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クロスワールド  作者: 氷冷 飛鳥
第五章 水
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対決

「飛鳥っち、気を付けてね。」



始まる前に鈴が声をかけてくる。



「遠距離にいればあいつの攻撃手段無いから遠くから魔術で攻めるのがオススメ。近づいてきたら逃げて。飛鳥っちが近接もできるのは勿論知ってるけど、多分、分が悪いから。」


「わかった。」



「近接戦闘するな」という鈴の忠告を聞いて私は剣での素振りをやめ、銃に切り替える。

私は銃に魔力を溜め終え、爪に声をかける。



「爪、準備オッケーだよ。」


「ああ、こっちも準備完了。じゃあ始めるか。」



爪が構えると同時に私も銃を構えた。

爪の武器は戦斧バトルアックス、両刃でかなり大きく一撃が重そうなタイプだった。

だが爪はそれを軽く振り回し、



爆砕破ばくさいはっ!」



地面を叩き割り、その衝撃波での攻撃。

私は地面に右手の銃で魔力弾を撃ちその衝撃で威力を相殺させる。

そして同時に左手の銃で魔術を放つ。



「『火炎よ、大地と混じり合い噴き上がれ! ヴォルカニック!』」



爪の足元がマグマに変わる。

爪は斧を力強く振り下ろした直後であったのにその反動が無いのか素早くその場から離れる。

そして先ほどいた場所で溶岩が噴き上がる。

私はそれをぼんやり眺めることもせず右手の銃を放出型に切り替え、左手の銃を連射にして魔術を避けた爪を追うように撃つ。

爪は連続で飛んでくる魔力弾を避けながら私に近づいてくる。

武器を振りかぶった直後、右手の銃で撃つ。



「『放出(ブラスト)!』」



至近距離だったため爪はモロに食らう。

そのまま後ろに吹き飛ばされる。

私は通常弾に両方とも切り替え、倒れた爪に交互に弾を撃って追撃する。

だが爪も黙って食らうことはせず、倒れた状態でも斧を横に振り、私の撃った弾を薙ぎ払う。



「舐めるなァ!風刃旋ふうじんせん!」



爪は即座に立ち上がり、斧を振り風の刃を飛ばす。

私はそれを左の銃の魔力弾で相殺させ、もう一方で魔術を放つ。



「『風よ、刃となりて敵を切り裂け! ウィンドカッター!』」



爪と同じく風の刃を放つ。

爪はそれを打ち払う。

私はその隙に両銃を放出型に切り替え、放とうとするが・・・



「カチッ」



引き金を引いても弾が出ない、魔力たま切れである。

私は再装填しようと魔力を込め始めようとする。

その隙を爪が逃さなかった。

私が弾を込める短い間に間合を詰め、攻撃を仕掛ける。

銃や魔術じゃ間に合わないと感じて私は銃を盾と剣に換装し、盾を構える。

だがそれも慌ててなのでうまく防御姿勢が取れていなかったため防御はしたが吹き飛ばされる。

倒れた私に爪が斧を大きく振り下ろす。

私は今度はしっかり左手で持っている盾で防御し、そのまま左へ斧の軌道を逸らす。

そうすると隙ができるので私は右手の剣で爪の首元めがけて剣を振った。

それに対して爪は体を大きく逸らして回避する。

そして素早く私から離れる。



「あぶねぇ・・・。まさか俺の攻撃を防がれるとは思わなかったぜ。」



その表情にはまだまだ余裕の色が見えた。

対する私は、かなりまずい。

大きな武器のためパワーはあっても動きが遅いという考えが間違っていた。

十分スピードもあり距離をとってもすぐに間合を詰められる。

そのため魔術の詠唱や銃の再装填リロードが間に合わない。

隙を作っても剣を使っていたら間合が近いため一瞬すぎる。

いや、魔術は何とか使えるかもだけど銃は難しいといったくらいかもしれない。

とは言ってもその隙を作るまでが難しいかもしれない。

相手のパワーが圧倒的すぎてまともに打ち合えない、できて私の大剣ぐらいだろう。

・・・いや、普通に詠唱破棄して威力落としてでも魔術を使えば簡単に隙は作れるのだが数日間平和なところにいて戦いのことを忘れていたことや読みの違いで焦ってしまっていたためそのことをド忘れしていた。

なんとかするしかない、とこの時私は思いながら武器を大剣に換装した。



「お?俺とパワー勝負か?良いぜ、受けてやる。」


「そんなつもりはないよ。勝てない勝負はするものじゃない。」


「じゃあとっとと降参してくれよなぁ?!」



爪がそう言いながら突進してくる。

私は大剣を構えて爪が近づくのを待つ。

私の剣の振りが遅いためカウンターでしかまともに勝負できない。

爪が射程距離に入ると同時に剣を横から振り爪を迎え討つ。

だが、



「なんだそれ、止まって見えるぜ!」



斧頭で私の剣を防ぐ。

私はそのまま近づき、つばり合いのような形になる。



「そういえばお前、精霊は使わなくていいのか?」


「使ったら簡単に決着が着いちゃうよ?それに、私の実力を見せるなら精霊の力を借りるのはおかしいんじゃない?」


「それもそうか。」


「どう?ここまでやりあって、私の力認めてくれない?」


「はっ、冗談。皆を守るために剣を使い始めたとか言ってたらしいが今じゃ魔術頼りの腰抜けじゃねえか。いや、その前から腰抜けか。今の剣も鈍すぎて最初はそのまま剣ごと叩き斬ってやろうかと思ったくらいだ。手加減されたってことだよ。」


