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ラプラスの魔物 3


「はぁぁぁぁぁぁぁ…蓮花ちゃんおーそーe!」

「何故に最後がアルファベットなのですか?」


黎明が紅茶を啜り、溜息をつく。

「だってぇー!遅いものは遅いんだもん!」


朧が駄々を捏ね始める。

「まぁ、確かに遅いな。」


神無月は、本を読みながら答えた。ここは朧古書堂。とある魔法が掛かっているため、人は来ない。それを使って3人は、椅子を出して各々好きな事していた。


「蓮花ちゃんは、ちゃんと時間を守る子だから、こんなに遅れてると心配なのだけれど…。」


朧が天井を見上げながら言う。

「…なら透視能力を使えばいいではないか。」


えぇ〜、と朧は言う。

「あれかなり魔力が消耗するから好きじゃないんだけどなぁ〜。まぁ、いっか。」


朧は一つ息を吸うと、天井を見上げる。


「あれ?これは…机、チェス盤、人間の腕、糸、黒、椅子、玉座、暗闇、チェス盤の床、綺麗な扉、一筋の道………これは、まさか!」

「どうした朧?」


声色を変えず、神無月が聞く。それに直ぐに朧は返した。


「出るよ、神無月。これはかなりまずい。何故『あれ』が蓮花ちゃんを狙ったのかは良く分からないけど、行かないと。」


朧が珍しくあせる。


「そうか。『あれ』が、出たのか。道理で今日は妖の数が異常に多いと思ったぞ。」


神無月は脇に置いてあった刀を腰に差した。


「兄様方!私も連れて行って下さい!」

「駄目だよ黎明。危険過ぎる。」

「嫌ですわ!」

「言う事を聞くんだ黎明!」


神無月は心の中で、兄妹とはこういうものか、と少し場違いな事を思った。神無月が口を開く。


「そうだぞ、黎明。お前がここを守れ。」


黎明は少し不服そうな顔をして、一つだけ言った。


「…ならば、約束して下さい。必ず、無事に帰ってきて下さると。こういう台詞は言いたくなかったのですが。」

「何故だ?」


神無月が聞く。


「…己を守れない弱い者が言うからです。それよりも、兄様、約束してもらえますね?」


朧は扉に手を掛け振り向きながらニヤリと笑って答えた。


「約束出来ないねぇ?」


黎明は喜色満面の顔でこう言った。

「紅茶を入れて待っておりますわ。」



10分前。


蓮花は1人道を歩いていた。沢山の焼いたクッキーを持って。

その刹那、声がした。


「ねぇ、お姉ちゃんって、蓮花って名前?」

「えぇ、そうですが?何か?」


そこには四、五歳頃の少年がいた。基本的に黒い服。しかし、服とも言えぬボロキレで、黄色いマフラーを着けていた。


「そっか〜!じゃあお姉ちゃんが『時の砂』なの?」


少年はにこやかに答える。蓮花が分からないという顔をした。


「…『時の砂』とは?」

「それはボクも知らないや。でもさぁ、」

と少年は黒く笑み、こう言い放った。


「蓮花お姉ちゃんが捕まったら、朧お兄ちゃんと神無月お兄ちゃんが、来るよねぇ?」


地から履いでる人の腕腕腕。

「じゃあお姉ちゃん、来るまで一緒に話そうか!」


クッキーが、道端に落ちた。


20分後。


路地裏にて、2人は話をしていた。


「ねぇ神無月!まだ見つからないの!?」

「無茶言うな朧!『あれ』の空間を探すのには時間がかかる!」

「でも早くしないと彼女の身が持たない!」


語調を荒くする朧。


「そんな事は百も承知だ!」


それに反論する様に神無月は言った。


「だが、…少しだけ方法がある。『あれ』の空間には、少し変わった魔法がかかっているらしい。何故だか知らないが、『あれ』が自分の空間を開くと、その街の何処かに扉があるらしい。その近くには、その扉を開く為の棘のついた腕輪があるそうだ。」

