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クロスワールド  作者: 氷冷 飛鳥
第五章 水
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予定

私と爪の決闘後は男子たちと別れ、ランチを済ませた後に街を色々見て回った。

グランズとは違って各所に噴水広場が存在し、そこから放射状に水路や道が伸びている。

区画が決められているようで道が規則正しく作られており、街全体で一つの芸術品のような感じであった。

また、夜は水路が灯により照らされ、建物の灯も相まって宿の窓から見た街もとても幻想的なものだった。

明日はここを出発する。



「はー、もうここを出発しなきゃいけないのかー。もう少しこの綺麗な街を見ていたいよー。」



そう言うのは私と同じ部屋に泊まることになった琴葉。

部屋は3人部屋で私と琴葉、それに流流が一緒である。

だが今は影月、鈴、鳴も一緒にこの部屋で雑談している。



「しょうがないよ。私たちにはやらなきゃいけないことがあるんだから。」


「いいよね、飛鳥は。空間魔術使えば一度来た場所なら座標登録して来れるんでしょ?それならいつでもここに来放題じゃない。私も空間魔術覚えたいな~。」


「そうは言ってもグランズからここに転移するとなるとかなりの魔力消費するから無理だと思う。もし使うとすると急な魔力低下で体調不良や意識不明、最悪二度と魔術が使えなくなるかもしれないよ。」


「なら数回に分け転移すればいい。参考に普通の距離の魔力消費いくつ?」



流流に聞かれた。



「うーん、普通と言われても、状況によって使い分けるし・・・。戦闘中での攻撃回避、つまり1メートルくらいの距離で中級魔術一発分くらい。5メートルくらいで上級魔術一回くらいになるかな。」


「えっ・・、そんなにかかるものなの?」


「うわー、私や飛鳥っちの魔力量でもここにたどり着く前に魔力無くなって動けなくなるね。」


「でしょ?結構便利に見えて燃費悪くて使い勝手悪いんだよ。」


「・・・でも地球から転移する分にはそうかからなかったから、地球を経由すれば異世界への転移2回分で済むんじゃない?」



影月の発言にみんな「それだ」と同意する。

だが同意したはいいけど考えてみるとそれだと飛鳥たち異世界の人たちに迷惑がかかる。

向こうで「変な格好をした人が出現したり消えたりしてる」という話題になりそうなのが予想できてしまう・・・。

私たちには関係ない話とか、屋内に転移すれば問題ないとか色々あるから検討してもいいとは思うけど・・・。



「あー、空間魔術使いたいなー。飛鳥、教えてくれない?」


「うーん・・・ちょっと難しいかな。」


「どうして?」


「私としては構わないんだけど、その場合はまずウラル語・・・地球の言語を理解しないといけなくなるんだよ。」


「地球の言葉?術式に使うの?」


「うん、空間魔術の術式は特殊でなぜかところどころ地球の言語で書かないといけないところがあるの。別に例として教えた術式のまま使えば使えないことないんだけどそれだと距離の調節や転移する座標を自分で決めれないから使っても面白くないと思うよ。ここにいる人でそういうことができるのって・・私と鈴とフーだけになるよね・・・。」



