表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

mimicry

作者: 世界最古

仮装の準備はできましたか?

 今日は10月31日、ハロウィンだ。

 「うわぁ……そこら中に仮装してる人おるやん…」

 ドラキュラ、ゾンビ、魔女、アニメのキャラクターなど様々な仮装をした人たちがパーク内のあちこちにいる。

 私、田中ミカは友達の吉野ユキに誘われて大阪某所のテーマパークに来ていた。もちろん私も仮装している。

 はじめは仮装する気は無かったけど、せっかくのハロウィンだから、とユキの姉が昔使っていたのを譲ってくれたので有り難く頂いたのだった。

 JKゾンビというコンセプトらしくて、制服をモデルとしたデザインで、所々破れてたりボタンの糸がほつれたりしている。ブラウスにはベットリと赤い塗料が塗られていて、まるで本物の血みたいだった。凄いクオリティーで着ているとノリノリになる。

 「ミカ~!ボーッとしてたら置いてくでー!」

 前の方でユキが私を待っていた。

 「待って~!今行くー!」

 ユキの仮装はナース服で、私のと同じように赤い塗料が塗られていた。ゾンビナースというコンセプト、らしい。

 「ごめーん、ちょっと皆の仮装が凄すぎて止まってもうた」

 「ここで止まってたら奥行った時動かれへんで…」

 「いや、もう大丈夫。見慣れた」

 「ほんま~?じゃあ…一番怖いエリア行こか!」

 そう言ってユキは先に歩いていった。

 「えぇ…嘘やん…ってちょっと待って~!」

 私は取り残されないように小走りに追いかけた。

 

 奥に進むと、ゾンビ注意!という看板がでかでかと立てられていた。

 ここからはゾンビが襲ってくるらしく、通路の先は悲鳴やらなんやらで騒がしい。

 看板を越えるとすぐ近くに車が停められていて、一人のおじさんがもたれ掛かってぐったりとしていた。

 体調が悪いのかも知れないと思って声をかける。

 「あの~大丈夫ですか?」

 私の声で起きたおじさんは、呻き声をあげて私の脚を掴もうとしてくる!

 「きゃああああああああああ!!ヤバいっ!ユキっ!追いかけて来るーー!!!」

 振り返らずに全力でユキの元へ逃げると、彼女は立ち止まって凄くニヤニヤしていた。

 「あんたアホやな…倒れてるゾンビっぽい人に近づくアホがどこにおんの……ほら、後ろ見てみぃや」

 「え?」

 言われた通りに後ろを見るとさっき私の脚を掴もうとしたおじさんが車の側でニコニコしながらこっちに手を振っていた。

 おじさんはパークのエキストラだったのだ。

 「焦るわ…足掴まれて殺されるかと思った……」

 「めっちゃおもろかったで、ナイスリアクション」

 ユキはそう言って私の肩をポンと叩いた。

 

 さっきは不意打ちでこられたから怖かったんだ。

 なんて思っていたけど、やっぱり知ってても滅茶苦茶怖かった。

 なんせエキストラ達のゾンビのメイクがリアル過ぎる。

 さらに演技力も有るとなるともう本物のゾンビとしか思えない。

 「あれ…ユキは?」

 ワーキャー叫びながら歩いているうちに、ユキとはぐれて一人になってしまったようだ。

 一人になって心細くなるかと思いきや、散々エキストラにビビらされたお陰で、怖いながらもいくらか楽しめるようになっていた。

 その時、ガシャァンと大きな音が鳴って通路に大量のゾンビが流れ込んで来た。

 「ひぃぃぃぃぃぃ!!」

 すんでのところで通路の端で逃げることができた。端にいるとあまり襲われないのだ。

 ふと隣を見ると壁にもたれ掛かってぐったりとしている女性がいる。

 またか……

 「はぁっ……っはぁ………ほんま…エキストラどこにでもおるな………」

 落ち着いてから少しだけ近付いて女性を見ると、体にはナイフが刺さっていて服はナイフを中心に赤くなっている。ぐったりと項垂れている様子は本当に死んでいるみたいだ。

 「相変わらずめっちゃリアルやなぁ」

 だけど、今回は引っ掛からない。入り口でおじさんに引っ掛かっていなければ引っ掛かっていたかもしれないが…

 女性から目を離して通路を見ると、ゾンビの群れは既に遠くへいっていた。

 私はエキストラの女性に気付かれないように、そろ~っとその場を後にした。

 

 ゾンビが襲ってくるエリアから抜けると、ユキが通路の真ん中で仁王立ちしていた。

 「ミカー!遅いわー何してたん?」

 「ごめんごめん、ゾンビの群れ見送ってたら遅なってん」

 「なんじゃそりゃ…まぁ良いわ。最後はパレード見てパーッと騒ご!」

 「そやな~、てか今日それだけのつもりで来てたんやけど……」

 二人でパレードをしているエリアに向かおうとした時、後ろの方で大きな叫び声が聞こえた。

 「ふっ、叫びすぎやろ」

 ユキはそう言ったが、何だか様子がおかしかった。エキストラ達がわらわらとそっちに集まって人だかりが出来ている。

 「ちょっと向こう行ってくるわ」

 そう言って私は早足で今来た道を引き返した。

 「え~パレード行こうや~」

 「ちょっと見たら、すぐ行くから先行ってて!」

 「はよきてな~」

 

 人だかりに近付くにつれてだんだん騒ぎが大きくなってくる。

 「救急車呼んで!」「死んでる!」「警察はまだか?」「早く!」なんて声が聞こえてきた。ただ事じゃない。

 人混みをかき分けて騒ぎの中心に行くと、さっきのエキストラの女性がそのまま状態で壁にもたれ掛かっていた。

 「えっ」

 あのとき私は、またエキストラがいる。リアルだな。なんて思っていたけれど、リアルな演技や衣装ではなく本当に死んでいたのだ。

 道行く人たちの仮装がリアル過ぎて隣で人が死んでいることに全く気付けなかった。第一、ゾンビがそこら中に歩いているこのエリアでは道端で人が死んでいても何ら違和感は無い。

 私はゾッとした。

 もし私が彼女より早くにあの場所に来ていたら殺されていたのは私だったかも知れない…

 

 その日、パークは直ちに封鎖され警察が来場者全員に事情聴取を行った。私たちは事情聴取の後に解放されてそれぞれ家へ帰った。

 事件の日から数日後、今だにあの事件がニュースで流れている。

 

 犯人はまだ捕まっていない。

あるテーマパークのハロウィンのイベントに物申したくて書きました。

あんなん絶対殺人事件起こるやん!

皆さんも殺人犯と行きすぎた仮装には気を付けて。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