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第一

◆残響デベロッパー

tell me again.

tell me again.


再び言わない。二度言えない。

言葉は届かない。届けられない。

愛は伝わらない。恋は続かない。

愛はまぼろし。恋はまやかし。


◆tell me again


このお湯は、地獄楽とでも書こうか。


僕は日記は書かない事にしている。

日記というのは何か日常を思い出を思い出す為にあるのだろうが、僕が書く日記は読み返せば読み返す程くだらないことしか書いてないのだ。

大事なことを書いてるつもりで、くだらないということは、案外僕の人生はくだらないのかもしれない。






























また夏が始まる。

夏休みは楽しい。

出会いがあるわけじゃないし、不思議な冒険もあるわけじゃない。そもそもそんなものを望むのは精々中学生までだ。

それでも夏は好きだ。


僕は夏にクーラーの良く効いた部屋に閉じこもるのは好きではない。

夏は暑いのが当たり前で冬は寒いのが当たり前で梅雨は湿気ってるのが当たり前だ。

夏は暑いからこそ夏であり、楽しいのに、夏の暑さを嫌うのは夏を否定することと同義だ。

暑さまで受け入れてやることも必要である。

冬になると夏の暑さを恋しがる癖に、夏になると冬の寒さを恋しがるなんて勝手極まりない。

と思っている。

とか言いつつも、デパートなんかにはいると中々出られなくなるのだが。


だから、僕はクーラーがない部屋で、

座布団引いて畳の上に寝転がって風鈴の音でも聞いてテレビを見て麦茶を汲んで西瓜でもかじり、

そして宿題をやるかやらないかで悩んで、夕方になったらやろうと決意するが、夕方からゲームを始め、

三日に一度くらい友達に遊びに誘われるだろうから、その時の気分次第で遊んだり遊ばなかったりするのが僕の夏休みの理想像だ。

いや、今まで通りなら大体合致している。つまり現実像であり理想像だ。

中学の頃は夏期講習があって少し自分の時間がなかったけれど、それも今自分がいる高校に入るためだと考えれば何も問題がない。

得ばかりである。僕は勝ち組だ。幸せ者だ。


幸せ者か。

成る程。

だから僕は…



死遭わせ者なんだろう。





今回の夏休みは熱川の旅館に行くことになった。妹と、姉とだ。


ホテルではなく旅館なのが少し気にかかったけれど、然程大したことでもない…と切り捨てる。



7月25日の…たしか木曜日。朝5時、僕は起こされた。

僕を起こしてくれたのは姉でも妹でもなく、目覚まし時計だったが。

…早い。もっと寝ていよう。

きっと誰かが起こしてくれる…。

と、また僕は枕に頭を沈める。


が数分後には枕元の目覚まし時計の青いランプを光らせる。

まだ4分か。

外からいくらか薄明かりを感じられる…気がする。

カラスは既に鳴いている。


寝よう、暑くて厚い布団からくるぶしを出して、寝返りをうつ。

それから羊の数ではなく羊の角の巻き皺を数えたが、275のところで馬鹿馬鹿しいと気付く。

時刻はまだ5時21分。

一匹の蚊が迷い込んだ様だ。命知らずめ。モスキートハンターを自称している僕に近づくとは。…モスキートキラーだったっけか。

まあいい…ほら…僕の耳もとに近づいてくる…止まった瞬間…殺…逃げたか…。まただ、早くこい…きたか?。死ねっ!

僕は手で耳を叩いた。

蚊の姿が見えない。風で飛んだか、撃ち落とされたかだな。死骸が見当たらない。手に汚れもない。掠ったか。

まあ、あの攻撃をくらったならたとえ僅かであろうと蚊にとっては致命傷。死んでいるだろ。

…。

聞こえるぞ…。聞こえる。

この、あざ笑うような気がしなくもない、かんだかい羽音は。僕の血肉を一直線に目がける害虫は。間違いない。

馬鹿な。奴は死んだのではなかったのか。

くそ!やはり…アイツだ。さっきの蚊だ。


…はあ、馬鹿馬鹿しい。

起きるか。


姉や妹よりちょっと早く起きた僕は、ベッドから降りて、二つほど隣の部屋のシャワールームへ向かった。

眠たさはなかった。四分の一くらい夏バテなのだろう。


旅館はちょっと贅沢に4泊だ。しかしちょっと質素な旅館。つってもやる事なんてあるのか。

海行って温泉入って某ワニ園でも行って…それしかしらないな。

特に予定については考えるのが面倒臭いので柳に風、周りがする事に合わせる。姉たちがするように僕もすることにしていた。

シャワーから出て、二階のリビングへ行き、冷蔵庫に冷える天然水を出した。分厚く広いがやや丈の低いグラスに注ぐ。

天然水を先に冷蔵庫にしまってから、テーブルの上のグラスをとろうとすると、階段を昇る音が聞こえた。

姉は二階に部屋があるので、一階にいて、尚且つこの歩き方をするのは妹だろう。


妹は一瞬、こちらに注目した様だが、話すこともないので何も言わなかった。こちらも何も言わないのを確認し、水を飲む。

そして、残り僅かとなったマイベッドとの別れを惜しんだ。




忘れ物のチェック…はしなくて良いな。これだけ準備したんだ忘れてる物などないだろう。そもそも、忘れられる様な物なんて固よりその程度なのだ。忘れられるくらい重要ではない物なんだ。そんな物を忘れたって困りはしないだろう。


さて、部屋に戻ってベッドの上にいるわけだがもう姉も起きてくる時間だろう。やることもないし、ゲームでもするか。と、僕はスマートフォンのホームボタンを押す。

画面に映る大きな文字。5時53分。

ホーム画面には去年撮った大きな花火の写真が待ち受けにされていた。

…出発は6時20分だから、そろそろみんな起きてもおかしくない時間だと思うのだが。

寝坊するつもりなのか?

僕はそわそわし始めた。

あと2分しても様子が無かったら見にいくか。

別に、着替え中にドアを開けてしまうとかそんな展開は望んでいない。

むしろそんなことがあったら行きの新幹線が気まずくなるだけだ。

遅筆です

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