それでも影月や鈴も完全に地球の言葉を読み書きできるというわけじゃないから初めの方は四苦八苦しそうではある

実際私も今でもどう書いたらいいかわからない文字は骸亜に聞いていたりする。



「つまり、鈴とフー以外空間魔術使えないこと?」


「今のところそうなるかな。教えるっていう手もあるけど私たち教えれるほどは理解できてないんだよね。」


「じゃあ、機会があったら今度私達もウラル・・地球に行ってみたい。飛鳥、連れて行ってくれる?」


「うん、もちろん。飛鳥たちも喜ぶと思う。」



けど、それが叶うのは多分約二ヵ月半後、つまり旅が終わった後になるだろう。

もしくはまた今回と同じようにみんなと逸れた時かな。

・・・まあそんなことがまた起こるようなことがあったら私は多分本当にリーダーからの任を解かれ、最悪パーティからも外されるだろう。

そして話題は異世界の話に変わり、向こうでの服をもらってきたという話になる。

私たちはそれぞれ貰った服を取り出した。



「それって、向こうで実際に着ていたもの?」


「うん、けどそれぞれ向こうの私たちの趣味のものだから、性格がこっちと向こうで正反対なフーが一番ギャップがある服装になってるよ。」


「・・・飛鳥、それどういう意味?私としては気に入っているんだけど?」



おっと・・・、影月を怒らせてしまった。

向こうにいる間は椿に服を渡されると嫌な顔をしていたような気がするので趣味があっていないと思ったのだけど、意外にも気に入っていたみたいだ。

怒る影月を尻目に琴葉たちはその服を着たところを見てみたいと言い出す。

その言葉に応じ、私たちは着替える。



「かわいい。」



初めに鳴からそういう言葉が発せられた。



「よく似合ってる。まるで向こうの世界の人みたい。」


「うん、フーの服もフーが着るにはギャップはあるけど違和感は全然無いよ。むしろこの中で一番似合ってると思う。」



影月の服はいつも着ている軽装の動きやすそうなものではなく、椿のみたいな大人っぽい綺麗なものとなっている。

それはまるで普段は子供っぽい印象を受ける影月が大人っぽい印象を感じさせるまでに・・・。



「・・・飛鳥、私に対して何か失礼なこと考えてない?」



私はパッと顔を背けた。

影月が怪しそうな目で私を睨み付けるがそちらに顔は向けない。



「・・・考えてたんだね。」



さて、次は姉さ・・・鈴だ。

鈴の服は姉さんらしい大人らしさを感じさせる。

普段の鈴もどちらかというと大人らしい服装をしているので影月のようなギャップは感じられず自然に似合うと言ってもいいのだろうか、姉さんと鈴どちらも見たことがある私には一瞬姉さんに見間違えてしまうほどであった。

だが、



「ふふん、どう?どう?いつもよりしっかりしてそうでしょ?」



というようなことを言うので、鈴だとわかる。

最後に私だが、自分としては言うことはあまりない。

飛鳥のは義姉二人とは対照的に子供らしさというのかかわいらしさの方を感じさせる服装となっている。

・・・私もああいうの着てみたかった。

皆からの反応は



「可愛い」



ばかりだった。

・・・それしかないの?






「ほんと羨ましいなあ。私も向こうの世界の服着てみたい。」



披露会が終わり、私たちが着替えた後に琴葉がそんなことをつぶやいた。



「多分琴ちゃんじゃサイズ合わないと思うよ。・・・色々と。」


「辛辣だなぁ、鳴は。ねえ飛鳥、たいがだっけ?向こうの世界の私なんだよね?」


「そうだよ。」


「今度行くときは絶対私を連れてってよ。やっぱり飛鳥達だけ行ったのはずるい。」


「そう言われても・・。意図して行ったわけじゃないし・・・。でも、この旅が終わったらまた行こうかなって思ってるからその時に一緒に行く?」


「行く!鳴や流流も行くよね?」



二人とも頷く。

やっぱり琴葉だけじゃなくてみんな興味あるんだね。

行くのは当分先になりそうだけど、飛鳥たちにも琴葉たちの事を紹介しようと思ってたからその機会ができたと考えればいいのかな。

琴葉と虎・・・、二人は会ったらどういう反応になるんだろう?



「・・・。」



そういうことを考えながら私は窓の外を見る。

先ほどと同じく幻想的な風景が見える。

・・・。

たった五日のはずなのにずいぶん久しぶりに戻ってきた気がしてしまう。

むしろ転移で戻ってきたせいかまだいつもと違う世界にいるように感じることもある。

その度、琴葉や鳴、流流たちを見てホッとする。



「どうしたの飛鳥?なんか憂いた顔してたけど。」


「ううん、何でもない。ちょっと感傷に浸っていただけ。」


「・・・向こうの事?」


「・・・うん、短いようで長かったなあ、って。」



影月も納得したような顔をする。

彼女もそう感じるところはあったのだろう。

そして鈴にも。

だけど・・・



「ああもう、やめやめ。思い出に浸るのは話が進まなくなるからおしまい。次の事を考えよう。とりあえず、明日からの目的地やルートをどうするかとかさ。」



話していても埒が明かないから話を切り上げる。

元々この集まりは明日どうするかという目的で集まったのだ。

これ以上雑談を続けてしまうと予定が決まらずに朝を迎えてしまうかもしれない。

私が話を切り替えると皆雑談をやめ、私の方に向いてくれた。



「とりあえず飛鳥っちの考えた予定を教えてよ。」


「私は明日の朝、骸亜と合流し次第街を出て街道に沿って進んで次のサ・・・光精霊の加護領域の街『サンエス』に向かいたいと思ってる。街道は整備されてるから戦闘の危険性が低いと思う。」


「けどそういうところって前みたいに盗賊に狙われやすいと思う。」


「うっ、そう言われると・・・。ええと、基本的にフーに先行してもらって状況確認。もし盗賊とかがいたら危険でも遠回り。可能なら突破してでもそのままの道を行くけどそれは確実な時だけ。捕まった時は最優先で救出。それでいこう。」


「飛鳥っち、すっかり盗賊がトラウマになっちゃってるね。」


「トラウマじゃないよ。また同じ失敗犯すのが怖いだけだよ。」


「それをトラウマっていうのよ。」



別に盗賊に対しては恐怖心を持っているわけではないんだけど、皆はトラウマだという。

そういうものなのだろうか?



