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王子密室消失事件

作者: 椎名正
掲載日:2026/08/21

 コレット伯爵令嬢は、王子から婚約破棄宣言をされて、静かにブチきれた。

 「ほおっ」




 その場は舞踏会。

 突然の王子の暴挙に静まり返る会場。

 コレット伯爵令嬢はにっこりと笑った。

 この会場のほとんどの人間が、コレット伯爵令嬢がその笑顔になった時に、敵になってはいけないことを承知していた。

 残念ながら、王子は知らなかった。

 「さて、ここでみなさんに問題です」

 王子を無視して、コレット伯爵令嬢は周りに語りかける。

 「この舞踏会が終了したら、王子はお城に帰ります。次の日、メイドが朝食を運びに王子の部屋に入ると、王子の姿がありません。賊が侵入し王子を誘拐したのです。でも、城の出入り口は門番の厳重な監視がされてます。いわゆる密室と言うやつです。犯人はどうやって厳しい監視のお城の密室から、王子を連れ去ったのでしょうか?」




 婚約破棄騒動があった舞踏会の次の日、朝食を運んだメイドから王子はいなかったとの報告がされる。

 城の出入り口は門番により厳重なチェックがされており王子は城から出ていないはずなので、城の中を大掛かりな捜索がされたが、王子は見つからなかった。


 一か月後。

 王妃がため息を吐いた後で言った。

 「謝罪するしかないわね。コレット伯爵令嬢は伯爵領に引きこもっているから、無理矢理に息子の居場所を聞き出すなんてまず無理よ。できたとしても、王家の面子丸つぶれよ」

 王妃は、目の前にいる賢者に聞く。

 「あなたの見立てじゃ、私の息子はこの城のどこかに閉じ込められているわけね。まあ、この城には伯爵家派は山ほどいるから、可能ですね」

 「はい。コレット伯爵令嬢がわざわざ密室との単語を出したのは、我々をミスリードさせるためと思われます。どうやって密室から王子を連れ出したのかと我々の考えを誘導して、ずっと密室の中に王子がいることを隠すためだと思われます」

 「その予想が合っていたとしても見つからないんじゃ意味ないわ。あれだけ城の中を大捜索しても見つからない」

 賢者は、王子を殺してバラバラにしてしまえば、見つけるのは困難だろうと推理していたがそれは口には出さなかった。

 「降参するわ。コレット伯爵令嬢に土下座でもして、表向きには王家が伯爵家に厳重注意したことにしてもらうわよ」

 王妃はもう一度ため息をついた後に呟く。

 「私の息子は、今、どこでなにをしているのかしらね」




 私の名前はキャロライン。今年からお城で働くことになった新人メイドです。

 今日もお仕事がんばります。

 一日の初めのお仕事は、いつものように二人分の朝食を王子の部屋に運びます。

 いつものように王子はベットの上で裸で縄で縛られています。

 いつものように呻いてますが、いつものように独特な猿轡をされていて、いつものように何を言っているかわかりません。

 「ありがとう」

 と、王子のお相手の女性がお礼を言ってくれます。

 仮面をつけて黒い皮のセクシーな衣装をしています。昼食担当の同僚メイドに教えてもらいましたが、ぼんてーじふぁっしょんと言うそうです。

 仮面の女性は、朝食を食べながら王子の身体にろうそくのロウをたらしてます。

 大人の恋愛はすごいです。

 「私達の恋愛は特殊だから、世間にはないしょね。私も王子も、この王子の部屋にはいない」

 仮面の女性はいつものように、口止めをお願いしてきます。

 「もちろん、誰にもしゃべりません」

 私は胸をはって答えます。

 このお城で採用されるときに、お城の中での色恋沙汰を他でしゃべることは厳禁だと注意されてます。

 「世間では王子が行方不明になっている噂がありますけど、大丈夫ですか?」

 「大丈夫よ。そういうプレイだから」

 大人の恋愛はすごいです。

 「ほら、豚、食え」

 猿轡が外れたとたんに、王子が喚きました。

 「おい、そこのメイド、助けろ。これは合意じゃない。ふがっ」

 すぐに王子の猿轡が再装着されて、鞭で叩かれました。

 仮面の女性はにっこり笑って、私にウインクをしました。

 「プレイだから」

 大人の恋愛はすごいです。


   おわり


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