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通学路にて  作者: 山猫伯爵
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塀の上の猫

いつも使う道を思い浮かべながら…


6月、日差しは強く暑さを感じるが、外で風にあたっていると体が冷えてしまいそうになる。


中学2年生のヒナタは、エアコンがついたり窓を開けてみたりと忙しい教室でぼんやりと黒板を眺めていた。

今は3時限目の国語の授業でスキンヘッドの教師が漢字の音訓について話している。

そんな中ヒナタが考えているのは、朝に見た1匹の野良猫のことだった。



その野良猫はいつもヒナタが使う通学路の脇の塀でぐったりと寝ていた。

その無気力でふてぶてしい様子にヒナタは少しだけ親近感を抱き、興味を惹かれた。

そこで少しだけ驚かしてやろうと考え、そうっと近づいてみたりしたのだった。

しかしその猫はピクリと反応しただけでそれ以上動くこともなく、つまらなく感じたヒナタはそのまま学校へと向かおうとした。

そのとき少し顔を持ち上げたのであろう猫とヒナタの目があった。

その目はまるで鏡で見た自分自身の目のように感じ、何とも知れない恐ろしさを感じたヒナタは早歩きになりながら学校へと行ったのである。



後になって思い返してみれば大したことでは無いのに、そのときは不思議と恐怖を感じたような気がして何かあっただろうかと考えていたのだ。





次の日もそこに猫はいた。


これまで見かけたことはなかったのにな、などと考えながら昨日感じた奇妙な感覚の正体をつかもうと、猫の目の前に回り込んでみた。

ところが拍子抜けしたことにどこにでもいそうな猫の顔があるだけだった。

ただ、どことなく愛嬌のある顔つきをしていて野良猫でも餌はちゃんと食べているのだろうかと少し心配もした。

その日はそのまま学校へと向かった。




そのまた次の日、ヒナタは朝から機嫌が良かった。

前日のテストの結果が良かったこともあるし今日は放課後に友だちとカラオケにいくのだ。

この日の猫は寝ておらず、少し機嫌が良さそうにも見える様子で、塀の上を歩いていた。

この猫も自分と同じでいいことがあるんだなとまた親近感を感じた。

ヒナタは駆け足で学校へと向かった。




その後も塀の上の猫はその日の自分の機嫌を表すような行動をいつもとっており、ヒナタは学校へ向かう途中でその猫を見るのが日課となっていた。





ある日、ヒナタの機嫌はとても悪かった。

前日から続く不幸の連鎖にうんざりしていたのである。

あの猫はどんな様子をしているだろうかなどと、半ば不幸を願うようにして例の塀の上を見たとき、驚きと悔しさが同時に訪れた。

野良猫はヒナタの不幸など知ったことではないというように機嫌よく歩いていたのである。

ヒナタはどこか裏切られたように感じながら腹立たしげに学校へと向かった。


ところがその日の学校では昨日は何だったのかと言いたくなるぐらいに幸運にヒナタは恵まれた。

みるみるうちに機嫌もなおり、自分でも単純だと感じながらもこの幸運はきっと朝の猫の様子で分かっていたことだったんだと考えていた。





そのふざけた考えがあながち間違っていなかったのではないかとヒナタは思い始めることとなる。




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