話し合い
私が今把握している事を話し終わったら、騎士団長さんはため息を吐いた。信じられないといった様子だ。
「信じられませんか…?」
私は不安になって聞いてみた。自分で喋っていて現実味の無い話だとわかっているからだ。信じてもらえなくて当然だと思う。
「いや、信じていないわけじゃ無い」
なら、何故ため息を吐いたんだろ?顔に出ていたのか、答えてくれた。
「この国では、《時空の迷い人》が時折現れる。だから、《時空の迷い人》を見つけたらひとまず保護して国に報告し、国が選択肢を作った上で《時空の迷い人》に保護してもらう人間を選ばせるんだ。だが…」
騎士団長さんは突然顔を近づけて小声になった。綺麗な顔が近くに来てドキッとする。
「今代の王は珍しいものと綺麗なものや人が大好きで…特に小さくて可愛らしいものが大好きなんだ…だからこのまま王に報告したら」
騎士団長さんはそこで一度言葉を切って、何かを決心するかのように首を振った。
「最悪、お前は檻に入れて飾られるな。」
絶句した。そんなの嫌だ。
「お、お願いです!そんなの嫌です助けてください!」
私はついついお願いを口にしていた。
騎士団長さんはしばらく考えた後、こう言ってくれた。
「今代の王も、もう56歳なんだ。この国では60になる年のはじめには必ず王位を譲らなければならない。幸い、皇子殿下は慈悲深い方だ。王位を譲り渡されるまでなら、うちに置くことを許してくださるだろうと思う。」
それを聞いた時、私は心から安堵した。檻に入れて鑑賞されるなんて嫌だもんね。
「ただし、早急に皇子殿下に相談をあげてからだ。それにはお前もついてきてもらうぞ。」
それをするだけでおいてもらえるんだったらいくらでもやろう。
「了解しました!何をしたらいいか教えてください!」
そう言うと、騎士団長さんが不思議な顔をした。
「お前は聞きたいことは無いのか?」
そういえば答えるばっかりで質問は全然してなかった気がする。
聞いてもいいんだったら、聞こうかな。
「あの、ずっと気になってたことがあって…」
「何だ?」
「私、なんでこんなにちっちゃいんでしょう?」
騎士団長さんは黙ってしまった。
「…そんなこと、俺が知るわけ無いだろう。」
…ですよね!わかってたよ!がっかりなんかしてないから!…くそう。
「あと、いつ皇子殿下のところへ行くんですか?」
騎士団長さんはしばらく考えて、答えをくれた。
「明日はほとんどの店が閉まる【国の休日】だ。だから城も空いていないと思う。俺も今回は休みだ。だから明後日に城に行くことになるだろう」
明後日か…早急に、って言ってたけどいいのかな、って思ったら説明が入った。
「ちなみに【国の休日】は、最低限の人間を置いて城も閉鎖されるから国の存続に関わらない限りその日を避けて報告などはあげる決まりだ。」
じゃあ、いい、のかな?
まあ騎士団長さんもいいって言ってるし、良いのかな。 あさってお城に行くことが決まったので、思ったことを言う。
「明日は何をするんですか?」
「自分の好きなことをするといい。俺は部屋に居ると思うから、何か必要なものがあれば言え。あと、この国についての知識だが、申し訳ないが殿下に報告を上げてからいろいろと教えることになると思う。」
「わかりました!」
そう言ってから紅茶を口に含むと、日本にの紅茶と何も変わらなかった。それにしても、必要なものかぁ…することないし、暇つぶせるもの…何か…。
私はしばらく悩んでから、カバンを見たら何か思いつくかもしれないと思い立って、カバンを探り始めた。
騎士団長さんはそんな私を観察するように眺めながら、のんびりと紅茶を飲んでいた。