「・・・ちょっと待って、私が剣士科入った理由なんで知ってるの?」


「骸亜が教えてくれた。」



あいつ・・・、私が剣士科にいた時になんとなく相談した時のこと誰にも言わないでって言ったのに・・・。

飛鳥の時もそうだったけどなんであいつは秘密を守らないかなあ・・・。



「っと、そろそろ無駄話は終わりにして再開といこうぜ。どうだ?銃に魔力溜める時間作ってやろうか?」


「・・・遠慮する。私の剣を馬鹿にされたのが癪に障るし。銃を使うにしても自分で作った隙で魔力は溜めさせてもらう。あと、今後は手加減無しでお願い。本気でやり合わないとつまらない。」


「よく言った。威勢だけは認めてやるよ。」



私たちはお互い距離を取る。

その際に私は片手剣に武器を換装させる。

今さっき一つ方法が浮かんだ。

それを実践してみる。





――影月side――



「飛鳥っち・・・、近接戦闘はやめておきなさいって言っておいたのに・・・。」



鈴が私の隣で飛鳥を見て頭を抱えている。

戦いが始まる前に言ったアドバイスを聞いてくれなかったためだ。

今の飛鳥は片手剣で爪に挑んでいるが、相手の攻撃を剣で受けようとすると防御できずそのまま剣ごと吹き飛ばされそうなので回避してばかりで攻撃できていない。



「・・・飛鳥だって腐っても剣士科。近接戦闘だってできる。」


「それは私だってわかってる。でも、あいつ単純にパワーが強いだけじゃなくてかなりの技量もある。近接戦闘だけ比べるなら飛鳥っちがあいつに勝てている部分が無いと言っても良いくらいに。」


「加えて飛鳥は色々な武器を使えるがその分それぞれの武器の熟練度も低い。言ってしまえば器用貧乏だ。魔術でその点を補い魔剣士の戦い方をして他の奴らとも互角かそれ以上の戦いができていたが今はそれを捨てているように見える。これじゃあ勝てるものも勝てない。」



