いたずら
「大崎さん、警察が来たんですか?」
「それが・・・アパートの前まで来てるという連絡はあったんですが誰もいないではないかと怒られまして。部屋にいると再三伝えたんですが・・・どこか違うところに行ってるんじゃないかと。」
「えぇ!そんなぁ!警察来ないんですか?ちょっとぉ、やめてよぉ」
大崎さんにつかみかかりそうな飯塚さんが泣きつく。
「そそそそ、そんなことを言われましても!どこの部屋も調べても誰もいないとかなんとか・・・いたずらならやめなさいと怒鳴られる始末で。」
来てるのにいないとは、これ如何に。
さっき飯塚さんはスーパーから帰ってきたと言っていた。その時は何も変わらなかったとも。警察は来てる、でも俺たちが確認できない。どういう状況なんだ?
そこへ104号室の葉月さんが階段から上がってきた。
「おう、おまえら。いいもん見せてやるからオレの部屋に来いよ。」
「なんですかいいものって・・・今それどころじゃないんですけど!」
「なにピリピリしてんだ。ははーん、なんとなく状況が読めたぞ。警察来なくてどうしようもなくなって絶望感漂ってる感じだろ?」
「そうですけど、なんで葉月さん聞いてないのに分かるんです?」
「それの答えがオレの部屋、というか正確にはベランダ側にあるんだよ。1階じゃないと難しいからとりあえず来い。」
ぞろぞろと葉月さんの部屋に向かう。葉月さんの部屋の中は、いうなれば親父の匂いがする。誰しも通る道であろうが気を付けよう笑
「簡単に説明するとだな、ベランダ側から外に出て玄関先に回り込むと森はなくなっていて、いつもの住宅街が道向かいに見える。ついでに警察もいたが、面倒だから追っ払ってやった。」
「なんで警察追っ払っちゃうのよぉ!」
「あん?ねえちゃん、こんな不可解な現象が起こっちまったらこの物件押さえられちゃうじゃねえか!今さら部屋探すのなんか面倒くさいじゃねえか。」
おぉ、いかつい坊主頭のおっさんは頭が回るなぁ。確かにこのまま何もわからないまま警察が介入するとここに住めなくなりそうだ。もう少し調べる必要がある。
「葉月さんの話が正しいのだとしたら、ベランダ側から出れば元に戻れるということなんですよね?」
「おう、そうだ。そしてもう一つ面白いことが分かった!玄関から入ることは普通にできるが、玄関から”出る”と森になるぞ。どうだ!」
とんでもないドヤ顔が腹立つが、これはすごい発見だ。何よりガンガン調べる冒険心に関心する。
一度みんなで体験した方が分かりやすいとのことで、葉月さん家のベランダから外に出る。そこから玄関先に回るが本当に住宅街が見えてきた。さらに玄関から中に入って、もう一度外に出ると森に変化するのも確認できた。
「この森が安全かどうか確認はしたいですね。大崎さん、葉月さん一度男たちだけで確認しにいきませんか?イノシシやらクマやら出たら安心して生活できませんし。」
「おう、そうだな。見に行くか!ちゃんと装備は整えとけよ。」
「わかりました。動ける格好に着替えてきます。」
安全を確保するため、森へ向かうことにした。