違和感
その瞬間、私たちの周りにあった半透明な壁が水色になり、ビアさんとルーツさんに水色のツタのようなものが巻き付いたようにみえた。でもそれは瞬きの間に消え失せた。
「これでいいだろう。…今更だが、こいつらにお前の情報を教えてもいいだろうか?」
騎士団長さんが私に聞いてきた。すると私より先にシュウナが答えた。
「大丈夫よ。この二人は信用に足る人物よ。毎回私が判断するわけにもいかないけど、今回だけは私に判断させてもらうわ。ルナもそれでいいわよね?」
「う、うん。約定もやってもらったしね。」
なぜ今回だけなのだろうか。そして勝手に判断するなと言いたいところだけど、私も了承するつもりだったからいいけど、何か強引さというか、違和感を感じた。
でもその違和感の正体に迫る間もなく話は進んでいく。
「そうか。お前がいいならいい。じゃあ今からこいつに聞いた話をする。ニュアンスの違いや、間違えているところがあれば言ってくれ。皇子殿下に伺った時も基本的に俺が喋る。」
騎士団長さんがまっすぐに私を見ながら告げる。それに対して私は小さくうなずくことで返事をした。
そして騎士団長さんは私が話したことを伝えた。間違えているところは無かった。
違和感は消え去っていた。
話を聞き終えてからルーツさんとビアさんは驚いた顔をした。
「まさか≪時空の迷い人≫が本当に存在するなんて…伝説ぐらいでしか聞いたことないわよ」
ビアさんはいまだに信じられないようにこちらを見ている
ルーツさんは、しばらく考えてから騎士団長さんに話しかけた
「で、王にいつ報告するんだい?」
「いや、王には報告しない」
「?!だが国の決まりがあるだろう?」
「今の王に報告を上げてこいつを見せればどうなるか容易に想像がつく。そうなると、≪時空の迷い人≫の法に反することになるかもしれない」
「…っ、じゃあどうするんだよ!」
「明日、皇子殿下に報告する。王に報告するよりましだろう。」
「…確かにな。法もややこしいうえに≪時空の迷い人≫に関する法は国の法と矛盾しているところもあるし仕方ないといえば仕方ないか…」
確かにこの国の人間の法はややこしいもんなぁ…。そう考えて、私の思考が止まった。何で私はこの国の法がややこしいって思ったんだろう。
思考に集中しようとした途端、話しかけられて思考が途切れる。
「ねえねえルナちゃん、服ってどうしてるの?」
「えっと、服はシュウナが一式持ってきてくれたんですけど足りそうになくて、どうしたらいいか考えてるところです。」
手編みだと時間がかかるし、手縫いもできないこともないが編むことほど得意ではない。
「じゃあ、私の持っている人形の服は着れないかしら?いくつか持ってきてるから、あとで着てみるといいわ」
正直有難い提案だった。
「いいんですか?!着てみたいです!」
「じゃあ決まりね。後で持ってくるわ」
ものすごく嬉しい。本当に悩んでいたことなので解決しそうでよかった。
…さっきまで何か考えていた気がするけど思い出せない。もやもやするなあ。
まあ忘れるぐらいだし、別にいいか。