恐らく先ほど鍔迫り合いになった時爪に何か言われたのだろう。

その前と後では魔術を出す頻度があまりにも違う。

というか鍔迫り合いになった後に飛鳥は魔術を発動していない。



「ああ、もう。いくら銃の再装填に時間がかかるっていってもほんの数秒でしょ。詠唱破棄して隙つくればすぐじゃない。」


「平和なウラルでのんびりしてたんだろ?平和ボケでもしたのか?」


「・・・肯定したくないけど多分そう。五日間戦闘から離れていたのは長い。」



1日でも鍛練を怠るとそれを取り戻すのに3日はかかると言われている。

私も飛鳥も、他のみんなも旅の間暇を見つけては相手を見つけて手合わせしたりして技術を磨いていた。

だがそれをウラルーー地球に行ったときにはできなかった。

一度飛鳥を誘ったのだが椿達に事件になると言われて許可されなかった。

そのため、鍛練と言える鍛練を行うことができなかった。

私は飛鳥を心配そうに見た。

相変わらず爪が攻めるばかりで飛鳥は攻撃できていない。

・・・いや、攻撃できていないのではなく攻撃していないみたいだ。

何の意図があるのかはわからないが先ほどまでただ避けてばかりでいたが時折剣で受けていることもあった。

「受ける」というのは語弊があったかもしれない、実際は受け流そうとして失敗しているみたいだった。



「あれは・・・。」



その光景に私は見覚えがあった。

そう、それは・・・。






ーー飛鳥side ーー


爪の攻撃が激しさを増す。

私は先ほど思い付いたことを実践しようと攻撃を確実に見切るようにしていた。

とりあえず初めは回避に徹し、速度に目を慣れさせる。

慣れてきたら次に剣で受け流すことを試みる。

今はこの段階だ。

受け流し相手が回避や防御できない大きな隙を作ることで初めて反撃する。

これは影月に短剣の使い方を教えてもらった時に言われたことだ。

小さな短剣では剣などを相手に打ち合うのは難しいため受け流したほうがいいということらしい。

もっとも、今回の相手は大きな斧であり、短剣を使うとパワー差で受け流せないかもしれないので片手剣を使って実践している。

できない訳じゃないだろうけどその場合相手の力をほぼ100%流すつもりでやらなければならずそれは難易度が高すぎるのでやらないことにした。



「おいおい、さっきまでの威勢はどうしたよぉ!防戦一方じゃねえか。」



どうやら爪は私の意図に気づいていない。

この段階で気づいているのは多分教えてくれて練習に付き合ってくれた影月くらいのもので鈴たちは何かしようとしてると思ってる程度だろう。

まあ影月が全部喋るかもしれないけど。

そう考えているうちに爪の攻撃にも大分慣れてきた。

その前からも何度か試していた受け流しも大体のコツは掴んだ。

爪の斧が私の顔目掛けて襲いかかる。

私は軽く屈み、剣で上方へ軌道を逸らした。

爪を見ると不意に軌道を逸らされ体勢を崩し、攻撃してくださいと言わんばかりの隙が生まれた。

先程まで防戦一方だったため攻撃が来ないだろうという油断。

それが招いた隙だ。

私は爪に斬りかかる。

だが爪は普通すぐには避けれない体勢であったにもかかわらず無理やり体を捻って避ける。



「なっ・・・!?」


「へっ、そう簡単にくらってたまるかっての。」


「くっ・・・。」



私はそれを追いかけるが、追い付けず距離を取られてしまう。

そして爪は一息、態勢を立て直して再度私に攻撃を仕掛ける。

だが私はそれをすべて受け流す。

攻撃が読まれてるように思えるのか爪の顔に段々焦りの色が見えてくる。



「どうしたの?さっきまでの余裕が無くなってるみたいだけど?」


「うるせえ。なんで当たらなくなってるんだよ。」


「さあ?もしかして疲れてきた?」



「んなわけねえだろ」と言いながら爪の攻撃はさらに激しくなった。

だが挑発されたのもあって冷静さを失ったのだろう、一発一発が単調で先ほどよりも簡単に対処できる攻撃となっていた。

私が攻撃を捌く度に単調になっていく攻撃。

終いには隙だらけの攻撃ばかりとなっていた。

それを私は軽く避けて爪に剣を突き立てる。

それで終わりだった。



「これで私の勝ち。」


「・・・っ。」



攻撃を止め、斧を降ろす。

爪が敗北を認めた瞬間だ。



「・・・悪かったな。」



突然そう言われる。



「何のこと?」


「お前の剣の事だよ。魔術頼りの腰抜けとか言っちまってさ。」


「ああ、そのこと?それはもう気にしてないよ。」



安心したような顔をする爪。

そしてすぐに試合開始前の顔つきに変わり、



「だが、あの大剣は駄目だ。なんだよあの振り方?技術はそこそこあるように見えたが力が足りなさすぎる。本格的に使うようにするならもっと力つけるようにした方がいいぜ?」


「うっ・・・、返す言葉もない。」


「何なら俺が指導をしてもいいぜ?一応戦士科でも扱っていて俺も何度か使ったことあるからな。斧の技術からも何か教えれることがあるかもしれないしな。どうだ?」


「私としてはとってもありがたいけど、ほんとにいいの?私からは何も教えられないよ?」


「いいんだよ。こんなこと申し込んだ礼だ。それに俺もお前の技術から学べることがあるかもしれないしな。」


「そう。ありがと。」



こうして、私と爪の戦いは終わった。

私としては爪に指摘された通り最近魔術にばかり頼りすぎな気もしているのでどちらも十分に使いこなせなくてはいけないと感じた。

片手剣、双剣、短剣、盾、大剣、銃、魔術・・・、これらをすべて使いこなせるようになるのはかなり難しいかもしれない。

そう思うと、ふと故郷に帰った時に「あいつ」にこう言われそうだと想像してしまう。



『飛鳥よ、お主弱くなったのぉ。』



それを本当に言われているような気がしてふと後ろを振り返ってしまうのだった。

飛鳥が最後に言っていた「あいつ」の登場はもっと後になりそうです。

それと、もしかすると次回の投稿が遅れるかもしれません。

申し訳ありません。



~~対決後~~



「お疲れさま。」



鈴が爪に声をかけた。

何故か彼女はにやにやしている。



「なんだよニヤニヤしやがって。気味わりぃぜ。」


「そう言うなよ~。あなた、わざと飛鳥っちに勝たせたでしょ。本当はリーダーの事とか気にしてなかったくせに。」


「ちっ・・、竜のやつしゃべりやがったな。」


「竜からは気付いた後に聞いたわよ。あなたが飛鳥に攻撃を簡単に受け流させたりしないし、激昂してあんな単調な攻撃するはずないしね。」


「いや、受け流されたのは本気マジだ。俺だって驚いたさ。けどまあ最後の方はそれも崩せるかもとは思えたけどな。」


「ふふっ、そう。」



鈴は戦闘中にお互い成長しているということを知って嬉しそうだった。

恐らく二人の戦いを見て一番混ざりたいと思ったのは鈴だろう。

それほどに二人の戦いは白熱していたのである。

話はそれで終わるかと思われたのだが・・・、



「けど、寝坊したのも本気マジなのよねぇ?」


「いっ・・・い、いや、あれは、その・・・。」


本気マジなのよね?」



鬼のような形相をした鈴に何も言えなくなる爪であった。

この後彼がどうなったかは皆さんの想像にお任せします。

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