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俺が黒の商人と呼ばれるまで  作者: 茄子大根
第一章 再出発 
27/69

1.27閑話 真龍達の話し合い

 これはアルが仕事見学という名目の元、修行から逃げ出した時のことである。

 ハイヘフンの真龍たちが集まって、夕食を囲んでいた。

 そんな中、一部の真龍は酒を片手に話し込んでいた。


 手に持つ杯を空にした『武』の真龍が口を開いた。

「あの小僧。どこまで行けると考えている?」

「……小僧ではなくて、アル君ね。全く。名前ぐらい覚えてあげなさいな」

 苦笑を浮かべながら口を開いたのは『闘』の真龍だ。

 その『闘』の真龍が続けて話す。

「ま、いいわ。それより、どこまでかって事ね。そおねぇ……達人クラスまで行くのじゃないかしら」

「⁉ やはり、お主もそう思うか」

 身を乗り出さんばかりの『武』の真龍。

 同じ意見だったことを喜んでいるようだった。


「まぁ、ねぇ。なかなかの才能よ。行っても不思議では無いわ」

 ゆっくりグラスを傾けていた『闘』の真龍。

 そこに自らの杯に酒を注いでいた『武』の真龍が再び問う。

「なら、その先は、どうだ?」

「それは、無理ね」

 きっぱり言い切る『闘』の真龍。

 『武』の真龍が「なぜだ」とばかりに見つめる。

 すると。

「簡単な話よ。彼が望んでいないからよ」

 若干の呆れを含んだ言葉が『闘』の真龍から帰る。

 その言葉を聞いた『武』の真龍、グイっと酒をあおり、杯を置き、「そうか……」と寂しげにつぶやいていた。

 

 流れる沈黙。

 だが、すぐに別の声がする。

「あやつ、物作りの才能もあると思うぞ」

 『鍛冶』の真龍だった。

 隣では、『付与』の真龍も杯を片手に、「しかりしかり」と頷いている。

「あら、そっちもなの? そっち方面は好きそうだから達人の先に行きそうね」

 感心しながら返す『闘』の真龍。

 だが、『鍛冶』の真龍は首を横にしていた。

「それは無理だろう。これだけ多くの物に手を出しておるのだから、のう『治癒』の」

 テーブル全体を見渡す『鍛冶』の真龍。

 名を呼ばれた『治癒』の真龍も答える。

「そうねぇ。回復理術も上手になったしねぇ。時空理術も上手よねぇ。サクラ」

「まだまだやけどね。それでも、転移まで使えるようになっとるから、ほとんどの真龍よりは上手やろなぁ」

 辺りを見回しながら答えるサクラに、他の真龍たちは苦笑いだ。


「仕方がないだろう。そもそも、真龍になるような者どもは、理術にしても戦いにしても物作りにしても、他の事柄に興味を抱くことは少ない。これでも皆、情報空間が使えるだけましという物であろう」

 今、口を開いたのは『火』の真龍だ。

 同じく属性魔術の使い手である『水』、『風』、『土』の真龍たちも肯いている。

 同じ気持ちのようだ。

 

「そういう意味で言うと、アル君は将来、凄いことになりそうね。刀だから刀術か、それに体術、いろいろな属性の理術に、鍛冶や付与術まで達人クラスになるのだったら」

 指を折りながら出来る事を数えていく『治癒』の真龍が、驚きを通り越して呆れた顔をしているとことろに長老が口を挟む。

「ふぉふぉふぉ、ここの真龍だけではないぞ。最近では『農』や『木工』にも興味を持っておったから、そのうち師事することになるであろう」

「まだ、増えるのか」

 寂しげな声を出す『武』の真龍。

「あなただって分かっていたでしょう? 元々彼、知識と技術が欲しいって言ったのよ。その中に戦う力は入ってなかった」

 続く『闘』の真龍の言葉に項垂れてしまう。

「……拙者も分かっておる。だが、惜しいではないか。高みへと到達できる可能性がありながら……」

 顔を上げ、酒をあおる『武』の真龍。苦虫を嚙み潰したような顔をしていた。

「はいはい、分かったわよ。呑みましょう。こういう時は呑んで忘れるに限るわ。付き合ってあげるから――」


 真龍たちの宴は翌日、日が沈むころまで続いた。


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