「じゃあそれで探せば!」


朧が、少し期待のある声を出す。


「それで探したいのは山々だ!…だが、その腕輪にも魔法が掛かっていて、探し物を探す魔法でも、どんな魔法でも切り抜けてしまうんだぞ!」


朧は少し止まったが、直ぐにニヤリと笑ってこう言った。


「…うふふ。神無月もまだまだだねぇ?」

「…どういう事だ?」


神無月は訝しげに朧を見る。

「私は『ラプラスの魔物』なんだよ?これしきの事探せなくてどうするの?」


朧の髪の下の目が、金色に妖しく輝いた。




異空間にて。


「私を帰して下さい!」

「えー!やだよー!」


周りは黒。その上腕。足元は黒のチェス盤で構成されている。後ろを振り向くと、木製の扉にも黒のチェス盤が書いてあった。

少年はくるくると空中を旋回している。


「あぁ、そうだ!ボクとお話する約束だったよね!」


少年は無邪気に声を上げる。蓮花は半ば諦めた風に聞いた。


「…分かりました。お話はします。でも、貴方の名前は何と言うのですか?」


少年は空中に寝そべりながら答えた。


「ボクの名前?ボクの名前は、モルテ!モルテ=ディー・グレンツェ。宜しくね!」

「…宜しくお願いします。モルテ。」


うふふ、と少年ーーーモルテ は笑った。


「あぁ!そうだ!ボクはね、何でも知ってるんだよ!…お姉ちゃんのお母さんの事も。あ、本当は、お姉ちゃんの死んだお母さんだね!」


けたけたとモルテは笑う。

「何故、おかあ、さま、の事を、」


蓮花の目の中には光がない。


「そりゃボクはなんでも知ってるからね!何で死んだか知りたい!?」

「やめて!やめて!」


蓮花は否定を連呼する。その否定を無視してモルテは続ける。


「うん!知りたいんだね!お姉ちゃんのお母さんはね、…お姉ちゃんが殺したんだよ。」


蓮花の顔には最早生気は無かった。


「うそ、でしょ、う?わ、たしが、おか、あさ、まを、ころす、?」

「そうだよ!ちゃぁんと殺意があって、ナイフで、お母さんの、心臓を、一突きさ!…ねぇ、これれっきとした殺人、だよね!」


そして、その一言で、蓮花は、壊れた。


「いやいやいやいやいや。あ、りえない。ちがう、わたしじゃな、い。しらな、い。おかあ、さまは、びょ、うきで!それで!しん、だ。わた、しが、ころした、じゃ、ない。ちが、うや、めて、ちが、つたっ、て?」


蓮花は同じ事を繰り返す。モルテが声を出した。


「ああー!もうこれだから人間は弱くて嫌なんだ!ボクの話し相手にもなってくれないじゃないか!」


1人は精神が崩壊し、怪物は暇をする。正に地獄絵図。でもさ、楽しみはこれからだよね、と少し笑ってこう言った。


「嫌だよね。自分自身が殺しちゃうの。ね、ね、だからさ、過去を清算しようよ。」


にこやかにモルテは笑う。目線を蓮花に合わせる。


「かこ、を?せいさ、ん?」

「うん!殺した事を無かったことにするの!お姉ちゃんのお母さんがまだ生きてて、幸せな毎日!最高でしょ!」


無邪気な笑顔で彼は言った。


「できる、んですか?そな事、が、ほん、とに?」

「もちろん!だってボクはね、なんでも知ってるんだよ!だから、元に全て戻せる方法だってさ!ねぇ、だからさぁ、ボクの手を取ってよ!」


モルテは蓮花に手を差し伸べる。蓮花がその手を取ろうとした瞬間、モルテの手首が切れたのだった。ほぼ同じタイミングで打ち破られるドア。


「あー!もう!神無月!吃驚させちゃ駄目でしょ!」

「…大丈夫か?」

「全く!グレンツェってそんなに口説くの上手かったのかい!?私に伝授して欲しいなぁ!」


呑気なトーンに殺気が混じった声と、心配する声。


「朧さ、んと、神無月さん?」

「そうだよ!助けに参上!」

「…茶番はやめろ。面白くない。お前のはな。 」

「酷い!」


また2人はのんびりと話している。目の前にあった手首は直ぐに回復していた。


「あー!お兄ちゃん来るの早い!もうちょっとだったのにぃ〜!あともうちょっとで、お姉ちゃんの精神破壊がでーきーたーのーにー!」


無邪気にモルテは駄々を捏ねる。するとモルテが言った。全身から殺気が爆ぜる。


「あぁ、でもさぁ、ねぇ?お兄ちゃん達を殺したら、『時の砂』はボクのモノ!さぁ、だから、皆、死んでしまえ!」


高い所に登ってくるくると回る。掛け声と共に糸で釣ってあったような腕が一斉に朧と神無月に襲いかかった。それに蓮花が叫ぶ。


「その腕は魔法を通しません!」

「えー!何なのそれ!!」


朧が避けながら叫ぶ。


「ねぇ神無月、目を使っても良いかなぁ。」

「やめとけ。指名手配されるぞ。もうされてるがな。」


蓮花はふと顔を上げた。首に掛けていた精霊収集機に力を込めると、1振りの剣が出来た。それをモルテに突き刺す。


「がァっ!?」


モルテが叫ぶ。

「……。」


無言で蓮花はその体を刺した。


「え?蓮花ちゃん?」

「蓮花?」

「…貴方、死なないんでしょう?」

「…うふふふふふふふ。お姉ちゃん良くわかったねぇ?」


モルテは口から血を出し、心臓からは血が大量に出てきている。


「だって、貴方は怪物です。人間の匂いがしません。」

「普通の人間にはそういう事は分からないんだよ?お姉ちゃん。本当に人間?」


蓮花は一息ついて答えた。


「貴方は莫迦なんですか?もし私の本質が妖だろうが怪物だろうが龍だろうが、私が『私』で、『御手洗蓮花』であるうちは、人間なんですよ!」


蓮花は叫んで答えた。モルテは一瞬驚いた顔をすると、またにたにた笑ってこう言った。


「あー!やっぱりお姉ちゃんには適わないや。お姉ちゃんの力を奪うのはまた今度にしてあげるね!」


するとモルテは消えた。その瞬間だった。

地面が揺れる、揺れる。時空が歪む。


「朧さん、これ何ですか!?」

「空間の主が居なくなったから、崩壊しはじめてる!逃げよう!神無月!開ける!?」

「一か八かはやってみる!」


3人は奥の通路を通って逃げる。しかし向こうの道も崩壊を始めた。両サイドから道が消えている。


「朧!この虚無の空間をエレクトローネの街の空間に繋げるか!?」

「やってみるよ!」


朧は少し息を吸うと、直ぐに呪文を唱え始めた。


「虚無の死の境界、有益なる生の道、今、我が悪しき名において、外界へ繋げたもう!」


その瞬間黒い虚無の空間に白い切り込れみがはいる。


「神無月!今だ!」

「我等が生きるあぜの道へと茨の道中に繋げたもう!」


白い光が炸裂して、蓮花は外界の安全な世界に入ったと感じると、意識を失った。

コメント下さい。話しかけると死ぬ程喜びますよ……。中二感しか無いですけど、読んで貰えると幸いです。

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