精霊?
「ここどこって、あなた何言ってるの?」
「だってここ、日本じゃないでしょう?」
「ニホン?ここはサンダロイズ帝国よ?」
反論すると、やはりというか聞いたことのない国名を言われた。
…クラリと眩暈がした気がした。
なるほど、これが噂に聞く異世界トリップというやつか。とりあえず、ほかの疑問をぶつけることにしよう。
「うん、わかった。じゃあ、あなたは何?」
「あたし?あたしは精霊よ?風の精霊王シュウナよ」
どうやらシュウナはこの見た目ですごい奴だったらしい。少女にしか見えないが。
シュウナ様、と呼んだほうがいいかな、と考えているとシュウナが聞いてきた。
「あたしも気になることがあるから、聞いてもいい?」
「なに?答えられるものなら答えるよ?」
「じゃあ質問するわね。
1つめ。あなたは一体何なの?
2つ目。あなたの体の組織的に見て、あなたが人間なのは間違いない。でも、何故そんなに小さいの?」
私は言葉に困った。
自分が何なのかは自分でも分からない。それに気になることが1つできた。
「私が何なのかは自分でも分からない。小さい理由もね。でも分かることが1つあるわ。」
「何?」
「多分、私は違う世界から来た。」
そう言ったとたん、シュウナは絶句した。
「まさか、あなたが伝説の≪時空の迷い人≫だなんて…。初めて見た…。でも、今までの≪時空の迷い人≫は普通の人間と同じサイズだったはず…」
シュウナがぶつぶつ言っているが気にせず思ったことを言ってみる。
「あの、普通の人間が居るんならそこに連れて行って欲しいんだけど…?」
シュウナはハッとこっちを見て、ぶつぶついったあと悪戯を思いついたかのような顔でこちらを見て言った。
「2つ条件を飲んで欲しいのだけど」
たしかにこちらの一方的なお願いを聞いてもらうのは割に合わないだろう。
「聞けるものなら」
少し考えてから、私はそう答えた。
「1つめ、私と≪精霊の契約≫を結んで欲しいの。あなたは、魔力がほとんど無い上に、そのサイズだから、契約したほうがいい。
2つめ、精霊と契約するとその精霊の力を借りることができるけど、あなたが契約するのはあたしを入れて4人までにしてほしいの」
シュウナの言っていることは正論な上に、私への心配も含まれている。
断る理由がない。
了承の意を伝えると心から嬉しそうに笑った。
「それじゃあ、契約するわね!」
そういうと、私とシュウナのおでこを合わせて不思議な呪文を唱えた。
その瞬間、私の右の手の甲に魔法陣のようなものがうかびあがった。
「それは、ほかの人には基本的には見えないから安心しなさい」
光る刺青みたいだ、と思っていた私に声がかけられた。
「じゃあ、人のところにいこうか。ここ人のすみかの庭だから。」
人様の家の庭でしゃべっていたのか。
もやもやしているとシュウナから説明された。
「私の能力は風を操る能力と、召喚する能力よ。あなたならそうねえ…猫ぐらいだったら丁度いいと思うわ。」
何がちょうどいいのかと思えばきちんと説明される。ちゃんと話を聞かなければ。
「あなた小っちゃいんだから、そんなに歩けないでしょ?だから動物に乗っていったらどうかと思ったのよ。じゃあ、召喚のやり方を教えるわね。」
ごくりと唾をのみこむ。
「頭の中で召喚したい動物を想像して、『この手に創造の産物を』と唱えるの。じゃあ、やってみて。」
言われた通りに想像する。何となくの気分で色は紫だ。
いい感じに想像できたので、呪文を唱える。
『この手に創造の産物を。』
そう唱えても何も起きない。
「?おかしいわね。...まさか。」
「なに、どうしたら良いの?」
「えっとね、もう一回想像して...何か合図を出せないかしら...?」
合図合図...指をならすのでもいいかな。
もう一度紫の猫を想像する。
できたところでパチンと指をならす。
ふと後ろに気配を感じたので振り向く。すると、想像した通りの紫のねこがいた。
まさか、本当に現れると思っていなかったので、とても驚いた。
そんな私を気にすることなくシュウナは風を操り、私を猫の首元に乗せた。
「あなたは何も言わなくても召喚できるみたいね。多分言葉を唱えると私の力を使うことに集中できなくなるんじゃないかしら?」
「あと、必要なくなったら私が消しておくわ。」
「了解!」
猫の首がものすごくもふもふしていて気持ちいい。
シュウナの話を半分上の空で聞いてしまった。反省。