#2
真美は、高校の同級生だった。僕なんかにはもったいないような人だったけど、初めて会ったときから僕は彼女が好きだったんだ。今思えば、完全に一目惚れ。高校一年のときは、ただのクラスメイトだったけど、二年でまた同じクラスになったとき、告白することを決意し、若さ故の勢いで、まともに話したこともない彼女に思いをぶちまけた。再び同じクラスになったというだけで運命すら感じてしまうなんて、あの頃の僕はどれだけ単純な思考回路で物事を考えていたんだ、と、自分の馬鹿さに笑えてしまう。でも、高校二年の夏、まだ梅雨明けしていなかったあの日から、僕の毎日は信じられないほど輝いていった。付き合うと言っても、お金も無くて行動範囲もたいして広くない僕たちに出来ることは限られていた。一緒に登下校して、一緒にお弁当を食べて、休みの日に時々会って、お揃いのものを恥ずかしげもなく買ってみたりして。でも、それだけで良かった。僕の隣に彼女がいて、笑顔が見られる。それだけで、本当に幸せだった。将来のことなんて何も考えてなくて、今を一緒に過ごせているだけで満たされていて、幸せってこれのことだな、なんて本気で思っていたんだ。だけど、そんな僕に、神様は冷たかった。
付き合い始めて四ヶ月が過ぎた頃。彼女が大型のトラックにはねられたのは、学校からの帰り道、自宅に着く直前だったという。頭を強く打っていて、意識不明の重体。画面の向こうでアナウンサーが読み上げているのしか聞いたことがないようなその言葉で形容された彼女は、機械に囲まれて固く目を閉じていた。数時間前まで僕の隣で笑っていた人とは似ても似つかなくて、触れることさえ憚られるほど痛々しい姿だった。それから何度名前を呼んでも彼女が目を開けることはなく、ヤマだと言われたその一晩を越えることはできなかった。