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四話

 魔法書の解読を始めて二時間くらい経ったころだろうか。教団のであろう鐘の鳴る音がした。朝食の時間とのことで、俺は一階の食堂に連れてこられた。アリエスはお偉いさんに呼ばれたとかで席を外している。

 窓の外のに見える空は明るく、平和そのものだった。とても妖魔に襲われている最中とは思えない。やっぱ昼間は妖魔も大人しいのだろうか。


 食事は配膳係のところで貰う形式らしい。トレーを持って列の最後尾に並んでいたら、いきなり小突かれた。絡んできたのはスキンヘッドとモヒカンの男二人組み。何でこんな奴らがいるんだ。どういう教団なんだよ、ここは。


 二人は俺を列から引き剥がすと、理解できない言葉で何やら因縁をつけてきた。すまんがそういうのは、俺が最強拳法家になるか、最速の早撃ちガンマンになったあとにしてくれ。まだ早い。

 あわや一方的なイジメの被害者になるかというところで、制止する声が聞こえた。恐らく助け舟を出してくれたのであろう人物は屈強そうなおっさんだった。30歳くらいだろうか。

「ゴメイワク、オカケ、デシタ」

 二人を追い払ったおっさんは、カタコトの日本語で俺に謝った。俺が教団の人間ではなく、召還されてきたことも知っていた。おっさんはヤルコフと名乗った。


 食事を受け取った俺達はテーブルに並んで座り、お互いの話をした。ヤルコフは魔法の才能を見出されて二年前に教団の僧兵にスカウトされたそうだ。元剣闘士だとか。

「ミンナ、キタイシテル。ショウカン、ユウシャ」

 ヤルコフの言葉は分かりにくかったが、ともかく俺に期待してくれているということはわかった。助けてくれた感謝の気持ちもあり、ヤルコフの言葉は俺のやる気メーターをかなり押し上げた。やっぱ頼られるのは気分がいい。これで能力も伴っていれば言うことはないのだが。


 一方で、ヤルコフ以外の食堂にいる人達の視線が気になった。俺を見ては、聞こえないように口元を押さえて隣の人となにか喋っている。俺からの視線に気づくと露骨に顔を逸らす。そのことについてヤルコフに聞くと、俺が妖魔を倒す力など持っていないと疑っているらしい。いまのところ正解なので肩身が狭い。

 そんな教団連中は無視して、ヤルコフを相手にこの世界の魔法について聞いた。ヤルコフもまだ魔法については素人同然だそうだ。試しにやってみてくれと言う俺の言葉に、ヤルコフは親指を立ててOKしてくれた。


「イキマスヨー」

 なんかカメハメ波を出すポーズをとっている。むっちゃ似合っとる。

「カー! メー!」

 掛け声までそれかい。ってか、この国の魔法ってこれが一般的なのか。

「ラーー!!」

 ヤルコフの唱えた魔法は、俺にとってはフェイントだった。カメラかよ。そこまで言ったら最後まで似せろよ。

 ヤルコフの両手の先にはぼんやりとした光る球が浮かんでいた。これが、レウチーテンデ・バルの術だそうだ。

 光の球を出した後は肩で息をしていた。体力と気力をやたらと消耗するらしい。達人になれば手をかざすだけで出せるようになるとかなんとか。そのレベルに達するには10年くらい修行するんだと。

 そういえば俺を召還したアリエスはどの程度なのかと聞くと、この教団で十指に入るほどの高技術保持者だそうだ。教団の規模は300人程度とのことだったので、割と凄い。俺と同い年くらいだが、やっぱ実力ある人は違うね。顔も可愛かったし、天は二物を与えるもんなんだな。



 食事を終え、俺はヤルコフに礼を言って二階の資料室に戻った。ヤルコフ達僧兵はこれから仮眠をとって、夜から始まる戦闘に備えるとのことだった。なんとかヤルコフが起きるまでに魔法書の解読を進めて、解決法を見つけ出さねばならない。しかし、アリエスは一向に戻ってこなかった。

 現実世界の夕方七時過ぎにこっちの世界へ来てから、すでに四、五時間ほど経ったていた。現実世界ならそろそろ日付が変わる頃合だ。胃袋に食べ物を入れたことも手伝い、椅子に座った俺の瞼は、だんだんと重くなっていった。

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