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ラプラスの魔物 6

「ねぇ蓮花ちゃん。」

「何でしょう?」


からんからんとドアのベルを鳴らして入ってきた蓮花は、朧を見た。


「蓮花ちゃんの服ってさぁ、可愛いよね。」

「……はい?」


朧は奥のカウンターに座りながらにこやかに続ける。


「先週友達と遊びに行った時は、白のワンピースでしょ?先月の6日は黒のジーパン。来週の水曜日は黄色いパーカー着ていくじゃん?」

「…色々突っ込みたいことは有りますが、黄色いパーカーなんて持ってませんよ?」


あー、それはね。と朧はにこやかに笑う。


「今日の内にわかるよ。ねぇ、本当にここ最近温かいよね。」


蓮花はカウンターの側にある椅子を出して其処に座る。


「まぁ、春ですからね。…そう言えば、朧さん。朧さんは花粉症とか無いんですか?」


朧は椅子に深く座る。そして言った。


「私は基本的にはアレルギーとか無いけど、黎明がちょっとした花粉症だったかな?ちょっと身体弱いんだよね。」


ぼんやり、空を見る。そして続ける。


「神無月は確かトマトが苦手だっけ?…まぁ忘れたけど、神無月は天性の方向音痴さかな!」


蓮花が問う。


「方向音痴って…どれ位の方向音痴なんですか?」

「んー?単純に言うとー!地図を渡してもその地図外に出る感じだね!」

「随分と斜め上からの解答でしたね。」


蓮花はカウンターに荷物を置く。朧が言った。


「…こんなに温かいと、何もしたくないねぇ…。」

「猫ですか?」

「似たようなものだよ…。」


平凡な、古書堂。陽だまりが、本を照らした。



舞台反転、エレクトローネの煉瓦道。心地よい煉瓦が、2人の足を運ぶ。黎明と神無月は一緒に歩いていた。黎明と神無月は両手にそれなりの大きさの紙袋を持っている。


「うぅ……私とした事が、お店の特売日を忘れていたなんて…。」

神無月が言った。

「行ってよかったな。」


黎明が破顔の笑顔で答える。


「いえいえ!神無月お兄様が特売日だと知らせて下さったお陰ですわ!」


そして2人は古書堂の前に来る。古書堂の前には1人の若い女が居た。古書堂を見据えている。神無月は止まって言った。


「黎明、あの女は恐らく古書堂が見えている。」


神無月は黎明に荷物を持たせて言った。その声に反応して、女は此方に向いた。そして笑う。


「あー!神無月くんって感じぃ?」


妙に癪に障る甲高い声で話される。神無月は冷静さを失わずに言った。

「そうだが。」


黒髪の前髪を下ろし、白いボンボンで二つくくりの女は言った。


「きゃぁー!やっぱり!ねぇ!此処の古書堂にいるぅ、『ラプラスの魔物』と『時の砂』に興味があるんだけどぉ、出してくんなぁい?」


服は黒いスカートビキニ。縁取りは白いモコモコだ。胸には紫色の結晶のネックレスをし、腕には黒い大きな玉を綴られた腕飾り。靴は黒いウェスタンブーツを履いている。神無月は問うた。


「……出してどうするつもりだ?」


女は焦点の定まらない目で言う。

「んー?利用するんだよぉ〜?わかるぅ?」


伏せ目がちに神無月は言った。そして刀に手をかける。


「そんな理由で、俺が出すと思うか?」

「あぁー?スイッチ入った感じぃ?でもぴかりん強いよぉ?」


女はネックレスの結晶を取ると笑った。そして紫色のチャクラムが出来上がる。円の紋が蛇を描いている。神無月は叫んだ。


「精霊収集機か!」

「行っくよぉー!」


神無月は間一髪で跳躍するも、女は攻撃を続ける。しかし、その手にあったのはチャクラムでは無く、短刀の双剣。神無月はバク転をして避ける。刀に手をかけ思いっきり引き放つ。風の刃が女を襲う。しかし女は無傷だ。神無月は思いっきり刃を下ろした。だが、またもや武器は変わる。ソードブレイカーが黒龍刀の刃を押さえた。