「あっ、そうだ。飛鳥、ちょっと提案があるんだけどいい?」


「何?琴葉?」


「道中に水精霊アクリの住処があるみたいなんだけど、契約しに行っちゃダメかな?予定としてはまだ余裕があったはずだし召喚士としてはぜひ契約しに行きたいんだけど。」



鳴もうんうんと頷いている。

私としてはアイシス先生と戦った時に相手したし、その時の事も兼ねて色々話をしたいから会いに行きたいんだけど・・・。



「鈴や流流たちはどうしたい?」


「私は飛鳥っちが行くなら付いていくよ。」


「・・・右に同じ。」


「フーちゃん付いていくなら私も。」



3人ともOKしてくれた。

琴葉と鳴は念願の精霊との契約を行うことができるので嬉しそうだった。

とは言っても、琴葉は二回目だけど。

私がいつもサンやルナと一緒にいるので忘れがちだが本来精霊は召喚士にとって最も契約が困難であり契約は最高位の召喚士でも難しいと言われているから、嬉しがるのも無理ないだろう。



「さて、あとは男子陣の了承を得るだけだね。」


「過半数得てるんだし大丈夫だよ~。いざとなったら私があいつらに言い聞かせるからさ。」


「神たちの信用やっと取り戻したばっかりなんだからそういう支配的なのはなしでお願い。向こうが反対するならちゃんと話し合わないと。わがまま言ってるのはこっちなんだから。」


「・・・わかったよ。」



だけど、普通にOKしてくれそうだけどね。

神は戦い好きだから強い相手と戦えるなら大歓迎だろうし、竜は神や鈴が良いっていうなら行くとか言いそうだし、骸亜はきちんと間に合うならとかそういうこと言いそう。

そういえば・・・



「男子陣は今何してるのかな?」


「あの二人はともかく、骸亜はまだ向こうでしょ?」


「うん。私たちがこっちに来る時に今日は向こうで過ごして飛鳥を落ち着かせるって言ってたから合流は明日の朝だと思う。それで、あの二人は?」


「さあ?ここに戻ってきたら教えてとは言ってあるから、まだそれが無いから帰ってきてないんじゃない?」


「嘘。もう結構時間遅いよ。寝てもいい時間だと思うし。」


「多分飛鳥っちに負けたその悔しさから鍛錬に勤しんでるんじゃない?あいつ、負けず嫌いだし。」


「・・・待つ?」


「いつになるかわからないからね~・・・。待つのは私だけでいいよ。」


「でも大丈夫?朝まで帰ってこないかもしれないんでしょ?」


「まあその時はその時で。明日はしばらく馬車内で休ませてもらうよ。」


「それはちょっとずるい気がする・・・。」



だけどまあ、今日一日私たちの方を優先したくれたけど幼馴染として神には色々言いたいことがあるんだろう。

それはもう、その鍛錬に付き合ってあげたかったくらいに。

私はそれを許可した。

とりあえず寝る人の邪魔になるだろうからと鈴は自分の部屋に戻り、同じ部屋の影月と鳴はこっちの部屋で寝ることになった。

けど二人分余計にベッドがあるわけでもなく鳴は琴葉と、影月は流流と一緒のベッドで寝ることになった。

・・・一人は寂しいから鈴の所で寝ようかな。

そう考えながら私は独り寂しく瞼を閉じるのであった。

多分明日は三人揃って馬車で寝ていることになるだろう。

流石に私もその中に加わるのはまずいからね。







・・・と、寝る前はそう思ってたんだけど・・・。

朝起きたら鈴がものすごい眠そうに、ものすごい怒りながら竜と神にキレていた。

曰く、実は竜と神は鈴が待っていると言って部屋に戻った時にはすでに宿屋に戻ってきており、一日中修行していたせいで疲れていたため食事をとって体を洗ったら眠気で鈴への報告を忘れていたらしい。

その事に気づかない鈴は一晩中待たされ、朝になっても帰ってこないことに疑問を持ち彼らの部屋に行くとグースカ寝ていた二人を発見し現在に至るということだ。

あまりの鈴のキレっぷりに止めようにも止めれず、この三人の状態は状況を何も知らない骸亜が戻ってきて口を挟むまで続いたのだった。

努力すると言った後すぐにこれだよ!(パラレルワールド:飛鳥編5話参照)

大まかな流れや重要なところは考えていたりするんですが細かいところを考えていないためにそこに直面すると一気に執筆スピードが落ちてしまいます・・・。


余談ですが過去話のキャラ説明を見て今と違ってるところいくつかありますね

琴葉が飛鳥のファンとか忘れてたわ(今完全に対等な関係だし)

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