んでいるはずなのに先生は、気にしてないようで、ドアを開けて腕を引っ張られる始末。


 ベッドと棚があるだけの小さい部屋へと連れ込まれた。

 その小さい部屋のベッドに俺は座らされ、隣にはラスティ先生が座った。

 数年前までは、よくあった距離感だ。

 もっと小さい時は膝の上だったけど。


 それでも、俺が成長して本当に恥ずかしくなったのが分かったのだろう、最近はあまりベタベタしたスキンシップを取ってこなくなっていた。

 それが、なぜだか今日は近い。


「どうしたの? アル君。考えこんじゃって」

「いえ、あの、その……」

 俺が、黙り込んでいると不審に思ったのだろう、顔をのぞき込んでくるラスティ先生。

 風呂上がりで少し濡れている髪が揺れハーブの香りが漂う。

 おかげで、余計に何も言えない。


 黙り込む俺に変わってラスティ先生が口を開いた。

「へんな、アル君。……でも、久しぶりね。こうやって二人で同じベッドにいるの。ね、あれって何歳までだったっけ?」

「……え? ああ、一緒に寝ていたのですか。確か、9歳ぐらいまでだと思います」

 さらに緊張が増してきて言いたいことが言えない俺だけど、先生の質問には返事する事が出来た。

 なにせ、9歳だよ。9歳まで一緒に寝ていたのだよ。

 綺麗なお姉さんと。

 忘れるわけがないから。

「そうか。9歳か。だとすると、3年ぶりだね。なんだ、たった3年か。なんだかずーっと昔の気がする。それで、何年一緒に寝ていたのだっけ?」

「ああ、あれは、ビルが暴れて、シェールが寂しがって大変だったころで、4歳なる前ぐらいだったから、6年弱ってところ……」

 と言ったところで、気が付いた。

 ラスティ先生の顔に小悪魔的な笑顔が浮かんでいることに。


「すごいね、アル君。そんな昔の事はっきり覚えているのだね。すごい記憶力。というより4歳にもなってないのにすごい理解力だね~」

 この言葉に、俺の頭は真っ白になった。

 だけどラスティ先生の話は終わらない。

「ねぇ、アル君。私の胸って大きくなったよね」

 小悪魔的な笑顔を深め、今度は俺の腕を取って胸を押し付けてくるラスティ先生。

 俺は何も考えられないまま、先生の話を聞くしかなかった。

「森人族ってね、長寿って言っても成長速度は丘人族と変わらないの。ただ、年を取るのが遅いだけなの。知っているよね。私が教えたものね。だけどね、私凄いのよ、90歳すぎてから胸が成長したのよ。ちょうど、アル君と一緒に寝だしてからね」

 言い切って、俺の腕をぎゅっと抱きしめたラスティ先生、耳元でそっと呟いた。

「それで、アル君の話って何かな」

 ここまで、言われてしらを切る――そんなことは出来るはずもなく。


 俺は、出生の秘密から何から何まで全てを打ち明けた。


「ふ、ふ、ぶぇふぇふぇぶぇふぇふぇ、ぶぇふぇふぇふぇ、ふぇぶぇふぇふぇ」

 この変な音は、ラスティ先生の笑い声だ。宿で大声は迷惑だと思って口を押えているのだろう。おかげで、何とも言えない音が響いている。

「あのー、ラスティ先生。笑いすぎですけど。というより、笑う事なのですか?」

 真面目な話だと思う。別世界から呼ばれて文明の発展に向けて頑張っている話なのだから。

 それでも、ラスティ先生の笑いは止まらない。

「ご、ごめん、ふぇふぇふぇふぇふぇふぇ、ダメ、ふぇふぇふぇふぇふぇふぇ」

 涙まで出して、美人が台無しな感じだ。

 ほんと、どうしたらいいのとか思っていたら10分ぐらいしてようやく治まった。


「はぁー、ごめんなさい。アル君。いや、アルさんって呼んだ方ががいい? いい大人だよね」

「いえ、元のままで」

「そう、それならアル君。改めて、笑ってごめんなさい。いや、何ていうか、実は、君が生まれた時から、何かあると思っていたのよ」

 そしうして、語られたラスティ先生の推察に俺は驚いた。

「当たらずとも遠からずですね。しかし、魂の形ですか。そんなことが分かっていたのなら、俺は、何のためにあんな恥ずかしい思いしていたのか悔やまれます」

 膝の上に座って本読みとか添い寝とか、思い出しただけで恥ずかしくなる。

「いやいや、私はよかったよ。おかげで、胸が大きくなったのだからね」

 そう言って、両腕で胸を持ち上げるラスティ先生。

 止めてください。美女がはしたない。と俺は思ってしまうけど目線はくぎ付けだ。


 中々離れない目線をやっと放して俺は頭を掻いた。

「豊胸理術ですか。本当に思い付きだったのに、村中で騒ぎになるなんて」

 心の底からの本音だった。


 森人族のことは本でも読んだ。当然目の前にいたラスティ先生にも話を聞いた。

 長生きで子供が少ないとは知っていた。

 だけど、スタイルのことなど全く出てこなかった。

 真面目な本ばかりだから当然のことなのかもしれないけど。

 ラスティ先生も意図的に話題を避けていたのかもしれないけど。

 それでもうかつだったのか? と、ため息をつく俺に、ラスティ先生、にやりと口角を上げて語った。

「アル君は、森人族のコンプレックスを甘く見すぎたようね。元の世界は、丘人族だけだったのなら仕方がないかもしれないけど。でも、覚悟してほしい。この豊胸理術は、森人族を根底から変えることになることを」

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