「つっかまっえたぁ!」


捻られる、折れる、その刹那。神無月は叫んだ。


「黒龍!」


神無月の背後に巨大な龍が現れ、そして刀に戻る。瞬足の女の標的は黎明に変わった。細い首にナイフがあてがわれる。


「出してくれないとぉー?殺すよぉー?」

「黎明!」


神無月は表情を変えず叫ぶ。黎明は怯えて言った。


「か、神無月お兄様……。怖いです…。なぁんて、言うと思いましたの?黒い方。」


女の足元に水の鎖が出来る。腕は凍り、其処を潜るようにして黎明は離れた。朧が現れる。蓮花も一緒だ。


「あれぇ!動かなぁ〜い!あ!『ラプラスの魔物』と『時の砂』じゃん!」


朧の、黒い目。


「…やぁ、随分と妹に酷い事をしてくれたじゃないか。どうなるか分かってやってるんだろうねぇ?」


すると女が答える。


「ぴかりん悪くないもぉん!蓬莱様が悪いんだもん!夕霧様のばかー!」


その瞬間、全てが凍てついた。神無月が刀を地に落とす。かんかん、と刀の音。


「…貴様、今何と言った?」

「ほーらいゆーぎりさまって言ったよぉ〜!」


神無月の足音が空間に広がる。無音。神無月は女に近づいた。


「…貴様、其奴を知っているのか?」


神無月の真黒のオーラが近づく。それに女は怯える。


「え……。何…?そ、それ以上近付くと、刺すよ……?」

「黙れ。」


一瞬で空気が凍てつく。神無月は言った。

「…俺は、お前に、『蓬莱夕霧』という女を知っているか聞いたのだ。答えろ。」


女は慄いた。そして零れながら言う。


「…し、し、知、ってる、も何、も、わた、たし、を育て、て、くれた、人、です、よ?」


神無月は俯いた。朧に振り向く。


「…この女、殺しても構わないな?」

「……好きにしたら?別に私は良いよ。さぁ、古書堂の中に入ってー!」


朧は怖がっている蓮花と黎明を古書堂の中に入れると、記憶を消す。2人を椅子に座らせた朧も神無月の側へ向かう。そして朧は上ずった声で話し始める。


「さぁて、どうしようかなぁ?私ね、これでも拷問の数は死ぬ程知ってるの。どれにしようかな?」


あぁ、でも、と朧は続ける。


「君、確か私を利用するなんて言ってなかったっけ?何するつもりだったの?」


女は唯唯目から涙を流し続ける。声が震える。


「な、な、何も、しら、らら、な、ない。わわわ、たし、しらない、だ、だから、た、すけて?」

「…貴様は何を言っている?」


神無月の冷えた視線。先程の刀に命じて此方に向かって来るように神無月は言った。刀が女の首に当たる。朧が言った。


「君の返答次第では生かしておいてあげる。少し質問をさせておくれよ。君の名前は?」

「ぴ、かり。ぴかり。わた、しの、な、まえは、ぴかり。」


朧は笑う。


「そっかぁ、ぴかりちゃんか。ねぇ、夕霧様はさ、一体何をするつもりなの?」

「ほ、ほうら、い様は。」


ぴかりが話そうとするのを朧が遮った。


「蓬莱様って言うのやめてくれないかな?夕霧様が良いね。」


朧が優しく微笑む。


「ゆ、ゆうぎ、りさまは、わ、たし、に、『ラプラスの魔物』と、『時の砂』の、回収、を、命、じて…。」


神無月は冷たい声で問うた。

「それで何をするか聞いたのだ。」


ぴかりは必死に声を震わせる。

「し、らない。知らないよ!」


朧はぼんやりと考える。そしてぴかりの眉間に指を当てると、水色の光が起こる。そしてその少女は消えた。神無月が道端に置いてあった紙袋を拾った。そして朧に問う。


「…あの少女に何をした?」


神無月が厳かに問う。


「……記憶を消した。ちょっと正しく言うと此処に関する記憶だけ書き換えたんだよ。神無月に返り討ちされて蓮花ちゃんと黎明には会ってないってね。そういう事にしてね。」


朧は仕方なさそうに笑う。そして続けた。


「…あの子達も戦闘の事を全く覚えてない。私と神無月が居なくて、話してる内に寝てちゃった事になってる。………………ごめん。」


朧は俯いて答えた。神無月は紙袋を持って古書堂に入った。カウンターに寝ている黎明と蓮花を起こす。


「…黎明、蓮花。起きろ。」


黎明はゆっくりと起き上がる。

「……に、さま?」


朧は思いっきり黎明を莫迦にした。


「黎明って寝るんだね。」

「兄様の世話のせいで寝られにくくなりましたわ。」


蓮花も起き上がる。

「…おぼろ、さん?」


朧は笑う。そして問う。


「何をお話してたんだい?」

「……あんまり、覚えてません。」


そして蓮花が続ける。

「少し、寂しかった夢を見ました。気の所為、ですよね。うふふ。」


蓮花は声を上げて笑った。そして朧は続ける。

「んー……よし!買い物に行こう!」


黎明の突っ込み。


「……はい?とうとう頭まで飛んでしまわれたのですか?」

「違うよ!蓮花ちゃんの洋服買いに!」

「……それで黄色のパーカーを買うんですね。」

「ご名答!」


朧のにこやかな顔。そして続ける。


「蓮花ちゃんの誕生日、もうすぐでしょう?だから、私からの誕生日プレゼント!」


蓮花の顔にぱっ、と花が咲く。そして少し哀しそうに笑った。

「私、誕生日を他人に祝われた事があまり無くて……とっても、とっても嬉しいです。」


朧はぽんぽん。と蓮花の頭を撫でる。そして黎明が蓮花の手を引き駆け出した。


「そうなれば善は急げ、ですわ!参りましょう!」

蓮花は泣きながら笑った。


「はい!」

もっと上手く書けると良いのにねー!コメント下さい!喜びますよ!迷っているなら送って下さい!あ、誹謗中傷は駄目ですよ?蓮花ちゃんがしばきに参りますよ!

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